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<魔法の車椅子>緊張ほぐれ、身体能力向上 療法士が製作

毎日新聞 5/18(木) 13:47配信

 大阪府吹田市の作業療法士、野村寿子さん(54)がつくる車椅子が評判を呼んでいる。身体障害者の体を支える「座位保持装置」を一人一人の特徴に合わせてオーダーメードすることで、姿勢が安定し、体の緊張がほぐれるという。利用し始めてから、大幅に身体能力が向上した少女の母親は「娘にとっては魔法の車椅子です」と喜びを語る。

 1984年に作業療法士の資格を取得した野村さんは16年間、吹田市の肢体不自由児施設で勤めた後、福祉用具製造会社「ピーエーエス」(同府箕面市)を設立し、車椅子の製造を始めた。

 最初に利用者の筋肉の硬さや張り具合、痛みを感じる場所を直接触って確かめ、最適の姿勢を見極める。座り心地をよくするため、わずかなゆとりを残すのがポイントだ。ウレタンを削って座位保持装置を作製し、別の業者に特注する車輪部分に取り付けて車椅子を完成させる。

 脳性まひで重度の身体障害がある滋賀県立甲良養護学校中学部1年、古池玲乃愛(れのあ)さん(12)の母敦子さん(48)は評判を聞いて昨年2月に野村さんに製作を依頼し、2カ月後に完成した。以前の車椅子はずり落ちないよう上半身の4カ所をベルトで締め付けるタイプで、乗ると常に体がこわ張っていた。野村さんの車椅子に座ると、緊張がほぐれ、手で物をつかむ動作が以前よりスムーズになり、表情も豊かになったという。

 さらに作業療法士の野村さんのアドバイスもあり、以前は想像さえしなかった歩くことへの挑戦も始めた。歩行器を使ってゆっくりと歩き、昨年5月の小学部の運動会では初めて自身の足でリレーに出場。今年3月の卒業式でも歩いて卒業証書を受け取った。

 野村さんの活動を知る北海道の士別市立病院の医師、澤口裕二さんは「野村さんの装置が利用者の下半身を適切なバランスで支えることにより、緊張がほぐれて上半身が動きやすくなる」と指摘。重度の身体障害者は姿勢を保つために多くの筋力を使うが、余分な力が不要な分、呼吸が楽になり、表情も豊かになるという。口コミで評判が広がり、野村さんには、今では年間300件ほどの製作依頼が寄せられている。

 敦子さんは「野村さんの車椅子が、娘に新たな道を切り開くきっかけをくれた」と喜んでいる。【芝村侑美】

最終更新:5/18(木) 14:09

毎日新聞