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Intel Optane メモリーは、HDDキャッシュとしてどれだけ有用か

Impress Watch 5/17(水) 12:02配信

 先ごろ、国内での販売がスタートしたIntelのM.2型HDDキャッシュ「Optane メモリー」。今回は、発売中の16GBと、未発売の32GBモデルをテストする機会が得られた。HDDの性能を大幅に改善するというOptaneの効果についてチェックしてみよう。

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■新メモリ「3D Xpoint」採用のキャッシュ用SSD

 Optaneは、記憶素子にIntelとMicronが共同開発した「3D Xpoint」を採用したSSDであり、フォームファクターにM.2を採用。接続インターフェイスにPCI Express 3.0 x2、通信プロトコルにNVM Express(NVMe)を用いる。

 現在、Intel Optaneメモリには、容量の違いにより16GBと32GBの2製品がラインナップされている。各モデルの主なスペックは以下の通り。

 3D XPointは、従来のSSDに採用されてきたNANDフラッシュに比べ、ランダムアクセス性能や記録素子の耐久性に優れており、この特性は頻繁に読み書きを行なうことになるキャッシュメモリに適している。このことは、16GBモデルで19万IOPSに達するランダムリード性能や、182.5TBという書き込み上限数に表れている。

 今回用意したOptaneは、編集部で購入した製品版の16GBモデルと、Intelより借用した32GBモデル(ES品)の2種類。実際のカードを確認してみると、実装されている3D XPointチップが、16GBが1枚、32GBが2枚となっていることが分かる。

■キャッシュとしての利用にはIntel 200 シリーズチップセットとKaby Lake-Sが必須

 M.2スロットに搭載したOptaneは、一般的なNVMe対応SSDと同じようにPCに認識される。この時点では単に容量の小さなSSDでしかないOptaneを、「キャッシュ用SSD」として利用するためには、いくつかの条件がある。

 まず前提として、Optaneを利用するPCが、第7世代Core プロセッサー(Kaby Lake-S)とIntel 200 シリーズ・チップセットの組み合わせである必要がある。また、マザーボード側のUEFIがOptaneをサポートしたバージョンである必要があるため、購入時期によってはUEFIのアップデートが必要となる。

 今回は、この条件を満たす組み合わせとして、CPUにCore i7-7700K、マザーボードにはIntel Z270チップセット搭載のASRock製マザーボード「ASRock Z270M Extreme4」を用意した。

 Optaneがキャッシュとして組み合わせ可能なストレージデバイスは、SATA接続のHDD、SSHD、SSDのいずれかで、これらはチップセットが提供するSATAポートに接続されている必要がある。また、OptaneはOSをインストールしたシステムストレージにしか適用できない。今回のテストでは、Western Digitalの3.5インチHDD「WD4003FZEX」と、Crucialの2.5インチSSD「MX300 525GB」を用意した。

 以上のハードウェア構成を満たしてた上で、UEFIやソフトウェアでの設定が必要となる。

 UEFI上での操作は、Intel Rapid Storage Technologyを有効化し、Optaneを搭載したM.2スロットを同機能の管理下に置くように設定するというもの。この状態で、UEFIモードでインストールされたOSを起動し、専用アプリケーションからOptaneを有効にすることで、ようやくOptaneはシステムストレージのキャッシュとして機能するようになる。

・インテル ラピッド・ストレージ・テクノロジー(インテル RST) …… SetupOptaneMemoryのダウンロードページ
https://downloadcenter.intel.com/ja/download/26730/-RST-?product=99745

▼UEFI上での操作

▼OS上での操作

 キャッシュメモリとして有効化されたOptaneは、システム用のストレージデバイスと一体のデバイスとして認識されることになる。なお、いったんキャッシュとして有効化されたOptaneを取り外す場合、専用アプリケーションから無効化する必要がある。

■SSDとしての性能をチェック

 キャッシュとして利用したさいのOptaneの性能をチェックする前に、まずはOptane単体、つまりNVMe対応SSDとしてのOptaneの性能をベンチマークテストでチェックしてみた。

 テスト環境は以下の通り。

▼16GBモデルのベンチマークテスト結果

▼32GBモデルのベンチマークテスト結果

 ベンチマークテストの結果を見てみると、シーケンシャルアクセス性能については両モデルともほぼスペック通りの性能を発揮している。ランダムリード性能も上々で、16GBモデルは4KQ32T1のリードテストおいて800MB/secに迫る数値を記録した。

 スペックに違わぬ性能を発揮しているOptaneだが、ライト性能はNVMe対応SSDとしては平均以下だ。16GBモデルは150MB/sec前後、32GBモデルでも300MB/secに届いていない。このライト性能の低さが、キャッシュとして使用した時にどのような影響をもたらすのか気になるところだ。

■キャッシュメモリとしての性能をチェック

 それでは、本来の用途であるキャッシュメモリとしてのOptaneの性能をチェックする。

 今回は、先に紹介した3.5インチHDDの「Western Digital WD4003FZEX」と、2.5インチSSDの「Crucial MX300 525GB」に対し、それぞれOptaneをキャッシュとして使用したさいの性能をベンチマークテストと、ゲームを使ってチェックした。

 まずは、CrystalDiskMarkとATTO Disk Benchmarkの実行結果から紹介する。

 HDDとOptaneの組み合わせでのテスト結果をみると、テストデータがOptaneに収まるサイズであれば、ストレージ性能はOptaneを単体動作させた時の性能に近いものになっていることが確認できる。

