ここから本文です

名物テレビマンが語る 明石家さんまの口の堅さは芸能界一

日刊ゲンダイDIGITAL 5/19(金) 9:26配信

 日本テレビ入局以来30年にわたり、ビートたけし、明石家さんま、所ジョージと仕事を共にした名物プロデューサーの吉川圭三氏。ビッグ3と間近で接してきたテレビマンが“凄さ”の理由を解き明かす。

  ◇  ◇  ◇

 さんまさん恒例の正月オーストラリア旅行は今年で25年目。僕は初期メンバーで毎年参加させていただいています。初期はラサール石井さん、村上ショージさんなどのほかは少数でしたが、今では大物タレントさんも加わり15人以上になることも。おのおの家族連れだから大所帯なのですが、僕は一番最初から参加しているというだけで、オーストラリアのさんま邸で一番奥のゲストルームに泊まらせてもらっています。

 さんまさんはとにかく何でも「おもろいかどうか」でジャッジしている。その昔、暴対法なんてなかった頃、さんまさんは暴力団の余興に呼ばれたこともあったそうです。「姉さん! キレイな“うなじ”してまんなぁ~」なんて極道の妻たちをいじって笑いをとる。実はそんなことも経験しているたたき上げの芸人の一面も持ち合わせています。しかし、後輩に苦労話を聞かせるとか、クダをまくことは一切せず、「だって、そんな苦労話おもろないやん」という。面白くないものを語っても意味がない、というのがさんま的価値観なのです。

 そんな調子で1989年、さんまさんの「おもろない」という鶴の一声で800万円かけて作った番組セットがお蔵入りしたのです。フジテレビは「ひょうきん族」などバラエティー番組で独走し、潤沢な予算もあり、それが普通でしたが、日本テレビでは大事件でした。担当者だった僕は大道具さんに平謝り、社内では始末書もの。肩身の狭い思いをしました。でもそれが僕に対するさんまさんの信頼につながり、次第に認められるようになっていったのです。

 さんまさんは芸人・役者以外のことはやらないことも徹底していて、政治は話題にしない。バスケや海外ゴルフやヨーロッパサッカーに詳しく、ボクシングのモハメド・アリの生きざまなどから実はスポーツを通して世界を見ています。でも「事情を知らん(知らない)俺が話しても中途半端になるで」といって専門外の話は一切しない。それが「さんま美学」なのです。

 人間関係も同じで、大物タレントだろうが一兵卒だろうが、恋愛話も人生相談も何でも聞いてくれて、小さな不幸にはケタケタ笑う。オモロイ部分だけをエッセンスとしてネタにすることはあるが、それでいて核心に触れることは絶対語らない。悩みも「ウン、ウン、ウン……しゃーないなぁ!」と流してくれる。だから他で話せないこともさんまさんの前なら話せるし、スッキリする。SMAPの木村くんも中居くんも騒動の最中に誰にも言えない心の内を語っていたんじゃないかと思います。おしゃべりそうに見せて一番口が堅い、もしもさんまさんが真相を語ったら芸能界がひっくり返ることがいくつもあると思います。さんまさんの楽屋はいつも人が集まり、僕たちスタッフも何かさんまさんに楽しんでもらえるオモロイ話を手土産にもっていきたい気分になる。まるで“アリ地獄”のような(笑い)吸引力が明石家さんの魅力なのです。(おわり)

▽1957年、東京都生まれ。82年、日本テレビに入局し、「世界まる見え!テレビ特捜部」「恋のから騒ぎ」「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」などを手掛ける。13年、日本テレビからドワンゴへ出向、現在、ドワンゴ会長室付エグゼクティブプロデューサーを務める。近著に「たけし、さんま、所の『すごい』仕事現場」(小学館)がある。

最終更新:5/19(金) 12:17

日刊ゲンダイDIGITAL