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“売れる線”を持っているからうらやましい? 『GOD WARS(ゴッドウォーズ)~時をこえて~』箕星太朗氏×竹安佐和記氏対談

ファミ通.com 5/19(金) 15:02配信

●絵を描くのは好きじゃない!?
 角川ゲームスより2017年6月22日発売予定のプレイステーション4、プレイステーション Vita用ソフト『GOD WARS(ゴッドウォーズ)~時をこえて~』。本作は、“日本最古の歴史書である古事記”と、“古来、人々が親しんできたお伽話”を融合させたタクティクスRPGだ。キャラクターデザインを箕星太朗氏、モンスターデザインを竹安佐和記氏が務めることでも話題を集めているが、ふたりのデザイナーはお互いをどのように意識しているのか? お互いのデザイン論やモノ作りに対する姿勢、そして『GOD WARS(ゴッドウォーズ)~時をこえて~』への意気込みなどを箕星太朗氏と竹安佐和記氏にうかがった。

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■写真右:箕星 太郎(みのぼし たろう)氏(文中は箕星)
■プロフィール
デザイナー/マンガ家。KONAMI在籍時、ミノ☆タロー名義で『ラブプラス』のキャラクターデザインを担当。KONAMI退職後は、箕星太郎名義にて『イグジストアーカイヴ -The Other Side of the Sky-』(発売:スパイク・チュンソフト)、『√Letter ルートレター』(発売:角川ゲームス)、『めがみめぐり』(発売:カプコン)などでキャラクターデザインを務める。また、マンガ家として少年マガジンエッジにて『制服ロビンソン』を連載中。

■写真左:竹安 佐和記氏(文中は竹安)
■プロフィール
デザイナー/マンガ家。カプコン在籍時『デビル メイ クライ』モンスターデザイン、『鉄騎』モデル制作を務める。クローバースタジオ移籍後、『大神』の妖怪デザインを担当。クローバースタジオ退職後、株式会社crimを設立し、『零 ~月蝕の仮面~』(発売:任天堂)、『無限航路』(発売:セガ(現セガゲームス))にてキャラクターデザインを手掛ける。『El Shaddai -エルシャダイ-』(発売:イグニッション・エンターテインメント)ではディレクターとキャラクターデザインを兼任。pixivコミック上にて、マンガ『El Shaddai ceta-エルシャダイ セタ-』を連載(2015年6月連載終了)

――おふたりは以前から面識があったのですか?

箕星 角川ゲームスさんで初めてお会いしました。

竹安 そうですね。そのときが初めてです。

――意外でした。では、『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』がきっかけで……。

箕星 そうです、そうです。お会いするまでは“『エルシャダイ』の人”というイメージくらいしかなく(笑)。

竹安 僕も“『ラブプラス』の人”っていうイメージしかなくて(笑)。

箕星 だから、初めてお会いしたときに、竹安さんだとわからなかったんですよね。部屋の中にたくさん人がいたんですけど、「どなたが竹安さんかな?」と(笑)。でも、その後に食事に行って話してみたら「しゃべりやすい人だな」と感じました。

竹安 いまでは、個人的に仲よくしているほうが多いような気がします。仕事というよりは……。

箕星 プライベートで(笑)。

竹安 あまり仕事の話はしないですよね。

――(笑)。年齢も近いのですか?

箕星 たぶん近いんじゃないですかね。

竹安 何年生まれでしたっけ?

箕星 その辺はまだ内緒にしている。

一同 (笑)

竹安 女子じゃないですか!

箕星 気持ちは女子なので(笑)。

――でも、出身地は近いですよね?

箕星 僕は大阪。

竹安 あれ、僕も大阪ですよ!

箕星 竹安さんはカプコンさんでしたよね。

竹安 そうです。元カプコンで……。

箕星 カプコンさんだから大阪だったわけですよね。

竹安 あ、そうか。箕星さんは大阪のKONAMIさんにいたわけですね。

箕星 だからプライベートでは、カプコンさんの絵描きさんの知り合いが多いんです。

――お互い、どのようなイメージを持たれていらっしゃったのですか?

箕星 「問題ない」感じかな。もしくは「大丈夫」な感じ(笑)。

竹安 (笑)。僕の箕星さんの印象は、お会いしてからの印象になりますが、「真逆の人だな」と思っていて。話してみて、絵に対する考えかた、軸がぜんぜん違うなと。売れ筋で行ける考えかただと思うので、自分が申し訳ない気持ちになっちゃって……。

箕星 アーティスト寄りにしたほうがいいんですかね?

