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<彦根・稲部遺跡>鉄器工房遺構が水没 周囲の水田しみ出す

毎日新聞 5/17(水) 15:00配信

 滋賀県彦根市彦富町の「稲部遺跡」で、弥生時代終末から古墳時代初め(3世紀前半)の鉄器工房群の遺構が水没していることが分かった。周囲の水田から水がしみ出したのが原因とみられ、柱穴などが浸食される恐れもある。中国の史書「魏志倭人伝」に記述のある「三十国」の一つとみられる重要な遺跡で、市は国史跡指定を目指している。市教委は管理が不十分だったと認め、対策を検討している。【西村浩一】

 ◇浸食の恐れ 市教委「早急に対策」

 水没したのは市教委が昨年度調査した約400平方メートル。30棟以上の竪穴建物があったことを示す柱穴が確認され、鉄器を作った際に出たと見られる鉄片や鉄塊など計6キロと、鉄を加工する際の台石やハンマー用の石などが出土した。同時期としては国内最大級の鉄器製造遺跡と位置付けられる。

 現場はもともと水田で、2013年から市道改良工事に伴い発掘調査している。昨年10月に調査結果を発表し、今年3月末に作業をいったん終了。発掘は今年度も続くため、埋め戻さずにシートをかぶせ、土のうなどを積んで応急的な保存をしていただけだった。

 市教委によると、周囲の水田で田植えのために水が張られ、掘り下げられていた調査区域に地中から水がしみ出したという。水が出やすい土地のため、市教委は雨天時などにたまった水をポンプで抜き取っていたが、徹底できていなかった。

 市教委の稲野善行文化財課長は「ここまで冠水しているとは知らなかった。ポンプで水をくみ出すなど早急に対応したい」と話す。ただ、急に大量の水をくみ出すと水流が起きて遺跡を損傷する恐れもあり、方法を検討している。

 稲部遺跡の調査検討会に参加した定森秀夫・滋賀県立大教授(考古学)は「雨に打たれたり、水没したりすると柱穴などが壊れやすくなる。遺跡の重要性から考えれば、経費がかかっても前回の調査終了時に砂で埋め戻す必要があったのではないか。早急に改善すべきだ」と話している。

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 ◇稲部遺跡

 滋賀県彦根市南部の田園地帯にあり、弥生時代から古墳時代(2~4世紀)が中心の大規模集落遺跡。推定総面積約20万平方メートル。1981年に調査が始まった。一辺十数メートルの大型建物2棟(3世紀後半)の跡も見つかり、他国との物流拠点だった可能性がある。最も栄えた時代は「魏志倭人伝」に出てくる邪馬台国時代と重なり、同書にある「使訳(使者と通訳)通ずる所三十国」の一つともされる。

最終更新:5/17(水) 15:09

毎日新聞