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イラン、対米融和か緊張か 世界注視 きょう大統領選

産経新聞 5/19(金) 7:55配信

 ■経済、規制緩和 どう評価

 イランで19日、大統領選が行われる。2015年に欧米など6カ国と核合意を結んだ現職の穏健派、ロウハニ師と、保守強硬派のライシ前検事総長の一騎打ちになるとの見方が強まっている。対米融和路線の継続か、それとも再び米国との間で緊張が高まるのか。イスラム教シーア派大国イランの動向は国際社会に大きな影響を与えるだけに、世界が注目している。(テヘラン 佐藤貴生)

 首都テヘランでは17日夜も、渋滞中の車列に大統領選の候補者のビラを投げ込む若者の姿がみられ、最後まで活発な選挙運動が展開された。

 市街では大統領選の候補者の横断幕に加え、1979年のイラン革命を主導した初代最高指導者ホメイニ師と、後を継いだ2代目のハメネイ師の2人をあしらった肖像画やモニュメントが多くみられる。イランでは、大統領は最高指導者の下で行政をつかさどるポストと位置づけられる。

 ライシ師を支持する大学生の男性(24)は、「ロウハニ師はすべての面で西側に追従し、イランの潜在力を忘れている。石油を輸出するだけでなく、製品を作って輸出すべきだ」と主張した。

 一方、テヘラン大で生物化学を学ぶ女子学生(22)は「ロウハニ師は社会を変えた。核合意のおかげで実験機材などが海外から入ってくるようになった。ヘジャブ(頭髪を覆うスカーフ)着用の規制は緩和されたし、これまでは(ワンピースの)衣類は膝下までの長さと決められてきたけど、今は膝より上でも注意されない」と、自分の足を指さした。

 ロウハニ政権時代に進んだ社会の規制緩和の是非も大統領選の争点の一つだ。女性の多くがロウハニ政権の方針に好感を抱いているとの印象を受けた。

 ■関係一変

 イラン革命により西側との関係は一変した。革命前のパーレビ王制期、イランは北方に位置するソ連の共産主義の影響拡大に対する防波堤の役割を担ってきた。しかし革命で王制を崩壊に追い込むと、一転して「イスラム革命の輸出」を唱えたため、欧米からイスラム原理主義の拠点として敵視されてきた。

 テヘラン市街には、「DOWN WITH THE USA」(米国を打倒せよ)と壁一面に大きく書かれ、“観光名所”となっている高層ビルがある。また、79年に在テヘラン米国大使館で起きた人質事件の跡地は現在、事件に関する品々を展示する博物館となっており、対米感情が悪化した往時の国内の様子を今に伝えている。

 ■石油依存

 選挙戦では核合意後の経済情勢をどう評価するかが大きな争点となってきた。

 欧米メディアによると、合意を受けて国内総生産(GDP)成長率は6~7%に達したが、大半は石油輸出に頼っており、製造業や建設業などは伸び悩んでいる。失業率は約12%だが若年層に絞ればさらに深刻で、結婚の障害として頭を痛める男性も少なくない。

 団体職員の男性(55)は「インフレのため、給料だけで暮らすのは大変だ」と話す。他方で、「ロウハニ師の登場でイランのイメージがソフトになった。海外からの観光客も増えた」(外貨両替店の男性)との声も聞かれた。

 選挙戦の終盤には、改革派の代表格であるハタミ元大統領がロウハニ師を支持するビデオをネット上に公開した。テヘランの政治評論家によると、閲覧回数は公開後の24時間で200万回に達したという。投票行動にどう影響するかも注目点の一つだ。

最終更新:5/19(金) 9:37

産経新聞