竹安 いやいや。お話したときに「僕も商業的に考えたほうがいいのかな」と反省しました。

――ゼロからものを生み出す仕事に携わっていらっしゃるうえで、商業的にいくのか、アーティスティックにいくのかというジレンマはありますよね?

箕星 でもやっぱり、最終的にはクライアント側がとういう意図で依頼してきているのか、そして、その依頼に対して、どう応えるか………ですよね。

――『GOD WARS(ゴッドウォ-ズ) ~時をこえて~』でのデザインの依頼は、個別にお話があったのですか?

箕星 個別ですね。

竹安 そうです。

箕星 僕は安田(安田善巳氏(角川ゲームス社長。『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』ではディレクター/シナリオ/原作を担当))社長とお話させていただいているときに「いままでRPGとアドベンチャーゲームを作れなかったことが心残り」という話題が出たときに「じゃあ、やりましょう」となって。最初はリップサービスかな? と思っていました(笑)。その後、正式にオファーをいただけて「じゃあ、ぜひ」と。

竹安 僕も角川ゲームスでほかの仕事で携わってはいたんですけれども、社内の噂で「和もののゲームを作っている」とは聞いていたんですよ。出るのを楽しみにしていたら突然呼ばれて(笑)。『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』のお話をいただく前に、和柄の絵本を1冊描いていたのですが、それを安田社長にプレゼントしたら気に入ってくださって。きっかけって思わぬところから生まれるんだなって思いましたね。

箕星 あとね、好きなものをTwitterでつぶやくのもいいことですよ。

竹安 あ、そうなんですか。

箕星 けっこう仕事来ますもん。

竹安 えー!

箕星 ありますあります。たとえば「○○が好きだ」とつぶやいたら、そのお仕事をいただいたり。

竹安 僕は、個人的なことは何もつぶやいていないんですよね。宣伝みたいなことはTwitterで。

箕星 でも、好きだから仕事を断れないじゃないですか? それでだんだんしんどくなっていくという(笑)。

――安田社長からは、箕星さんに対してはキャラクターデザイン、竹安さんにはモンスターデザインと、明確なオファーだったのですか?

竹安 最初から明確でしたね。

箕星 僕も、最初から「キャラクターを」というお願いでした。

竹安 じつは僕が入ったときって、もうキャラクターデザインが終わっていたんですよ。

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――そうだったんですね。

竹安 僕が入ったのは、立ち上げの後半だったと思います。もういろいろと決まっていて。

箕星 でもl、僕がキャラクターデザインを担当することが決まる前に、「竹安さんがモンスターデザインをやる」と聞いていましたよ。

竹安 そうだったんですね。じゃあ、話自体は早かったのかもしれません。

――キャラクターとモンスターのデザインを別々の人間が手掛けるというのは、やりやすい、やりにくいというところはあるのですか?

竹安 やりやすいですね。デザインのオファーは多いのですが、キャラクターよりもモンスターデザインのほうが好きなんですよ。キャラクターは趣味嗜好が出てくるので、チェックがきびしくなりがちなんです。でも、モンスターはわりと1発オーケーが多いので(笑)。

――意外です。

竹安 一定水準さえ超えていたら、あとは好きにさせてもらえることが多いのも好きなポイントですね。絵的にも遊べるんですよ、モンスターって。キャラクターデザインに関しては、センシティブで苦手という意識があります。安田社長が僕の画集を見て気に入ってくれたということもあり、そのタッチでいいのかな、と。多少デザインのリテイクはありましたが、8割くらいは1発オーケーをいただけたので、好きに描かせていただいたという感じですね。

箕星 何体くらいだったんですか?

竹安 20体くらいですね。

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――“和”ということ以外で、角川ゲームス側からのデザインに関してのお願いはあったのですか?

竹安 「日本の神話のルーツを掘り下げたい」とおっしゃっていたので、広い意味で平安時代とか江戸時代とか、そういった時代の“におい”も出してみたら「ゲームとは時代設定が違うので、そこは変えてください」とリテイクになったんですね。結果として、大和時代ぐらいの雰囲気になっています。そのぐらいですかね、お願いされたのは。

――箕星さんはいかがですか?

箕星 エクセルの表がありまして。キャラクター名と年齢と髪の毛の色の。

――髪の毛の色の指定まであったのですか。

箕星 はい。あとはたとえば、「このキャラは海で活躍する分、日に当たるので肌の色が濃いです」とか。そのキャラならではの特徴の部分が記入されていました。そのほか、お伽話の主役級のキャラが出てくるということで、「それぞれ主役になれるイメージ」というお願いがありましたね。

――髪型や服のデザインについても、箕星さんがゼロから生み出したわけですね。

箕星 そうですね。「“和”をイメージできればいい」と考えてデザインしました。あとは素材。その時代になかった素材、たとえばビニールなどはダメで、そういうのは使用しないでください、というお願いもありました。

――ちなみに、箕星さん自身は“和”と“洋”で得意なのはどちらなんですか?

