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焦点:米政治混乱でボラティリティ急上昇、リスク許容度低下も

ロイター 5/19(金) 9:48配信

[ロンドン 18日 ロイター] - 米国の政治的な混乱で世界の金融市場に動揺が広がり、ボラティリティが急上昇している。これに伴って投資家はリスク許容度を見直さざるを得なくなってきた。

トランプ大統領が連邦捜査局(FBI)のコミー前長官に、フリン前大統領補佐官とロシアの関係についての捜査を中止するよう求めたと報じられたことをきっかけに、17日の米国株は昨年9月以来の大幅な下げを記録。他の主要国も株安に見舞われた。

株価は数カ月にわたって高値更新を続け、ボラティリティは幅広い資産クラスで歴史的低水準で推移していただけに、流れが逆転する可能性はずっと意識されてきた。今それが現実化したわけだが、問題はこれが一時的な現象で終わるか、あるいは長期化して投資家がリスク量を減らし、より守備的なポジションを構築する必要があるかどうかだ。

そして次のシナリオのうちの1つもしくはいくつかの組み合わせが起きれば、ボラティリティの反転上昇が定着する公算は大きい。具体的に挙げると(1)トランプ氏に対する弾劾手続きの進行(2)トランプ氏が掲げる成長てこ入れ策の立法化の後ずれ(3)米経済の縮小局面入り──となる。

これらは相互に影響し合うし、どの程度の形で実現するかも分からない。それでも株高・ドル高・債券利回り上昇という特徴を持つ「トランプ・トレード」は消滅したように見える。

ドルと米2─10年国債利回り、および10年物価連動債利回りはいずれも昨年11月の大統領選前の水準に戻り、投資家は比較的平穏だった市場に訪れるであろう嵐に備えている。

4800億ドルの資産を運用するアバディーン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・アセイ氏は「われわれはボラティリティを認識しなければならない。今はリスク量を適切に保てるかどうかが問題で、ともかくもそれを実行しつつある。われわれのポートフォリオは万全の態勢だ」と強調した。

アセイ氏は既にこの数週間で安全な債券資産と円のショートを圧縮したと説明した上で「さらに巻き戻すべきかどうか、というのがこの先の話題になる」と話す。

<米経済への不安>

投資家の不安心理の度合いを示す米ボラティリティ・インデックス(VIX)は17日、トランプ政権とロシアの関係疑惑を背景に過去7番目の上昇率となった。

こうした中でBNPパリバ・インベストメント・パートナーズ(運用資産5800億ユーロ)のストラテジスト兼ポートフォリオマネジャー、Joost van Leenders氏は、米国の政治リスクについて日々社内で議論していると打ち明けた。

同氏は「われわれは最初から慎重なポジションを組んでいたので、現段階で軌道修正の必要はない。だが今後のポジション修正は否定しない」と述べた。

一部の投資家は、ぐずぐずと様子見せずに米国株の保有を近く解消する方針だ。これは極めて少数派であるとはいえ、米国株が割高だという声は多い。米経済は既に過去3番目に長い拡大局面にあり、最近の「エコノミック・サプライズ指数」の急低下は景気が息切れしつつあることを示唆している。

米国と欧州のサプライズ指数の格差は過去2年で最大になり、米企業の増益率は2桁であるものの、ユーロ圏には及ばない。今年は欧州全域を覆うとみられていた政治的混乱も、米国に集中するありさまだ。

アムンディ(運用資産1兆2700億ユーロ)のマクロ経済調査責任者ディディエ・ボロフスキ氏は「景気後退は視野に入っていない。しかし米経済は来年減速する可能性がある」とみている。

株が値下がりするとともに、トランプ氏の大統領選勝利後は敬遠されていた債券などの安全資産に対する需要が復活している。

米2─10国債利回りスプレッドは大統領選以降で最小となり、投資家が米経済は金利上昇を乗り切れないのではないかと予想していることが分かる。

市場が織り込む米連邦準備理事会(FRB)の6月利上げ確率も先週の90%超から足元は60%弱まで切り下がった。

(Jamie McGeever記者)

最終更新:5/20(土) 9:38

ロイター