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ゾンビブーム“増殖”なぜ 社会的背景「解剖」へ 

京都新聞 5/19(金) 11:40配信

 死体がよみがえり、人を襲う「ゾンビ」について学術的にまとめた本の出版が相次いでいる。映画やゲームを中心に世界的ゾンビブームとも言われる中、社会的背景を読み取る試み。6月には、今春刊行された「ゾンビ学」と「新世紀ゾンビ論」の著者たちを迎えた書評会が京都市内である。
■著者、京都で6月書評会
 ゾンビの勢いが止まらない。かつてはマニアが好むホラー映画の印象が強かったが、テレビゲームを基にした映画「バイオハザード」がヒットするなど2000年代に入ってゾンビ映画の制作が急増。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)ではゾンビが襲ってくるイベントが人気を集め、ゾンビ姿の3千人が踊る催しも開かれた。
 もともとゾンビは、中南米の島国ハイチで呪術を用いて生き返らせた死体だったとされる。1929年に米国人が著書「魔法の島」に記して有名になり、32年に初のゾンビ映画とされる「ホワイトゾンビ 恐怖城」が米国で作られた。
 奈良県立大の岡本健准教授(コンテンツツーリズム学)が4月に出した著書「ゾンビ学」では国内外の映画やゲーム、漫画などに登場するゾンビの歴史や描かれ方を時代背景とともに振り返り、ゾンビとは何者かに迫る。エイリアン(異星人)と違い、ゾンビが人としての面影を残しつつ、感情や意志を欠いた姿で現れることに「ある意味、人間がそうなるかもしれない存在。ゾンビが悪者と単純に捉えられず、いろんな比喩を込めた私たち自身の投影でもある」と指摘する。
 また、文芸評論家の藤田直哉さんが3月に出した「新世紀ゾンビ論」では、21世紀に入って日本の漫画で登場した「美少女ゾンビ」など新ゾンビ像が生まれた背景を探る。壁でゾンビを分断するのでなく「共存志向の作品が現れている」とし、トランプ米大統領に象徴される排外主義が広がる中で未来への希望とみる。
 書評会は6月17日午後2時から京都市上京区の同志社女子大今出川キャンパス純正館で。無料。予約不要。人文書院TEL075(603)1344へ。
■人間考える視点大切
 「妖怪学」の第一人者、小松和彦・国際日本文化研究センター所長の話 妖怪の背景には日本人の自然観が見えるように、人間がゾンビに何を託してきたのか、ゾンビだけを追求するのではなく、ゾンビと人間の比較を通じて、人間を考える視点が大切。妖怪学とも交流できたら面白いかもしれない。

最終更新:5/19(金) 11:55

京都新聞