箕星 僕は学生服しか描いていないので(笑)。

一同 (笑)

箕星 でも“和”が多いんですよね。『めがみめぐり』も“和”じゃないですか。じつは“和”は苦手なんですよ。着物は構造を調べないとダメでしょ。和装は着ないのでわからない。わからないからすごく調べてしまうんです。間違えないように。でも、今回はそれがなかったので好きにデザインできました。

――最終的に何人くらいキャラクターをデザインされたのですか?

箕星 15体くらいですかね。

――いちばん苦労したキャラクターは?

箕星 いや、割と自由にできた分、生み出す苦労はなかったです。

――男性キャラ、女性キャラで得意、不得意というのもないのですか?

箕星 いっしょですね。……でも、おじさんキャラクターのほうが好きかも。『√Letter ルートレター』のときも、おじさんキャラクターのデザインをさせていただけたのがうれしかったですね。

竹安 絵描きは、けっこうおじさんを描きたいという人が多いですよね。

箕星 そうですね。

竹安 僕もおじさんキャラクターはすごく好きです。若い女の子を描けるようになりたい、という憧れはずっとありますが、苦手というか、なんかやっぱりどうも……。

箕星 かわいいパーツって決まっているんですよ。その人の絵柄の中で限られているんです。

竹安 移動中、箕星さんが僕にずっとぼやいていて。「パターンがない、パターンがない」って(笑)。「このパターンじゃ足りひん」ってね(笑)。

箕星 もうちょっとこう、目が細いパターンないかな………とか。福笑い的な感じで、自分の持っているパーツをどう組み合わせてみるといいかを考えてます。

――箕星さんがデザインされるうえで、いちばん重視するパーツはどの部分なんですか?

箕星 ……目かな?

竹安 箕星さんは目と鼻のパーツって、いつ発明したんですか?

箕星 それはね、『ラブプラス』のとき。

竹安 やっぱり発明ですよね、これは。

箕星 じつは僕は人の真似をするほうが好きだったので、キャラクターデザイン願望はなかったんですよ。作画監督的なポジションがいちばん好き。

竹安 ありものをどううまく見せるかということですか。

箕星 そう。それを描きたくてゲーム業界に入ったんですけど、なかなかそういう機会がなくて。

竹安 鼻とか、すごくアグレッシブで特徴的じゃないですか?

箕星 鼻は3Dで作ったんですよね。モデルの鼻がぺちゃんこだったから、線にしたらこうなって。

――三次元的な見えかたも意識されているのですか?

箕星 作品によりますね。たとえば『めがみめぐり』ですと、正面しかないので、正面に集中すればよくて。『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』はゲーム中に後ろが見えちゃうので、裏側も全部書きました。衣装によっては造りがたいへんな子もいるんですよ(笑)。

竹安 確かにたいへんそうですね。

箕星 いや、でも、竹安さんのデザインもかなりたいへんだいと思いますけど(笑)。

竹安 僕にとっては箕星さんのデザインのほうが難しいんですよね。わかりやすく言ったら、少ない線で決めていくじゃないですか。僕のデザインは線が多いので、極論を言うと「なんとでもなる」と思いながら描いているので楽なんですよね。

――おふたりともPCで描かれていらっしゃるんですか?

箕星 僕はPCです。

竹安 線画は筆ですね。

箕星 筆ペンですか?

竹安 筆ペンで描いています。原画を持ってくればよかったですね(笑)。全部A2で線画で描いています。絵って縮小するとよく見えるんですよね。

箕星 そうそう、そうですね。

竹安 大きく描いたほうがいいのでA2にしています。

――ゲームという特性を考えたときに、“動く”ということを意識されてデザインされていくのですか?

箕星 一応。やっぱり。

竹安 ずっと僕は3Dモデラ―をやっていたんですね。そっちのほうが歴史が長くて、8~10年くらい3Dモデラーをやっていたんです。だから「自分だったら動かせる」と思ってしまうため、あえてそこは気にしないというか。「動かせない」と言われたら「いや、僕だったら動かせるよ」と言い返せる自信があるので、必然的にそういうデザインになりますね。

箕星 マント、嫌がりますよね。

竹安 マントとか、長髪は嫌がられますね(笑)。でもいまの時代、けっこうなんでもいけますけども。

箕星 あと袖も嫌がられますよね。着物の袖。

竹安 『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』のキャラクターの中には、袖があるデザイン、衣装の子がいますよね?

