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<公害問題>末永く伝えたい 告発写真集、半世紀ぶりに復刊

毎日新聞 5/17(水) 13:31配信

 ◇福岡・田川在住の林えいだいさん

 福岡県田川市在住の記録作家、林えいだいさん(83)が、高度経済成長期に深刻化した北九州市の公害の実態を告発した写真集「これが公害だ」が今春、ほぼ半世紀ぶりに復刊された。1968年に非売品として3000部自費出版して絶版となった同名写真集に、公害を克服しようと立ち上がった女性たちの写真や研究者の論文などを加えて出版した。がんで闘病中の林さんは「社会問題に無関心な人が多い昨今、公害の惨状や社会運動の熱気が市民に伝われば」と話している。

 同市では60年代、洞海湾沿いに集中した工場によって大気・水質汚染が深刻化。電線からつららのようなばいじんが垂れ下がったり、湾内に泡立った工場排水が漂ったりし、ばい煙で子供たちの顔も黒く汚れた。当時、北九州市教委職員だった林さんはこうした現場を訪れて撮影。68年に公害の実態を伝える写真116枚などで構成した「これが公害だ」を自費出版した。

 復刊は、新評論(東京)が「企業の利益追求の末に起きた公害と克服に向けた活動を若い世代に伝えよう」と林さんに提案。新たに65年に8ミリ映画「青空がほしい」を製作した同市戸畑区の婦人会協議会の活動を伝える写真23枚なども加え、3月末に出版された。

 市は、婦人会の活動などがきっかけとなって排出企業と公害防止協定を締結するなど環境改善に取り組み、現在では国際的にも高い評価を受ける環境都市に生まれ変わった。

 婦人会活動に関する論文を提供した神崎智子・香蘭女子短大非常勤講師は「地道な市民の行動が世の中を変えられることを示した記録でもあり、今後の社会運動を考えるうえで参考になる」と話す。

 A5判、190ページ。2000円(税別)。【奥田伸一】

最終更新:5/17(水) 15:01

毎日新聞