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清武弘嗣が4年半ぶりのJリーグで感じた課題とは?不慣れな右サイドで奮闘する理由/コラム

GOAL 5/17(水) 20:34配信

5月14日の明治安田生命J1・サンフレッチェ広島戦を5-2で大勝し、11試合終了時点で勝ち点19の6位に再浮上したセレッソ大阪。1日のオフを経て16日午前に行われたトレーニングでは、広島戦で今季2点目をマークした清武弘嗣がとびっきりの笑顔を輝かせていた。ロンドン・オリンピック代表時代からの盟友・山口蛍と会話を交わしながら体幹強化、ランニングに取り組んだり、同じポジションを争う関口訓充と冗談混じりに抱擁を交わすシーンも見せるなど、すっかり古巣に馴染んだ様子だ。

「ここは日本ですからね。言葉も通じるし。向こう(スペイン)では別に苦労はしてないけど、いろいろと難しかったですからね」と背番号46をつける男は半年間過ごしたスペインの地に思いを馳せた。

ドイツ・ブンデスリーガ1部のニュルンベルク、ハノーファーで合計4シーズンを過ごした清武がスペインの名門・セビージャにチャレンジしたのが昨夏のことだった。

「僕は(香川)真司くんをつねにリスペクトしていますけど、やっぱりドルトムントとハノーファーではレベルの差がある。真司くんがドルトムントで競っている相手は一流の選手ばっかりで、ハノーファーの選手と比べるとやっぱり違う。僕がスタメンで出ていて、真司君がドルトムントでは熾烈な戦いがあるのは、比べるところではないんで。正直、そういう物凄い競争を僕自身も経験してみたい」と彼は何度か語ったことがあり、意を決してスペインに赴いた。

今シーズンのリーガ・エスパニョーラ開幕節・エスパニョール戦でいきなり初得点を挙げるなど、新天地の第一歩は悪くなかった。だが、9月のインターナショナルブレイク中にサミル・ナスリが移籍してくると状況は一変。清武の出番は激減してしまう。指揮官のホルヘ・サンパオリと何度か話し合いを持った模様だが、出場機会増加にはつながらなかった。今年1月の冬の移籍期間にはドイツ復帰もささやかれ、本人も「欧州からもオファーがあった」と認めたものの、Jリーグ復帰に傾いていく。興味を示したドイツのクラブが獲得資金を用意できなかった、あるいは彼の個人的な問題などさまざまな憶測は流れたが、「動けるうちに日本に戻った方がいい」と清武は最終的に古巣・C大阪復帰を決断した。

「いろんなことがあって今回Jリーグ復帰を決めましたけど、それに対して後悔は全くない。セレッソという大好きなクラブにまた戻ってサッカーができるのはすごく光栄です。チャンピオンズリーグ出場クラブから日本に戻ることが大胆な決断なんて全然思わなかったし、『日本人の選手が日本に帰ってきて何が悪いんだ』という思いもあった。『上を目指すなら海外にいなきゃダメだ』って風潮はありましたけど、僕はそんなことないと言いたい。自分は逆にワクワクするみたいな感じでしたよ」

「(日本)代表に関しても、マイナスになるとは考えなかった。代表は自分次第だし、選手の入れ替わりも激しい。僕が外れて新しい選手が入ってきたり、誰かが外れて新しい選手が入ったりというのは普通のこと。代表に定位置はないと思うし、今の僕はセレッソでやるしかない。代表はその後のことなんで」と清武はキッパリと迷いを振り切ったようだ。

とはいえ、日本での再出発は順風満帆とは行かなかった。2月にC大阪に合流してからというもの、右大腿部違和感と左大腿四頭筋損傷で2度も離脱し、想定外の出遅れを強いられたからだ。3月11日の北海道コンサドーレ札幌戦でいったんJ復帰を果たしたが、次の本格合流は4月後半にズレ込んだ。その時点でC大阪は杉本健勇、山村和也が2トップ気味に陣取る布陣でほぼ固まっており、清武は関口が担っていた右サイドのポジションにトライすることになった。欧州での4年半はトップ下でのプレーが大半を占めていた彼にとって、新たなポジションは非常に難易度が高いという。