箕星 います。だから後ろにもってきて、デザインと動きが成立するように考えています(笑)。

――(笑)。実際にお互いのイラストを並んで見たときの印象はいかがでしたか?

箕星 ぜんぜん違いますよね(笑)。でも、ゲームになったら違和感がないんですよ。

竹安 こういうのを合わせたかったんだ、という理解はありますが、僕としては「これはどうなのかな?」というのは最初にちょっとありました。カレーそばみたいな感じと言いますか(笑)。

箕星 それがいいのかなと思っていますけどね。

――デザインされるうえで、相談もされなかったわけですよね?

竹安 あ! そういえば1回も相談していなかったですね(笑)。

箕星 デザインの話はしたことないですね。違う話はいっぱいしましたが(笑)。

竹安 たぶん僕の中で、箕星さんはデザインの話がしにくい対象なんですよ。僕からすると流派が違いすぎるというか。「うらやましい」と思う部分はすごくあるけど、何をしゃべったらいいんだろう、と。箕星さんはアニメのキャラクターが着眼点としてあるんですが、僕は『ウルトラマン』の怪獣が好きで。マンガやアニメも好きでしたが、女性キャラクターが好きじゃなくて、むしろジャマなものとして捉えていて。

箕星 僕は子どものころは『うる星やつら』とかが好きでしたからね。

――竹安さんのルーツは三次元、箕星さんのルーツは二次元だったと。

竹安 どうなんでしょう。フェチが違うんですかね? そもそもの着眼点として。話を戻しますが、箕星さんのやりかたはすごくうらやましいと思っています。「絶対にこっちのほうが売れる」とつねづね思っているんですけど、女性キャラクターに興味がわかないんですよね。

――「しっかりとした報酬を払うので商業的なデザインをお願いします」と依頼されたらどうしますか?

竹安 箕星さんにおまかせします!

箕星 (笑)。逆に僕はアーティスティックなのは苦手かな。あまり興味がない。

竹安 あ、興味ないんだ!

箕星 商業にしか興味がないですね。絵画とかは面倒で。僕、基本は描きたくないんですよ。

竹安 僕もそうですよ。

箕星 本当? いや、そうでもないでしょう(笑)。

竹安 本当に描きたくないんですよ!(笑) 毎日「描きたくない」と思っているから、“絵描き”って呼ばれるのがすっごく嫌いなんですよね。

――でも、描きたくない方が東京ゲームショウで4日間(※1)描き続けないと思いますが(笑)。
※1:東京ゲームショウ2016の角川ゲームスブースにて、竹安氏は4日間かけてヤマタノオロチのイラストを書き続けた。
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竹安 あれはパフォーマンスなので(笑)。なんだろうな、絵を描くのは嫌いなんだけどなあ……。

箕星 僕ね、落書きが好きなんですよ。チラシの裏に描くとか。あんなのしかしたことなかったので。

竹安 なるほど。

――でも、ご自身の中に「こういう絵を描きたい」という欲求があるからこそ、デザイナーを仕事にされているわけですよね。

箕星 そうですね。たとえば、好きなマンガ家さんがいるじゃないですか。好きなマンガ家さんが描く女の子とか男の子とか、ああいうのは記憶の中にあるので。

竹安 それで言うと、僕はアイドルを1回も好きになったことないんですよ。実在しているものに関しては、手に届く範囲にしか興味がないというか。クラスのかわいい子のほうがいいと……。わかった! だから女性キャラクターも描くことに興味がないというか。一方でモンスターのイラストを描いていて楽しい理由って、モンスターには会えないじゃないですか、絶対に。だから描いていて楽しいんだろうなと。描いている対象に会いたいんですよ。どこかで「こういうものに食われたい」という願望が僕の中にはあるんだと思います(笑)。

箕星 でもやっぱりこう、自分の中にいろいろな引き出しがあっても、僕の場合はお客さんが求めているのはこれじゃないって思ってしまう。だからこれ以外をやっても、お客さんには迷惑になるわけで、「余計なことをするな」と……。

竹安 そういう意味では、僕は迷惑ばかりかけている気がするな(笑)。

箕星 僕は昔から人真似がすごくうまくて。だから得意で描いていたんですけど、逆にオリジナリティーを求められたときに「どうしようかな」と思って。絵柄がなかったんですよね。

