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<イラン大統領選>黒いチャドル姿も ライシ師支持者集会

毎日新聞 5/17(水) 18:20配信

 ◇保守強硬派の事実上の統一候補、ハメネイ師後継者とも

 【テヘラン篠田航一】イラン大統領選は19日に投票を迎える。当初は圧倒的優位とみられていた現職の保守穏健派ハッサン・ロウハニ大統領(68)の再選を阻む可能性があるのが、保守強硬派の事実上の統一候補エブラヒム・ライシ前検事総長(56)だ。司法当局の要職を歴任し、イランの国教イスラム教シーア派の高位聖職者で、最高指導者ハメネイ師(77)の後継者とも目されてきた実力者でもある。支持者集会に足を運んでみた。

 「国を開いたロウハニよ、恥を知れ」「ロウハニは今週でサヨナラだ」。16日夕、テヘラン中心部で開かれたライシ師の演説会場のモスク(イスラム礼拝所)前で、「反ロウハニ」を訴える市民の声が響いた。欧米など主要6カ国と、核開発を制限する代わりに経済制裁を解除させる核合意を結び対外融和路線を歩むロウハニ師は、国内では「制裁解除後も経済が好転しない」との批判を受ける。

 会場には女性の姿も目立つ。首都テヘランでは頭部のみを覆うヘジャブをかぶるだけの女性も多いが、集会で目にした女性は大半が全身を覆う黒いチャドル姿。イスラムの伝統に忠実な支持者が多い印象だ。チャドル姿の大学生の女性(21)は「この数年間、男女が公然と路上で体を寄せ合う姿が増えた。おかしくなったイラン社会を元の厳格な姿に戻してくれるライシ師を選ぶ」と話した。

 演説が始まった。保守強硬派の一本化のため15日に選挙戦撤退を表明し、ライシ師支持に回ったガリバフ・テヘラン市長が「現状を変えよう」と声を張り上げた。その後のライシ師の演説は対照的だった。「この数年で1万7000の店舗が閉鎖に追い込まれた。今こそ、毎年100万人の雇用増が必要だ」。聴衆に静かに語りかけるように話を始め、安全保障に話題を移した際にボルテージを上げ、抑揚をつける。「今、軍事力を弱める国はない。誰もがミサイルを作る時代だ。国防力の強化を約束する!」

 歓声が最高潮に達した時、携帯電話の待ち受け画面をライシ師にしていた近くの中年男性が肩を震わせて泣いていた。「日本や欧米はどうせロウハニに好意的なんだろう。でも現状は違う。外資導入が進み、多くの工場がつぶれた。国を開いたらこうなるんだ」。男性はそう話した。

 ライシ師は5歳の時に父親を亡くし、苦学して聖職者になった後も質素な暮らしを続けているといった逸話が選挙期間中に報じられており、低所得者層の支持が厚い。

 16日には保守穏健派のジャハンギリ第1副大統領が撤退を表明し、ロウハニ師の支持に回った。これで穏健派も一本化し、ライシ師との勝負を仕切り直す。選挙戦はこのほか2人も出馬している。

最終更新:5/17(水) 19:19

毎日新聞