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【インタビュー】日常の心の揺れ丁寧に まずは短編10作書きたい 第60回千葉文学賞受賞の凪野笙子さん(我孫子市)

千葉日報オンライン 5/19(金) 11:13配信

 小説「ホタル」で第60回千葉文学賞を受賞した我孫子市の無職、凪野笙子さん(67)に執筆動機や作品に込めた思い、今後の抱負など聞いた。

 -受賞おめでとうございます。感想を聞かせてください。

 凪野 最初はうれしくて舞い上がりました。その後は晴れがましい気持ちと、「これからしっかり書いていかなければ」という思いが交錯しました。

 -文章を書き始めたきっかけは。

 3人の子どもが順々に巣立っていき、10年ぐらい前に「空の巣症候群」という心の中が空っぽになるような、何もする気が起きない状態に陥ってしまった。元々文章を書くことは好きだったので、子どもたちとの思い出などを短文に書いてむなしさを埋めていたんです。すると気持ちにゆとりが生まれ、心に明かりが灯(とも)った。そうした日々の中で、いつかホタルのように優しくてほのかな明かりを放つような小説を書きたいと思うようになりました。3、4年ぐらい前から小説を書き始めました。

 -受賞作「ホタル」は、裁縫手伝いの求人チラシを見て近所のマンションに通うようになった主婦紘子の心情を描写。雇い主である高齢の独居女性、藤野さんとの淡い交流が物語の軸。執筆動機は。

 物語の実際の舞台ではないですが、以前8年間ほど住んでいた都内のある場所がヒントになっています。作品に出てくるスーパーや公園、瀟洒(しょうしゃ)なマンションは実在していたもの。にぎやかな街で、毎日いろいろな人と行き交う。その中で気になる人がいた。それが藤野さんのモデルになった人。いつもすてきな格好をしていて、立ち居振る舞いも優雅で。知り合いではないのですが、憧れていました。人づてにすごい洋裁の腕前を持っていて、今は一人暮らしだと聞きました。そのイメージを膨らませて、主人公の紘子とどう関係させていくか考えていきました。

 -藤野さんを知った紘子の心のざわめきが丁寧に描かれている。

 平凡な毎日を送っている紘子の心の中にある熱い思いや願い、祈りのようなものを書き込みたかった。柔らかい、ほのかな光は誰もが心に秘めていると思う。それと自分に自信が持てない紘子がこれから前向きにたくましくなっていく姿も表現したかった。

 -今後の抱負を。

 短編小説を10編ほど書いて、それを1冊にまとめて出版するのが今の夢。内容としては、決して華やかではない平凡な日常の営みの中にある、泣いたり、笑ったり、寂しがったり、喜んだりといった気持ちの揺れや情感を丁寧に描いていきたいですね。

 (聞き手は文化部・日暮耕一)

 ※受賞作「ホタル」は22日付の千葉日報に全文を掲載する。

最終更新:5/19(金) 11:13

千葉日報オンライン