ここから本文です

津波に耐え満開 藤の花記憶つなぐ

河北新報 5/18(木) 12:33配信

 東日本大震災で大きな被害が出た宮城県気仙沼市大浦の波板地区の民家跡地で、津波に耐えた藤が今年も花を咲かせた。周辺は多くの住宅が流され、高台移転を強いられたり地元を離れたりした人は少なくない。高さ約3メートル、幅約5メートルで、奥行きは約6メートルある見事な藤棚は満開を迎え、ひときわ存在感を増している。

【写真】漁港の一本松移植 漁師を元気づける存在に

 藤棚があるのは、県道218号沿いにある小野寺宏美さん(59)=気仙沼市上田中=のかつての自宅敷地内。母屋は、2階まで達した津波で全壊した。祖父の代から大切に育ててきた藤は横倒しになりながらも流されず、奇跡的に残った。震災があった2011年、がれきに埋もれる中で淡い紫色の花を付けた。

 自宅跡を更地にしたが、根を張り続ける藤は棚を作り直して養生した。「安波山の新緑と気仙沼湾を背に咲く光景が好き。震災前の大切な記憶が詰まっている」と小野寺さん。津波で帰らぬ人となった父と過ごした思い出の場所は手放さずにいる。

 久しぶりに晴れ間がのぞいた16日はほのかな香りに誘われ足を止める近隣の人たちがいた。波板地区で向かいに暮らす会社員三上ユミさん(45)は母親らと訪れ「たくましく美しい花ですね」と感慨深げに見詰めた。

最終更新:5/18(木) 14:06

河北新報