竹安 そのときは苦労されたんですか? いまはマンガの連載もされていますが。

箕星 どうせだったら、できないこと、いままでと違うことをしようと思って。単行本が夢だったわけですよ。オリジナルの書籍って、機会がないじゃないですか。その機会をいただけたので、完結するまでがんばろうかなと。

――竹安さんも画集やマンガを出されていますが……。

竹安 でも僕は出したくて出したわけじゃなくて、やっぱり仕事なんですよね。仕事って僕から「これをやらせろ」はないわけです。基本は「こういうのをやってみませんか?」とお話をもらって、たまたまニーズがあったんだなと……。僕は本当に市場をまったく見ていない人間なので、勝手気ままにやっていたら、たまたまハマっただけですから。

箕星 でも、それがアーティストっぽいところですよね。

竹安 うーん、箕星さんと考えかたが違うのは、僕は「人生3度当たればいい」と思っている人間なんです。あとは「この仕事で食べていければいい」と思っていて。そこがたぶん感覚として違うところがあるのかな。当てられるものができる自信もないし、諦めているところもあるし。箕星さんみたいに描ける人がいてくれたら、まかせたいというのは非常にありますね。

――あとでうかがおうと思っていたんですけど、竹安さんは一時期ゲーム業界から離れていらっしゃっていましたよね。個人的な作家活動に力を注いでいると思っていたんです。そう考えていたこともあって、『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』でモンスターデザインを担当されると知ったときにすごく驚いて。「ゲームをやろうかな」と思われたきっかけだったり、作家活動があったからこそ「ゲームでこういう表現がしたい」という部分があったのですか?

竹安 そんなかっこいいことが言えるわけではなくて、少し前まではゲームのオファーが減って、逆にアート系のオファーが増えてたんです。自分の意思がそこにあったというよりは、勝手にやっていたら、周りが僕の道を決めてくれたという気がします。

――なるほど。箕星さんはフリーでやられているうえで、ご自身の中で表現してみたいということはあるのですか?

箕星 基本的にオファーを受ける際、「美少女を描いてください」という仕事は受けていないんですよ。それはおもしろくないし、せっかく会社員を辞めたわけですからね。逆にいままでやっていないことばかりを選んできました。

――箕星さんの中で、ゲームの仕事は特別な想いがあるのですか?

箕星 そうですね、もうちょっと中に入りたいですね。

――ディレクションということですか?

箕星 フリーのデザイナーって、ゲームの制作スタッフと離れているんですよね。つまり、僕はひとりで作業をするわけじゃないですか。できれば制作スタッフといっしょにやりたいですね。

竹安 それ、よく言ってましたね。

――いっしょにいることで、もっとよくなると?

箕星 そうです。お互いに近かったらアドリブができるわけです。「そこ、もうちょっと回転させよう」とか。週に1回のミーティングとかではなく、つねに近くにいる環境でデザインを手掛けてみたいですね。

――竹安さんはスタッフと密に進めたいタイプですか?

竹安 うーん、ポジションにもよるのかなとは思うんですけど……。密にやりたいというか、その経験のほうが長いので。ずっとひとりでやっていると、寂しくなってくるというのもありますしね。

箕星 厚かましい希望なんですけどね。人とやるのはめんどうなわけですから。

竹安 そうですよね。

箕星 でもやっぱりひとりではできない。竹安さんはひとりでできるけど。

竹安 いやいやいやいや、そんなできないですよ、僕も。

――ひとりだと気づかない指摘や、第三者の目線での意見がいつでも聞けるのは、環境としてはいいですよね。

箕星 そうですね。100%自分で自信を持って「これは売れる!」と思ってやってはいませんから、いろいろなものを吸収できるのは楽しいです。どんな若手の人から言われても楽しい。だから若手だからといって、ナメた態度をとったことはないです。逆に勢いがない人に腹が立ちますよね。「もっと言ってこい!」と。

竹安 たとえ絵がヘタでも、噛みついてくる人はかわいいですよね。

箕星 なぜか女性のほうがガッツがありますよね。

竹安 そう! 僕もけっきょくアシスタントでお願いしていたのはほぼ女性です。

箕星 じつは僕も弟子は全員女性です。

竹安 なんでなんでしょうね?

箕星 客観的にみて、僕はきびしいと思うんです。だから付いてこられるのが女性なんですよね。男性は途中で逃げちゃう。

竹安 なんで女性のほうがタフになったんだろうね。

箕星 男性はけっこうヘナヘナってなりますよね。

竹安 マンガを描いているときに、アシスタントで残ったのは女性だけでしたね。男女半々でお願いしていたんですけど。男性はいい意味で言うとドライな人が多くて。「ここまでしかしません」とか、「時間になったので終わりにします」とか。逆に女性は「いや、これが終わるまでやめません!」って言ったり、「これとこれ、どっちがいいですか?」ってパターン別のものを持ってきたり。

箕星 あ、男性だとおじさんがいいですね。僕はマンガのほうのアシスタントさんはおじさんばかりです。

竹安 あ、そうなんですか!

