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新・英国へ 6・8総選挙 外交路線転換進めるメイ首相

産経新聞 5/17(水) 7:55配信

 6月8日の総選挙での勝利を目指すメイ英首相が、キャメロン前政権までの外交路線の転換を進めている。対米関係を重視し、中国やロシアの封じ込めを図る戦略だ。(ロンドン 岡部伸)

 ◆中国との「蜜月」解消

 ロンドン郊外のチェッカーズ(首相別荘)。4月28日、安倍晋三首相を招いたメイ氏は「南シナ海、東シナ海で緊張を増大させることに反対する」と述べ、海洋進出を強める中国への警戒感をにじませた。

 南シナ海周辺には、英連邦を構成するオーストラリア、シンガポール、マレーシアなどがある。他人事ではないメイ氏は1月の訪米時も「国際情勢で日増しに独断的になった」と、ロシアと並んで中国を名指しで批判している。

 キャメロン前政権は中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にいち早く参加するなど、中国に擦り寄った。欧州連合(EU)を離れる英国にとり、世界2位の経済規模を持つ中国は無視できない存在だが、安全保障面から中国投資に懸念を抱くのも、メイ氏の偽らざる本音だ。

 首相就任後、“媚中派”のオズボーン前財務相を更迭。メイ氏は北京で開催された現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」首脳会合の参加も見合わせた。「中国との連携関係は経済に限る。『英中蜜月』政策は修正された」。ロンドンの外交筋はこう分析する。

 ◆米とは「特別な関係」

 4月27日、BBC放送へのジョンソン英外相の発言が波紋を広げた。

 「トランプ米大統領からシリア空爆を要請されれば、断るべきではない。大切なのは米国との『特別な関係』だ」と言い切ったのだ。他国への介入は国連安全保障理事会決議を経るべきだとする野党の労働党を意に介さないものだった。

 メイ氏自身、トランプ氏に「(第二次大戦期の)チャーチル英首相とルーズベルト米大統領に倣って新時代に関係を新たにしよう」との書簡を送付。4月、米国によるシリアへのミサイル攻撃を真っ先に支持したのもメイ氏だった。

 言語や文化を共有する米国との「特別な関係」を軸に一定の影響力を維持し、世界各国と経済的に結びつく「グローバルな貿易立国」。これが、メイ氏が描くEU離脱後の青写真だ。

 ◆ロシアと北の脅威

 「極限に差し迫れば、先制攻撃手段として核兵器の選択肢を排除できない」

 ファロン国防相は4月24日、BBC放送に核兵器の先制攻撃も辞さないと語った。メイ氏も昨年7月、潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」を更新する理由として「ロシアと北朝鮮の脅威」に言及。政権の念頭にロシアがあることは明らかだ。

 ロシアからはすかさず「ロシアの反撃を受け英国は地上から抹殺されるだろう」(上院国防安全保障委員会のクリンセビッチ委員長)と反論があがった。

 欧州で最もロシアに強硬な外交姿勢を貫くメイ政権。それは同時に、ロシアの脅威が高まるポーランドやバルト三国など東・北欧を取り込み、EU離脱後も安保協力を維持することを想定した戦略でもある。

最終更新:5/17(水) 7:55

産経新聞