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“無料”の恐ろしさ…出版社被害額100億円 海賊版サイト、フリーブックス閉鎖後も波紋

産経新聞 5/17(水) 7:55配信

 「ワンピース」「騎士団長殺し」-。ベストセラーの漫画や小説など5万点をインターネットで無料閲覧できた海賊版サイト「フリーブックス」が5月初旬の閉鎖後も出版関係者らに波紋を広げている。フリーブックスによる出版社側の被害額は閉鎖までの1カ月で約100億円に達したことが判明。出版社側は、サイト運営者に対し損害賠償請求などの法的措置を検討する。(大坪玲央)

 政府も16日に決定した知的財産推進計画で「知財教育の推進」を盛り込んでおり、今後、文化庁の審議会でも著作権法の改正を視野に、フリーブックスの問題が取り上げられる可能性がある。

 「海賊版という違法性の認識が薄れてしまうほど、サイトのレイアウトが整っていた」。大手出版社で海賊版取り締まりの強化に取り組んできた担当者はこう打ち明ける。他の海賊版サイトでは、頻繁にわいせつな広告が表示されたり、特別なソフトウエアを使って本をダウンロードする必要があったりするなど、利用へのハードルが高かった。

 しかし、フリーブックスは広告がほぼゼロで、ダウンロードも不要なため、「中学・高校生が授業中にスマートフォンで読むほど」(出版社関係者)急速に広まった。サイトのアクセス分析などを手掛けるシミラーウェブによると、3月中旬~4月中旬の1カ月のアクセスは1750万件に達した。出版社関係者は「1アクセス当たり1冊の単行本を無料で読んだとすれば、約100億円の被害を受けたといえる」と嘆く。

 大手出版社は1月中旬にフリーブックスの存在を把握し、サイトの問い合わせフォームを通じて削除を要請した。削除された作品もあったが、その後再び掲載されるなど「イタチごっこ」を経て、2月下旬には要請に一切、応じなくなったという。

 3月中旬には小学館、集英社、講談社、KADOKAWA、新潮社、文芸春秋の6社が対策会合を開き、フリーブックスに対して合同で対応を進める方針を確認。調査を進めた結果、ブルガリア、ウクライナ、オランダの3カ国にサーバーが設置されていることが判明した。

 出版社側は5月の連休明けに法的措置を取る方向で検討していたが、3日の午前中に突然、サイトが閉鎖された。閉鎖の理由は明らかになっていないが、大手出版社の担当者は、外部からサーバーに大量のデータが送られてパンクした可能性があるとみる。

 出版社の担当者は、広告もなく料金も取らなかったフリーブックスの狙いが分からないと首をひねる。一方で、5万点の漫画などのデータは削除されていないとみられ、「いつ再開してもおかしくない」とみる。100億円の被害額を年換算すれば大手出版社の売上高に匹敵するレベルだが、担当者はこう語った。「無料で漫画を読めるサイトの存在を一般のネット利用者が知ってしまったのは被害額以上に恐ろしい」

最終更新:5/17(水) 10:10

産経新聞