箕星 ベテランの方ばかりです。

竹安 それはいいですね。

箕星 頼んでいないコマもちゃんと描いてくれたり。この場で御礼を言っておきます。いつもありがとうございます。

――(笑)。箕星さんがおっしゃるおじさんというのは、30歳以上ですか?

箕星 40歳くらいですかね。その年齢までずっとやっていらっしゃるから、プロ意識が高い。だからこそ、その年齢まで続いていて。いやー、人は難しいですよね。

竹安 まあね。これは別の席で盛り上がれる話題ですね(笑)。

――(笑)。では話題を変えて……。

竹安 じつは箕星さんのマンガで思っていることがあって。「なんでこんなクオリティーで描こうと思ったんだろう」と。超絶クオリティーが高いじゃないですか。

箕星 がんばって描いていますね。でも、この前「スマホだと見にくいんだよね」と言われて(笑)。

竹安 あのクオリティーは、スタジオ制でやっていらっしゃるマンガ家さんのクオリティーですよ。

――箕星さんは何人態勢でマンガを描かれているのですか?

箕星 3人です。

竹安 (笑)。すごいですね。

箕星 しんどいですね。

竹安 そういうところがうらやましいと思って。僕はすごく打算的にコスト計算とかをしちゃって、自分の絵のクオリティーを、コスト計算の結果に応じてバロメーター調整するんですよ。「この作風だとこのあたりで」と。たまにマンガを描いてほしいと頼まれることがあるのですが、ひとりでiPadで描けるマンガしか描かない。でも箕星さんはガチじゃないですか。

箕星 僕はほかを知らないから、「マンガとはこうあるべきだ」と思ってやっていますね。

竹安 それはわかりますけど、「え! いきなりエベレストを登っちゃうの!?」というところから始めているから。

箕星 わりと力の抜きどころを見極めるのがうまいのかも。うまく見えるところと、がんばるところと、要領をよくするところがわからないようにするのが上手なんだと思います。

竹安 箕星さんがうらやましいと思うもうひとつが、“売れる線”ってあるじゃないですか。その売れる線が、無意識で描けるくらいになっているんですよね。ササササーッて描いた線が、売れる線で描けてしまう人なんだなと思って。「絵のパターン、流派が少ない」とおっしゃっていましたが、それは全部売れる線になっているんですよね。それが本当にうらやましいなと。

箕星 僕、好きな作家の真似をするときは、パーツの位置がいっしょなんですよ。どの絵もバランスがよく似ている。目の大きさ、鼻の位置、口の位置。1990年代って、わりと口が上のほうにあるんですよね。

竹安 時代によって絵柄が変わるのって、哲学があるんですかね? なぜそう変わるのかという。

箕星 何でですかね?

竹安 松本零士先生の『銀河鉄道999』のメーテルとか、僕はいまでも大好きですけど。

箕星 僕は、いのまたむつみ先生が好きだったなぁ。

竹安 僕も好きです。

箕星 あとは藤島康介先生とか。パーツ位置が好きで真似して描いていました。

竹安 人間を見て描いているというよりは、キャラクターを見て描いているわけですか?

箕星 いや、キャラクターデザインを仕事にしてからは、人間を見ています。逆に、人の絵は見ないようになりました。見ちゃうと引っ張られるんですよね。流行りものとかも含めて見ていませんね。僕は古くささで売っているから、逆に新しいものは真似をしないでおこうと。

竹安 箕星さんが描かれるものは、2、30年後に教科書に載っていてもおかしくない絵ですよね。

箕星 (笑)。100年後ぐらいに浮世絵のような感じで扱ってほしいですね。

竹安 そうそうそうそう! そういう感じがするんですよね。

箕星 『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』では、僕の大事にしている部分を安田社長がわかってくださっていて、自由にやらせていただけているのはありがたいですね。

――『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』はお伽話をモチーフにしていますが、誰もがよく知るお話のキャラクターデザインということで、難しい部分はあったのでしょうか?

