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川崎簡宿火災から2年  変わる労働者の街  是正で廃業相次ぐ

5/17(水) 14:57配信

カナロコ by 神奈川新聞

 川崎市川崎区日進町の簡易宿泊所(簡宿)2棟が全焼し、11人が死亡した火災は、17日で発生から2年となる。市内の簡宿は違法状態の是正が進んだが、廃業も相次ぐ。高度成長期の労働者、その後の生活保護利用者らを支えた街は火災を機に姿を変えてきている。

 市は16日、1年ぶりに6回目となる対策会議を開催、現状を報告した。火災後に市が立ち入り調査した簡宿49棟のうち、24棟が建築基準法の耐火規定に違反していたが、今年4月末時点で是正が未完了な簡宿は4棟になった。

 2年前の火災で燃えた簡宿2棟は、2階上部に宿泊スペースを設けた「3階建て」として営業。3階部分の火の回りが早く、犠牲者や負傷者の大半が上層階に集中した。このため、市は35棟に3階以上の使用停止を求め、32棟で宿泊者の移動が完了。残る3棟には数十人が宿泊しているとみられる。

 市の転居支援でも352人が民間賃貸住宅などに移り、簡宿の生活保護利用者は火災直後の1349人から今年4月末時点で672人に半減した。ただ、その8割近くが65歳以上ということを踏まえ、福田紀彦市長は同日の定例会見で「街をどう変えていくかというハード面だけでなく、福祉面も一緒に考えなければうまくいかない」と強調した。

 一方、火災後の対策による宿泊者の減少は、簡宿の経営に大きく影響した。49棟のうち13棟が営業停止や廃業に。マンション建設など土地利用の変更や、大規模な改修を検討している簡宿もあるという。

 古くからの経営者の一人は「簡宿を利用したいと思ってくれている人もいるのが事実。リノベーションで街が活性化するのもいいことだが、資金面での不安もあり、今後どうするか迷っている経営者が多い。簡宿街全体の方向性はまとまっていない」とこぼした。

◆横浜市でも検査
 中区の寿地区に約120の簡宿がある横浜市では、15日から19日にかけて、市内3区の延べ約150カ所で立ち入り検査を実施する。2年前の火災を受け、消防局だけでなく、建築局でも立ち入り検査を始めており、同局建築指導課の担当者は「必要な防火対策に取り組めているか、しっかり確かめたい」としている。

 寿地区の簡宿「共栄」の経営者で、横浜簡易宿泊協同組合理事長の呉俊雄さん(69)は、同地区の簡宿は木造から鉄筋構造へとほぼ入れ替わったとした上で、「川崎と違い寿地区には木造がほぼないので、火災は少ない」と話す。各簡宿で消火訓練に取り組み、万一の事態に備えているという。