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げんちゃん、みんなを変えた 知的障害者が一人暮らしすること

BuzzFeed Japan 5/17(水) 6:01配信

重度の知的障害があったら一人暮らしは無理? そんな思い込みをはねのけて、知的障害者の自立を支える取り組みが広がりつつある。生まれつき重度の知的障害がある福井元揮さん(24)、通称・げんちゃん。

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親元から離れ、東京・大田区のシェアハウスで暮らし始めて3年が経った。入所施設やグループホームなどの選択肢とは違い、どこに出かけるのも、誰と会うのも、何を食べるのも自由な生活。その笑顔は周りの人の心を少しずつ変え始めている。【BuzzFeed Japan /岩永直子】

買い物、外食、ガラリと変わった毎日

日曜日の夕方、げんちゃんはヘルパーの男性2人と近所の焼肉屋に繰り出した。言葉でのコミュニケーションは難しい。でも、大好きな焼肉を頬張る笑顔で久しぶりの外食を楽しんでいることがわかる。

帰り道はスキップでスーパーに向かい、好みのスープや飲み物を選んでレジで支払いも済ませた。24時間誰かの見守りが必要だが、自立生活を始めてから自分でできることが増え行動範囲も広がった。

げんちゃんは1992年、妊娠24週の早産で三つ子の3番目として生まれた。重度の知的障害を持ち、体を揺らしたり大きな声を出したりなどの行動障害もある。

一人立ちを考え始めたのは、20歳になった頃。息子の世話に加え、認知症になった自分の両親の介護にも追われていた母・恵さん(55)は、自分が高齢になったり急に死んだりしたら、息子はどうなるのか心配になった。子供に障害がある親の多くが抱く不安。

そんな時、当時げんちゃんの外出の付き添いサービスを行なっていたNPO法人風雷社中理事長の中村和利さんから、「自立生活を考えてみませんか?」と持ちかけられた。

統計は見当たらないが、30年前から知的障害者の自立を支援している市民団体「たこの木クラブ」代表の岩橋誠治さんによると、一人暮らしをしている重度知的障害者は全国で100人もいないとみられている。

意思疎通が難しいことや、専門性の求められる介護人材が不足していることなどが、自立生活を阻む。両親による世話がままならなくなると、自宅から遠く離れた入所施設やグループホームに移ることがほとんどだ。

風雷社中の中村さんは、東京で暮らしていた知的障害者を、空きが出た北海道の施設まで送り届けた経験もある。

自立支援に取り組み始めた狙いを、
「本人が状況を全くわからないのに、ある日突然、住み慣れた場所から離れた場所で暮らすという現状を変えていけないかと思ったからです」

「もちろん、集団生活やルールが固まった環境が合う人もいるので施設も大事なのですが、地域の中で自立する選択肢がほとんどないのは問題だと思っていました」と語る。

夜間も含めた長時間の見守りを可能にする重度訪問介護制度が、2014年から行動障害を伴う重度の知的障害者にも適用されることが決まり、制度上も自立生活を支援しやすくなったタイミングだった。

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最終更新:5/17(水) 6:42

BuzzFeed Japan