箕星 金太郎だったら“金”って書いとけばいいかなと(笑)。

一同 (笑)

竹安 めちゃくちゃいい話(笑)。

――皆さんが持っているイメージを大事にしたデザインを心がけた、と書き直しましょうか?(笑)

箕星 ベタなやりかたが好きなんですよね。性格もベタベタですし。

竹安 さきほど言った“売れる線”を持っているから、そういうエッセンスを入れてもキレイにまとまるんですよね。ベタに見えない。すごく計算されていきついたデザインなのかな、と。

箕星 キャラクターデザインのインタビュー、皆さん困るんですよね(笑)。僕のデザインは、わかりやすいというか、哲学的な路線ではないので。

竹安 箕星さんに会うといつも思うんですけど、すごくしゃべりやすいんですよね。その人柄があるからこそのデザインなのかな、と。

――竹安さんにおうかがいしますが、たとえば東京ゲームショウで描かれたヤマタノオロチの場合、明確なイメージを持って描き始めたのですか?

竹安 下書きは別でやっているんですよ。

箕星 小さいのでやっていましたね。

竹安 小さいサイズで最初に仕上げておいて。それをもとに本番に挑んだという感じですね。でも東京ゲームショウのときは1発描きでやっていったので「どこまでできるかな」というのがありました。会場からホテルに戻ってからも、部屋の壁に模造紙を貼ってイメージトレーニングしていたんですよね。某マンガでカマキリと闘っていたように、毎晩ヤマタノオロチと格闘していました(笑)。

箕星 あ、僕もわりとキャラクターが勝手に動くんですよ。だからあまり悩んだことがないんです。悩んだらぜんぜん違うものになっちゃいますね。

竹安 それ、わかります。僕もルシフェルとイーノックを描くときは、彼らが勝手に動きますね。

箕星 ですよね。

竹安 うん、もう頭の中でグワーッと動いて。

箕星 ダメだったら別のルートに行けばいい話なので、描くときには悩まないですね。

竹安 本当は、1発描きで全部やれるといいんですけどね。意外かもしれませんが、いろいろと準備しているんです(笑)。1発でやれないわけではないんです。やれないわけではないんですけど、予習したり、練習したほうがクオリティーは上がるので……。

箕星 練習……してないですね……。

竹安 (笑)。箕星さんが“売れる線”を持っているのと同じように、僕もなんとかなる線を持っているんですよね。東京ゲームショウ2016でのライブペインティングでは「この失敗をしたら、この線を描けば整う」ということをやっていました。3日目が終わったくらいで「あかん! できへんかも」と思って、4日目は自分の中にある、ありとあらゆる武器を総動員して辻褄を合わせるという。

箕星 間に合っていましたもんね。

竹安 初日は「まずは好きに描こう」で進めて、3日目くらいから「やばいなぁ……」と思い、4日目はもう逃げに走るんですよね。

箕星 僕がちょっと書かせていただいたものも、キレイに仕上げてくださいましたよね。

竹安 いや、でも、速筆で描いていただいても箕星さんのイラストだとわかることはすごいですよ。

箕星 サイン色紙の絵とか超下手くそですよ。

竹安 そうなんですか?

箕星 デジタル脳になっているので。

竹安 タブレットじゃないと描けないって言っていましたよね。肩、痛めません?

箕星 いや、もうボロボロです。もう首がボロボロです。

竹安 わかります。東京ゲームショウ2016のライブペインティングでは、僕もずっと首にタオル巻いていましたもん。

――改めてうかがいますが、角川ゲームスと仕事をされてみての感想はどうですか?

箕星 やりやすいです。社長という役職となると、どうしても「売れればいい」という人が多いですよね。ビジネス、商業に寄っている方が多い中、安田社長はクリエイティブのほうも強く、しっかりとクリエイティブを意識されている。ですので、やりやすいんですよね。懐が広く「好きにしていいよ」と言ってくれる。たとえば修正があった場合でも、「お客さんがこう感じるようにしてほしい」とか、具体的な内容はこちらにまかせてもらえて。

竹安 おもしろいチャレンジをさせてくれるので、僕も非常に楽しくやらせてもらっています。いまどきこんなにオリジナルを作る会社はあまりないですし、角川ゲームスは貴重な会社だなと思います。

箕星 「アドベンチャーを作るんだ」と『√Letter ルートレター』を作ってしまうわけですからね。ほかの人だったらリップサービスなんだけど、安田社長はガチなんですよね。『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』も、この時代にあまりないジャンルですが、シミュレーションRPGが好きな方が楽しめる内容になっています。“和”の加減も、キャッチーな“和”の感じになっていて、とっつきやすいと思いますね。

――ご自身のデザインの見どころがありましたらぜひ。

箕星 うーん、“外国人のなんちゃって和”!(笑)

竹安 (笑)。わかりますよ、言わんとすることは。

箕星 もともと、「和をベースにした感じだけど、着物ではなく、アニメっぽいデザイン」とリクエストをもらっていたので、自分で勝手に立てたコンセプトは90年代風のキャラクターデザイン。海外でも発売される、ということで“和”を大事にしつつも外国の人にもなじみがありそうななつかしのデザインをテーマにしています。外国人が考えた“和”という感じです。

竹安 ニンジャ、ウドンの考えかたですよね。

箕星 そうそう。本当にそういう目線で描いたので、和の加減に注目してください。

――竹安さんはいかがですか?

