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輪菊生産技術「若手に託す」 ベテラン農家 指導に熱

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS 5/19(金) 17:30配信

 後継者不足や高齢化が進む農業の技術を地域で継承しようと、JAとぴあ浜松は輪菊(りんぎく)の若手生産者が地元のベテラン農家に「弟子入り」し、生産技術の指導を受ける取り組みを始めた。輪菊は水の与え方や温度調整など繊細な作業が求められ、わずかな出来具合の違いが農家の収入に直結する。匠(たくみ)の技を地域で習得し、所得向上とブランド力の強化につなげる。

 浜松市西区のビニールハウスで11日、地元ベテラン農家の藤野礼史さん(64)の声が響いた。「(成長速度を調整する)ホルモン剤はムラが出ない高さからかけないと」「中途半端な水のかけ方はダメだ」―。教えを受けるのは、このハウスで輪菊を育てる宮本静真さん(35)。農家になってから10年だが、「礼史さんのやり方は菊の反応が全く違う。できるだけ技術を盗みたい」と意欲的だ。

 同JAは昨年、「でっち奉公」と銘打ち次世代継承事業をスタートさせた。宮本さんは7~10月の4カ月間、同じ地区で輪菊を生産する中嶋裕生さん(33)、松尾直哉さん(33)とともに藤野さんの元へ毎日通い、そこで習得したノウハウを自らのハウスで実践。ことし5月からは藤野さんが逆に若手のハウスを巡回し、出来栄えを確認しながら指導を続けている。

 藤野さんは菊の生産歴46年。急激な気象変化への対策も独自に研究するなど腕を磨き、地域屈指の生産技術を持つ。しかし後継者はなく、「培った技術を残すことで地域に恩返ししたい」と指導を引き受けた。時に厳しい口調も交えながら、農業の基本や心構えを伝えている。

 輪菊は、微妙な温度や水分の差が品質を左右する。開花を盆や彼岸の前に合わせられるかで、売値が5割変わることもある。「究極の生産には究極の管理が必要」という藤野さん。「毎日菊の顔を見て丁寧に育てれば安定経営は十分見えてくる」と、磨き続けた熟練の技を若手に託す。



 <メモ>輪菊 「施設菊」とも呼ばれ、露地ではなくハウスで栽培される。周年栽培が可能で、盆や春秋の彼岸、年末などに需要が伸びる。「作り上げる品目」と言われるほど生育環境の整備が品質や生産効率に影響し、農家の高い技術が求められる。JAとぴあ浜松では年間出荷額が約10億円で、花卉(かき)の品目別ではトップの販売高という。

静岡新聞社

最終更新:5/19(金) 17:51

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS