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種差海岸に石製ベンチ 国立公園の「保護」と「利用」で割れる見解

デーリー東北新聞社 5/17(水) 10:39配信

 三陸復興国立公園の種差海岸で、来訪者向けに設置されたベンチの是非を巡って関係者の見解が割れている。環境保全に取り組む市民が「植生に影響を及ぼした」と指摘する一方で、設置許可に関わった環境省八戸自然保護官事務所や青森県八戸市は「保全と利用のバランスを考慮しており、法律上問題ない」との認識を示す。浮き彫りになるのは、国立公園の「保護」と「利用」を両立する難しさだ。

 国立公園に加え、国名勝にも指定されている種差海岸で工作物を設置する場合、自然公園法と文化財保護法に基づき、環境省や文化庁の許可が必要となる。

 同事務所や市によると、海沿いにベンチを設置したいとの申し出を受け、昨夏に選定作業に着手。場所を決めるに当たって、植生に詳しい地元専門家の意見を参考にした。

 現地の遊歩道から少し離れた場所には数十年前に設置された石製のベンチが3基あり、周囲は人の足で踏み固められた状態。遊歩道と一体化した新たなベンチを整備し、古いベンチは撤去して植生を回復させる計画だという。

 環境省が3月、文化庁が4月に設置を許可。自然石で作られたベンチ1基は横約1・5メートル、高さ約60センチで、土台部分を地中に埋める工事を経て今月1日に完成した。同事務所の知識寛之自然保護官は「国立公園や名勝は来訪者に見てもらうことも大事。保全と利用のバランスで総合的に判断した」と理解を求める。

 一方、行政側から説明を受けた市民団体「はちのへ小さな浜の会」の中里栄久寿事務局長は、「工事で植生や景観が壊された」と訴え、別な場所への移設や撤去などの見直しを求める。

 種差海岸が国立公園に指定された2013年には、あずまやを寄贈したいという申請が企業から市に寄せられたものの、行政側が指定区域内への設置を見送った経緯がある。

 中里事務局長は、工作物の設置に関して対応が分かれる点も問題視。市観光課の担当者は「設置場所や規模、周囲の景観などを考慮し、寄贈内容によって対応している」と説明する。

 浜の会は18日に緊急の役員会を開き、今後の対応などを協議する方針だ。古川明会長は「役員会で話し合うまで具体的にコメントできない」としつつ、関係者が環境保全の在り方を考える必要性に言及。「基本的に自然のままであってほしいのが本音。新たに何かを作るのであれば、多くの人で話し合って決めるのが良いのでは」と語った。

◇ ◇ ◇

 三八地域をエリアとする「ライオンズクラブ国際協会332―A地区5R」は16日、八戸市に寄贈し、同市鮫町の種差海岸に設置された石製ベンチの除幕式を現地で開いた。

デーリー東北新聞社

最終更新:5/17(水) 10:59

デーリー東北新聞社