 これにより、リード性能が大幅に向上している一方で、HDD単体で170~180MB/secを記録していたシーケンシャルライトが、16GBのOptaneと組み合わせた場合は150MB/secまで低下している。

 また、CrystalDiskMarkでテストサイズを32GiBにした場合、ランダムリード性能が著しく低下しているほか、ATTO Disk BenchmarkでTotal Lengthを32GBにすると、後半に実行されるテストでリード性能が大きく低下している。

 テストサイズを大きくした際の性能低下で興味深いのは、ATTO Disk Benchmarkにおいて、16GBのOptaneを使用した場合、リード性能が大きく落ち込む一方で、ライト性能は逆に向上している点だ。これは、キャッシュに収まりきらないサイズのテストが実行された結果、キャッシュに隠れていたHDDの素の性能が表面化しているものと思われる。

▼HDD単体の性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼HDD+Optane(16GB)の性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼HDD+32GB Optaneの性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼HDD単体の性能(ATTO Disk Benchmark)

▼HDD+Optane(16GB)の性能(ATTO Disk Benchmark)

▼HDD+32GB Optaneの性能(ATTO Disk Benchmark)

 SSDとOptaneの組み合わせでも、テストデータがOptaneに収まるサイズであれば、ストレージ性能がOptane単体の性能に近いものとなる。この結果、リード性能の向上と引き換えに、Crucial MX300 525GBの優れたライト性能が大きく損なわれる結果となっている。

 テストサイズを大きくしたさいのテスト結果では、HDDとの組み合わせで確認されたCrystalDiskMarkにおける極端なランダムリード性能の低下は、比較的緩やかなものとなっている。これは、元のSSD性能が優れているためでもあるだろう。

 Total Length 32GBで実行したATTO Disk Benchmarkでは、HDDと16GBモデルの組み合わせで観られた、テスト後半でライト性能が向上するという傾向が、16GBと32GBの両方で確認できる。

▼SSD単体の性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼SSD+Optane(16GB)の性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼SSD+32GB Optaneの性能(CrystalDiskMark 5.2.1)

▼SSD単体の性能(ATTO Disk Benchmark)

▼SSD+Optane(16GB)の性能(ATTO Disk Benchmark)

▼SSD+32GB Optaneの性能(ATTO Disk Benchmark)

 PCMark 8のストレージテスト(Storage 2.0)では、HDDとOptaneの組み合わせにより、HDD単体時から大幅なスコア向上が見られる一方で、SSDとOptaneの組み合わせでは、スコアの向上は僅かなものに留まっている。

 「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」では、同ベンチマークがディスクからのデータロードに要した時間の合計である「ローディングタイム」を比較した。テストは、画面解像度1,920×1,080ドット、描画設定「最高品質」で実行し、それぞれ3回ずつ実行している。

 テストの結果、Optaneを有効にしてから最初に実行した際のローディングタイムは、HDDやSSDを単体で利用した時よりも多少遅くなっているものの、2回目以降は12秒を切るタイムを記録しており、この結果は2.5インチSSDであるCrucial MX300 525GBを凌ぐものだ。

 ちなみに、2回目以降は優れた性能を発揮しているOptaneだが、テストサイズを大きく設定したCrystalDiskMarkやATTO Disk Benchmarkを実行した後で、再度ファイナルファンタジーXIVベンチマークを実行すると、ローディングタイムは1回目と同じ程度まで悪化する。当然ではあるが、Optaneが効果を発揮するのは、Optaneにデータがキャッシュされている間のみということだ。

 続いては、実際のゲームタイトルを用いて、セーブデータをロードしてから、ゲーム画面が表示されるまでに要した時間を比較する。

 今回テストしたゲームは、「Fallout 4」、「ニーア オートマタ」、「ダークソウル3」の3本。テストでは、これらのタイトルで各1回ずつロード時間を測定した後、Windowsを再起動して次の測定を行うという手順で、各3回ずつロード時間を測定した。なお、ロード時間はHDMI録画装置で記録した映像(1,080p60)のフレーム数から算出している。

 テスト結果は、先に紹介したファイナルファンタジーXIVベンチマークの結果と同じく、初回のロード時間はSSDやHDD単体より若干遅く、2回目以降はSSD単体よりも短時間でロードを終えるという結果になっている。

 ファイナルファンタジーXIVベンチマークでは、大量の読み書きを実行するとキャッシュの効果が失われる事を指摘したが、3つのゲームを順次実行した程度では、キャッシュの効果は失われないようだ。

■HDD向けのキャッシュとして優秀なOptane

 実際にOptaneを試してみた結果として、HDDとの組み合わせた際の効果は十分に体感できるものだった。テストで紹介したゲームの起動時間短縮はもちろん、バックグラウンドでストレージへのアクセスが発生している状況での操作に対するレスポンスの改善が、体感での快適さを大きく引き上げている。

 一方、SATA接続のSSDとの組み合わせでは、リード性能向上を体感できる場面はない。わずかなロード時間の短縮では、Optaneがボトルネックとなって低下するライト性能と釣り合いもとれないだろう。少なくとも、SATA SSDのライト性能を上回るOptaneが登場するまでは、効果的な組み合わせとは言えないだろう。

 自作PCでは多くの場合、複数のSSDやHDDを用途別に搭載することができる。価格と容量を優先してHDDをシステムドライブに利用し、それをOptaneで加速させたいのであれば、Optaneを導入する価値は確かにあると言える。

PC Watch,三門 修太

最終更新:5/17(水) 12:02

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