ここから本文です

千葉ロッテに「身売り説」が再燃する裏事情

ITmedia ビジネスオンライン 5/18(木) 12:56配信

 プロ野球の千葉ロッテマリーンズが悪夢の低迷地獄にハマり込んでしまっている。5月17日に本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた埼玉西武ライオンズ戦も3点を先制しながら結局4-8で逆転負けを喫し、ドロ沼の7連敗。借金も19にまで増えた。首位・東北楽天ゴールデンイーグルスとは17.5ゲーム差にまで広がり、前日16日の時点でまだ5月だというのに早くも自力Vの可能性が消滅してしまった。今季のカード勝ち越しもたったの2度しかない。このチームに一体、何が起きているのか。

【「球団の身売り説」が再燃、どうなる?】

 戦力面での誤算は数多くある。残留を見込んでいた大砲のアルフレド・デスパイネ外野手はキューバ政府との交渉が難航した末に今季からライバル球団の福岡ソフトバンクホークスへ移籍。2014年7月の加入以来、ロッテ打線の主軸として活躍し、昨季も打率2割8分、24本塁打、92打点をマークした優良外国人選手・デスパイネの穴を埋めることはそう簡単ではない。代わって獲得した新助っ人がパッとしない点は現場にしてみれば「まさか、ここまでとは……」というのが正直な心境であろう。

 開幕から打撃不振にあえいでいたマット・ダフィー内野手が前カードの日本ハム3連戦で3本塁打を放ち、ジミー・パラデス外野手も17日の西武戦で出場18試合目にしてようやく来日初本塁打を放つなど2安打2打点をマーク。だが、それぞれの打率は2割2分2厘、1割6分7厘ととてもではないが「これでOK」と言い切れるわけがない。

 また昨季の首位打者・角中勝也外野手が右脇腹痛で戦線離脱へと追い込まれ、エースの石川歩もWBC参戦の影響によるものなのか開幕から調子が上がらずに二軍降格。その角中は19日にも一軍復帰が濃厚となり、二軍の実戦でステップを踏んだ石川も23日のソフトバンク戦での一軍先発登板がほぼ確実となった。投打で飛車角抜きの戦いを強いられていたチームにとって主力2人の復帰は間違いなく明るい材料だが、これだけ減速してしまったチームを再び上昇気流に乗せる作業は非常に困難と言わざるを得ない。

●「球団の身売り」説が再燃

 これだけ主力に想定外の案件が頻発すれば、さすがに首脳陣も頭を抱え込むしかない。こうなるとここまでの低迷は、さすがに「采配」や「起用法」云々の問題ではないだろう。現場を預かる伊東勤監督の心中は察して余りある。2013年シーズンからタクトを振るい、ここまでチームを3度Aクラスに導いてクライマックスシリーズへ進出させてきたが、もしかすると今季ばかりはさすがに早々と諦めモードになってしまっていても不思議はない。

 報道陣にいつも務めて明るく振る舞っているものの、その表情には日を追うごとに苦悩の色が濃くなっていく様子も手に取るように分かる。惨敗した17日の試合後は珍しく「今日はなしでいいですか」と一度は取材拒否の姿勢まで見せたほどだった。

 伊東監督は5月4日の日本ハム戦で4連敗を喫した後、メディアを通じて「球団も外国人を含め本気で動いて欲しい」と緊急補強の必要性を訴えた。これを受け、球団幹部は新戦力補強を急ぎたい考えを示したものの、その一方で「それで100%、問題が解決するわけではない」とも述べている。現有戦力の猛奮起を求めたのは理解できるが、どこか煮え切らない姿勢にも受け取れたのは筆者だけではあるまい。

 そうした中、ここにきて今年3月のWBCでキューバ代表として活躍した29歳のエル・サントス外野手がロッテと契約合意したとの報道が現地メディアから伝わってきた。「やっとか……」という感もあるが、サントスは俊足巧打のアベレージヒッター。デスパイネとはまったく違うタイプであることは言うまでもない。ファンの間からも獲得を喜ぶより「いま本当に必要なのは大砲」「長距離打者とのダブル獲得を急げ」との声が、ネット上で早くも飛び交っている。

 このようにチームが深刻な低迷に悩まされながらもフロントの動きが「的外れ」かつ「鈍化」しているように見受けられるのは、親会社のロッテホールディングス(ロッテHD)の内情と深く関係しているのではないだろうか。これまで浮上しては消えていた「球団の身売り」がここにきて同社周辺で再燃して来ていることも見過ごしてはいけない。

