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台湾・蔡総統就任1年 中国圧力、対米関係に綻び 成果出ず支持率は低迷

産経新聞 5/18(木) 7:55配信

 【台北=田中靖人】台湾の蔡英文総統は20日で就任1年を迎える。対中政策で「現状維持」を掲げて対外環境を安定化させ、内政に集中した1年だったが、目立った成果を出せず支持率は低迷。一方、中国は台湾への圧力を弱めず、良好だった米国との関係にも綻(ほころ)びが見える。

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 「今は夜明け前の暗闇。できるだけ早く抜け出すよう努力する」。蔡氏は15日付の自由時報にこう答え、政権の低迷を間接的に認めた。

 与党、民主進歩党は経済成長率と輸出額(対中含む)の増加や失業率低下など、経済指標は前政権時と比べ改善していると強調する。だが、大手テレビ局TVBSが15日に発表した世論調査によると、支持率は28%と就任1年目としては1996年以降の直接投票で選ばれた「歴代民選総統で最低」だ。不支持率は56%に上る。

 主な原因は、内政の不人気政策と政策実現のスピード感の無さだ。週休2日の原則義務化を定めた労働基本法改正は労使双方から批判され、年金制度改革には公務員が反発。対立の大きい同性婚の合法化は先送りされた。3月に公表した8年間で8800億台湾元(約3兆3千億円)のインフラ整備策については野党、中国国民党が「投資先が民進党首長の自治体ばかりだ」として立法院(国会に相当)での関連法案の審議に激しく抵抗している。

 民進党関係者は「『早く成果を』と言われても、スイカは植えて3日で収穫できない」と嘆く。実現した公約は脱原発の法制化などごく一部。国民党が戦後取得した「不当財産」を没収する方針は同党を硬化させ、法案審議の遅延を招く悪循環に陥っている。総統府秘書長(官房長官)は半年以上空席で、政権内の意思疎通にも疑問符が付く。

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 対外関係では、昨年12月の就任前のトランプ米大統領との電話協議で“蜜月”を演出した対米関係に綻びが見える。蔡氏は4月27日、ロイター通信とのインタビューで再度の電話協議に期待を示したが、その翌日、トランプ氏から難色を示された。米国が北朝鮮問題で中国の協力を取り付けようとする中、発言の時期を読み損ねた形だ。影響は今後の武器売却に及ぶとの見方まで浮上している。

 対日関係でも、福島など5県産食品の輸入解禁問題は、昨年末に公聴会が反対派の妨害で混乱して以降、進展がない。

 中台関係の「現状維持」を掲げる蔡氏は、台湾は中国の一部だとする「一つの中国」原則を受け入れない半面、中国批判も極力避けてきた。だが、世界保健機関(WHO)の総会出席問題などで中国からの圧力は続く。「台湾独立」色の強い民進党の中心的な支持層には、「(対中政策に関する)『現状維持』には反対だ。しかし、国民党を利するので政権批判はできない」(独立派長老)との不満もくすぶる。

 「天然独(生まれつきの独立派)」と呼ばれる若年層が支持する政党「時代力量」の黄国昌主席は「もう我慢は十分だ」として、蔡氏に「台湾を正常な国家とする」よう求め始めた。

 淡江大学の張五岳教授は中台関係について「事前の予想より安定している。中台双方の優先課題でなかったためだ」としながらも、「蔡氏の『善意』は北京に届いておらず、関係は悪化し続けている」と指摘。中国の習近平国家主席(共産党総書記)が党内の権力闘争に一段落を付ける今秋の党大会以降、蔡氏は再び中台問題に「向き合わざるを得なくなる」と話している。

最終更新:5/18(木) 8:16

産経新聞