ここから本文です

ドコモが支援する陸前高田の「北限のゆず」を見てきた

Impress Watch 5/19(金) 13:14配信

 フード宅配を利用すれば、その料金の一部が東日本大震災の被災地へと届けられる――そんな取り組みが実施されていることをご存知だろうか。

【この記事に関する別の画像を見る】

 それは、NTTドコモが2017年3月10日~3月20日、「出前で復興支援!全品20%キャンペーン」として、フード宅配サービス「dデリバリー」で実施されたもの。同様のキャンペーンは毎年行われており、今年は「ナポリの窯」「ドミノ・ピザ」「ストロベリーコーンズ」の3つのチェーンが協力した。

 通常、dデリバリーでの売上の一部は、プラットフォーム利用料としてNTTドコモの売上となる。今回は、そのドコモが得る売上の一部、59万3798円が、陸前高田を中心に活動しているNPO団体「北限のゆず研究会」に寄付された。

 企業による社会貢献活動、いわゆるCSRの一環として行われている。ドコモ社内にはCSR専門の部門があり、「dデリバリー」担当部門が主体となってCSR部門と連携しながら実現させた。

■陸前高田になぜか自生する「北限のゆず」

 今回、寄付を受けた「北限のゆず研究会」は、陸前高田を中心に活動しているNPO団体で、日本において最も北で育成される「ゆず(柚)」の商用化を目指している。

 ゆずは柑橘類としては耐寒性が強いが、東北以北ではあまり自生せず、商業的にゆずが栽培されているのは、陸前高田よりも南、宮城県岩田町が最北とされている。

 商用化はされていないが、陸前高田近辺では200年以上前から農家などの敷地にゆずが生えていて、各家庭で自家消費されていた。この背景には、陸前高田は年間の日照時間が長いことがあるという。そのおかげでゆずが自生できるとされる。

 ただし、ゆずを、陸前高田に誰がいつ持ちこんだか、といった由来についてはわからない。昔から当たり前のようにゆずが生えていたため、地域の住民もそれが寒冷な地域では珍しく、「北限」とも表現できるものだとも認識していなかったという。

 一方、岩手県北部の酒蔵「南部美人」では、果実酒に使う地場産のゆずを探していた。日本酒では酒蔵と原料の産地が別々であることは珍しくないが、海外の酒、たとえばワインであれば、ブドウと酒蔵は同じ地域にあることが多い。南部美人は海外進出をする中で、海外でも人気の高い「ゆず酒」を作るための地場産のゆずを探していたという。

 陸前高田のゆずは、岩手県内でもあまり知られていなかったが、たまたま岩手県の職員にそれを知る人がいた。南部美人が県に相談を持ち込んだ際、その職員から陸前高田のゆずが紹介されたことで、試験的に陸前高田のゆずを使い始めた。そうした商用化を模索するために設立されたのが、北限のゆず研究会というわけだ。そんな同研究会をNTTドコモが支援するようになったきっかけも、実は南部美人の紹介によるもの。もともとNTTドコモと南部美人の間で付き合いがあったのだという。

■ゆずの新たな産業化を目指す北限のゆず研究会

 本来、商用目的で栽培されていたわけではない陸前高田のゆずは、陸前高田市と隣接する大船渡市に、「家の裏庭に1~2本が自生している」というような形で点在しており、収穫しやすくなるような剪定もされていない。

 2016年は、61戸でゆずが収穫され、合計で2713kgにもなった。ゆずの特性もあって収量は毎年大きく変動し、2015年は121戸で9451kgも収穫されている。これらの売上はゆずの木の所有者に還元され、人によっては数万円の売上になる。

 収穫は北限のゆず研究会が中心となり、ボランティアの手を借りながら各家を巡っていく。しかし、先述したように、街の各所にゆずの木は点在し、剪定もされていないこともあって、収穫する手間がかかる。現在では、果樹園のような形式になるよう、新たな植樹も進められている。

 北限のゆず研究会では、陸前高田市と大船渡市の241戸の敷地に378本のゆずの木を確認しているが、これに加え、すでに1000本以上、新たに植樹された。

 現在のところ収穫されたゆずは、果汁や皮などが南部美人のゆず酒やベアレン醸造所のビール「岩手ゆずヴィット」、菓子、ゆず塩、ハンドクリームなどの商品に利用されている。ゆず自体の生産量が少ないことから、加工製品も全国展開するようなものではないが、北限のゆず研究会ではゆずの生産量・出荷量を増やすとともに、用途の開発を進め、「北限のゆず」というブランドで、新たな地場産業として成り立つことを目指している。

■連携するNTTドコモと復興支援とICT事業

 NTTドコモには「東北復興新生支援室」という部門があり、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の復興を支援している。北限のゆず研究会には、dデリバリーからの寄付に加えて、東北復興新生支援室がゆず収穫のボランティアなどで協力している。

 東北復興新生支援室に所属する担当者は、法人営業部の“ICT街づくり担当”と兼務する。

 兼務するだけに、東北の復興支援とICTの法人営業は相性が良い。陸前高田市は、東日本大震災では津波によって平野部が甚大な被害を受け、いま街ごと作り直している最中だ。そうした新しい街を作るにあたり、たとえばドコモ・バイクシェアの自転車シェアリングプラットフォームのような、ICTを使った都市インフラを導入することが考えられる。農業分野でも、ICTを使った支援システムを使う、といったことも考えられる。

 NTTドコモからすると、当初は復興支援や実証実験という形式でICTシステムをひとまず使ってもらい、のちのち本格的に商用導入に繋がることも期待できそう。CSRとしての観点だけでなく、企業活動としても、いわゆるサステナビリティを意識し、継続的に被災地と関わりを持てる取り組みと言えそうだ。

ケータイ Watch,白根 雅彦

最終更新:5/19(金) 19:37

Impress Watch