 ロッテHDは日本と韓国で事業を展開するロッテグループ企業を傘下に置く持ち株会社。韓国では一大財閥として、日本でも菓子やアイスなどが人気商品として定着しているが、2015年以降経営権を巡って骨肉の争いが続いている。かつて同社の副会長職を務めていた創業者長男の重光宏之氏が4月末、6月下旬に開催予定の株主総会に向け、現副会長の次男・昭夫氏(韓国ロッテグループ会長兼務)ら経営陣の刷新を求める株主提案をしたと発表。自身を含む4人を取締役に選任することを株主提案として求めていく“対決姿勢”を示した。ちなみに、その提案は過去3回の株主総会でいずれも退けられている。

●球団運営が足かせになっている

 重光宏之氏がロッテHDの副会長職の座を解任されたのが、一昨年の1月。創業者・重光武雄氏(ロッテHD名誉会長)の信頼を失ったことが大きな要因と見られているが、その真相はうやむやのままだ。しかも現副会長の昭夫氏は韓国前大統領・朴槿恵(パク・クネ)被告への贈賄罪で、そして宏之氏もロッテグループから報酬を不当に受け取ったとして横領罪の容疑でそれぞれ韓国検察に起訴されている。

 創業家兄弟がそろって嫌疑をかけられる中、お家騒動にも終着点が見えなくなっていることで日韓両国内におけるロッテのブランドイメージは大幅な低下が懸念されている。球団の千葉ロッテマリーンズに出入りするロッテHDの関係者はこう赤裸々に打ち明けた。

 「こうなるとロッテHDとしては球団運営がますます重荷になってくる。球団は過去に年間で40億円近い赤字を計上したこともあった。本社からの補てんを除いた球団単体の赤字額は、一昨年の10億円強から昨年は過去最低の約5億円程度にまで減額された。昔に比べると大幅に改善されたとはいえ、まだまだマイナス計上であることに変わりはない。

 それにこれだけ弱いと先行きが不透明。昨年の観客動員数は確かに12球団でトップの伸び率だったが、今季は低迷で客足が鈍ってきている。このままだと大幅ダウンは必至だろう。しかも親会社としては創業者一族のゴタゴタによってロッテのブランド力が著しく低下する中、これ以上“出血”してまで赤字球団を支え続けていく余裕はない。マリーンズが今弱くて『補強、補強』と現場から突かれてもカネを出し渋るのは、そういう事情で親会社が消極的になっている部分も大きい。少ない予算の中でやり繰りを強いられるのだから、補強に動く編成担当者も相当に頭が痛いはず。カネがなければ交渉する代理人に言いくるめられ、ババ(しょっぱい選手)をつかませられたりするケースもあるだろう」

 現状、球団運営が足かせになっていることを強調した上で同関係者は、ささやかれ始めている「身売り説」についても次のように述べた。

 「確かに球団運営が広告力につながるとの声も少数ながら一部にあるが、オリオンズ時代からここまで約50年に渡って経営に携わってきたことでその恩恵はもう十分に授かったと考えるべき。これまでも球団身売り話が“浮かんでは消える”の繰り返しだったが、ここ最近はグループ内からも『もういい加減、球団経営から退くべきだ』とトップに対して決断を求める強硬な意見が噴出している。

 日本のロッテHDと韓国ロッテグループの支配権を握り、マリーンズでも球団オーナー代行を務める重光昭夫副会長もさすがに無視できなくなる流れになるだろう。何せ自身の立場も一連のゴタゴタで弱くなっているからね。裏で糸を引く武雄名誉会長もマリーンズのオーナー職にまだ籍を置いていて球団をこよなく愛しているが、今や鶴の一声は発しにくい立場だから『NO』と言っても効力はほぼない」

●買収先の筆頭候補は「LIXIL」

 買収先の筆頭候補としてウワサされるのは、住宅設備大手「LIXIL(リクシル)グループ」だ。5月8日に同社が発表した2017年3月期決算(国際会計基準)の純利益は425億円。前年256億円の赤字から一気に過去最高益を生み出した背景には、海外事業が好調であることと大幅なコストカットに成功した点があるという。

 リクシルは2010年に横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)の買収に乗り出して物議を醸した経緯もある。それだけにマリーンズ球団周辺でも「リクシルのコストカットは球団買収の準備段階に入っているからではないか」ともささやかれている。

 ちなみに一部の報道によると、韓国の検察は創業家兄弟の2人を起訴する裏側で一族支配のロッテ財閥解体を目論んでいるという。今後、千葉ロッテマリーンズにはグラウンド内外で「火薬庫」となりそうな気配が漂う。ただ、いずれにしても選手や首脳陣を含む現場スタッフ、そして応援するファンが熱い戦いに集中できるような環境を一刻も早く整えてほしい。

(臼北信行)

最終更新:5/20(土) 5:46

ITmedia ビジネスオンライン