竹安 『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』は、編成の楽しさをわかってもらえたら、すごく深く楽しめると思います。いまどきのスマホのゲームとは感覚が違うんですよね。頭を使う、というと語弊があるかもしれませんが、プレイ中にコントローラーを置いて画面を見て考えるというのがあるわけですよ。そこに楽しさの深さがあるという。ボリュームも、やり込み要素を含めると100時間を超えますし、じっくり楽しんでもらえるといいかな、と。

――デザインでの見どころは?

竹安 うーん、正直に言うと『大神』以来なんです、ここまでこういうのができたというのが。だから、自分なりには『大神』からの発展形として描けたらいいな、というのがあったので、そういったところをよろこんでもらえるとうれしいですね。あ、カプコンさんと言えば、何時間でも語れるほど『囚われのパルマ』も大好きなので、何かごいっしょできればうれしいです(笑)。

箕星 え?

竹安 『囚われのパルマ』。

箕星 『めがみめぐり』は好きじゃない?(笑)

竹安 やりますやります!(笑)

――(笑)。おふたりは作る孤独の辛さがわかっているから距離が近いんでしょうね。

竹安 箕星さんとしゃべっていて思うのが、ひと言ふた言しゃべると、その先の気持ちも理解できる。「ああ、この人も踏み絵を踏んでいるんだ」という。

箕星 しんどさという踏み絵?

竹安 しんどさ。でも、僕ら世代の人たちってみんなそんな感じじゃないのかな?

箕星 僕ら世代ってバグチェックとか、鬼だったじゃないですか。

竹安 鬼でしたね。

箕星 いまの時代はダメだけど、当時は会社に泊まり込むのが当たり前でしたからね。みなさん、体には気を付けてください。ストレスは恐ろしいですから。

竹安 怖いですよね。しっかり表立ってプロでやられている方でも、みんなご苦労されていますよね。

箕星 やっぱりね、あの、白鳥といっしょでなんか華やかに見えるけど……。

竹安 水の中のもがきは……。

箕星 すごいと思いますよ。つらいことが多いですからね。

竹安 だから僕ね、プロとしての条件でひとつ必要だと思ったのが、どんな感情でも絵が描けるっていうこと。実体験なんですけど、大事な絵を描かなきゃいけないときほど、別のことでたいへんなことが起こるんですよ。でも、それでも描けるのがプロなんだろうなと思います。役者がよく言うじゃないですか、「親が死んでも笑顔の演技をする」とか。自分の感情と作品は、別で動けないと絶対に無理なんですよ。快適な環境でものを作れるってことが人生の中でないんですよね。

――『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』でもたいへんなことがあったのですか?

竹安 『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』で辛かったのは、ほかの仕事とかぶっていたことですね。ここでいう辛かったというのは、作業時間的な話ではなく、気持ちの切り換えといいますか。「新しいものを作ってください」というお願いだったので、発明が必要だったんです。ですので、“売れ線”とか“決め線”ではなくて、“新しい線”を作っていかなければならない。そういうときって、心を裸にしないとできないんですよね。でも、仕事がいっぱいあると、たとえばホラーをやりながらコメディをやれって言われても切り換えられないじゃないですか。そこがすごくしんどかったですね。個展の準備もあり、いろいろなことをやらければならない時期だったので。

――個展でのお客様の声で助けられたり。

竹安 それはあります。個展をやると、お客様の直の声が聞けるのでいいですね。

箕星 でも、ファンの人の声って、“好き”が入っているじゃないですか。好きだから来ているわけで。僕は自分の評判は見ないんです。見ると自分を見失っちゃうから。

竹安 なるほど。でも楽しいですよ。あれ、箕星さんは個展はやられていないんですか?

箕星 個展するような絵柄じゃないじゃないですか(笑)。

竹安 いやいやいや! “ギャラリーエルシャダイ”でやりませんか?

箕星 やってくれますか?

竹安 この取材が終わったらまじめに話しましょう(笑)。

(2017年4月 ギャラリーエルシャダイにて)

最終更新:5/19(金) 15:02

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