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貸付残高急増、カードローン多重債務恐れ メガバンク3行で1.6兆円

産経新聞 5/17(水) 7:55配信

 銀行が無担保で貸し付けるカードローンの貸出残高が年々増加し、多重債務の温床となる恐れが浮上している。メガバンク3行の3月末の貸出残高は前年比約1割増の計1・6兆円に膨らんだ。過去には消費者金融による過剰な貸し付けで自己破産が多発したこともあり、各行は自主規制に乗り出した。ただ日本弁護士連合会(日弁連)などは「自主規制による対応では不十分」とし、法改正などを求めている。 (蕎麦谷里志、中村智隆)

 「カードが届いたら破棄していいので、作るだけでもお願いできませんか」

 大手行の40代女性行員は窓口客にカードローン契約をお願いすることがある。

 ノルマではないが契約目標があり、上司からも勧めるようハッパをかけられている。

 日銀のマイナス金利で超低金利が続く中、銀行の企業向け融資や住宅ローン金利は高くても数%だが、カードローンは十数%と高収益が見込める「うまみのある事業」(関係者)だからだ。

 実際、国内銀行の平成28年12月末の貸出残高は約5・4兆円と5年で1・7倍に急増。中でも三井住友、三菱東京UFJ、みずほのメガ3行で全体の約3割を占め、3月末残高はそれぞれ前年比5~17%増えた。

 ただ、一部では過剰な貸し出しもみられる。日弁連によると年収220万円の60代女性が500万円を借り、自己破産するケースが発生。消費者問題に詳しい三上理弁護士は「住宅ローンなどを除き、一般的には借入金が年収の3分の1を超えると返済は困難」と指摘する。

 かつて、消費者金融の過剰貸し付けが社会問題化。貸金業法が改正され、消費者金融の貸出額は「年収の3分の1」という上限が定められた。当時、消費者への無担保貸し付けをほとんど行っていなかった銀行は対象外となったが、現在は傘下に消費者金融を取り込むなど状況は変わった。

 政府も懸念を示す。麻生太郎金融担当相は3月の参院決算委員会で「エスカレートしているのではないか」と発言。安倍晋三首相も同委員会で「大銀行は信用があり、社会的責任が大きい。自らしっかり対応して」と呼びかけた。金融庁は銀行への聞き取り調査など実態調査に乗り出した。

 全国銀行協会は3月、審査体制強化などの対策を発表し、大手行を中心に自主規制を始めた。みずほは融資上限を年収の2分の1から3分の1に下げ、三井住友は年収証明書が必要な融資額を「300万円超」から「50万円超」に下げた。

 金融庁は自主規制の実効性を監視する方針だが、ある大手行担当者は「伸びている分野だけに過度な規制は困る。収益源が少ない地銀には死活問題だろう」とこぼす。規制を強化し過ぎれば、カードローンの顧客がヤミ金などに流れる可能性を指摘する声もある。三上弁護士は「ヤミ金対策は別途検討し、問題が深刻化しないうちに対応すべきだ」と訴えている。

 カードローン 住宅ローンの最優遇金利が30年固定でも1%程度なのに対し、カードローンは3メガバンクで最大14・6%に達するうまみのある事業。銀行は消費者向け融資のノウハウがある消費者金融を傘下に収めており、高収益・低リスクの事業として注力。利用者はATM(現金自動預払機)で手軽にお金を借りられるが、安易に借金を重ねると返済が難しくなる。

最終更新:5/17(水) 9:56

産経新聞