「ハノーファーで10番をつけてトップ下に入っていた時はメッチャ自由にやっていた。自由にしすぎたくらい。監督が代わればサッカーも変わるのは当たり前のこと。使われるんだったらどこでもやらないといけないのがサッカー選手。『嫌です』って言う選手もいないと思うんで(笑)、どこであろうとやらないといけないと思っています」

「そういう中で今はサイドをやっていますけど、トップ下より上下運動が激しいし、まだちょっと後半の途中くらいから頭も足も止まってくる。90分持たせようとは思っていないですけど、疲れても頭をつねに回転させないといけないなと。トップ下で脳が90分間止まることはなかったけど、サイドではそれプラス、上下運動をしないといけない。足が動かなくなってもいかに頭を働かせ続けるか。そこが今の課題かなと思います」と清武は新たな役割に鋭意奮闘中だ。

丸橋祐介のクリアが相手FWクリスティアーノに当たって入り、不運な敗戦を喫した5月6日の柏レイソル戦では、清武自身の右サイドでのパフォーマンスがあまりよくなかった。左の柿谷曜一朗を含めた前線がベッタリ前に張ってしまい、空いたサイドのスペースを使われるという悪循環も余儀なくされた。現地視察した日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も彼の動きに顔を曇らせたという。しかし、続く広島戦では1ゴールを挙げたうえ、J1第11節で4位となる12.262㎞の走行距離を記録。コンディションが徐々に上がってきているのは間違いないだろう。

「この前の試合は12キロ走って、走行距離が伸びているなとは感じました。チームが勝つことがもちろん第一ですけど、もっとサイドでもボールに絡まないといけないし、もっと工夫しながらできるんじゃないかと後から映像を見て思いました。セレッソがいい試合をしている時は全員が一体感を持ってバランスよく動き、攻撃の時にサイドバックがつねに高い位置にいて数的優位を作れている状態。サイドで俺と曜一朗が数的優位を作れて、蛍とソウザが絡んでいるのが一番いい。柏戦から1試合でそういうところが修正できたのはすごくいいことだと思います」と清武もチームと自分自身の進化に手ごたえを感じている様子だ。

J1はここまで7試合(うちフル出場は4試合)に出ているが、清武ほどのテクニックと戦術眼、欧州4年半の経験値を持つ選手であれば、もっともっとパフォーマンスを上げられるはず。本人ももちろん現状に満足してはいない。

「欧州での4年半は自分のサッカー人生にとってすごくプラスな時間だった。その欧州から帰ってきて、サッカーの質が全然違うので、慣れるのにもう少し時間がかかるのかなと感じています。例えば、日本の方がピッチが硬かったり、海外だったらいつも相手がガッツリ来るところなのにこっちでは来ないとか、その感覚でやっていたらミスも増えるみたいなことが結構、ありますから。もともとやっていた自分はすんなりJリーグに入れるのかと考えていたけど、ガッツリ来る感じとそうじゃない相手のリズムをまだつかみ切れていない。やっぱり慣れって大切ですよ」と彼は神妙な面持ちで話していた。

サイドという新たなポジション、日本独特の環境や相手との間合いや駆け引き、リズムを完全に自分のものにして、「Jにいてもレベルアップできる」と清武が実証すれば、J復帰への周囲の雑音は消え去るに違いない。山口がハリルホジッチ監督や多くのファンを納得させたように、清武にも傑出した輝きを放って、人々を唸らせてもらいたい。それがC大阪、Jリーグ、そして日本サッカー界の発展につながるのだから。

文=元川悦子

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最終更新:5/17(水) 20:34

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