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型破り僧侶「仏教身近に感じて」 住職はパフォーマー

5/19(金) 8:05配信

福井新聞ONLINE

 ギターを抱えて法話する「唄(うた)うお坊さん」や、色鮮やかなCGを投影した本堂で行う「テクノ法要」―。福井県内の若手僧侶が始めた型破りにも見える挑戦が、注目を集めている。既成概念にとらわれない“パフォーマー僧侶”たちに共通するのは「仏教を身近に感じてもらいたい」という思いと、若い世代の仏教離れに対する強い危機感だ。

 「いつか訪れる死ぬ瞬間にありがとうと旅立ちたい♪」

 大野市錦町の善導寺の大門哲爾副住職(36)はいつものようにギターをかき鳴らし、自作のテーマ曲から法話会をスタートさせた。歌と短い法話を交互に1時間。市内の高齢者サロンに集まったお年寄りたちは歌に手拍子をし、うなずきながら法話を聞いた。市内の男性(81)は「物珍しさで参加したが、聞いてみると堅苦しくなくていい」と終始笑顔だった。

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 「お寺の暗いイメージが嫌だった」という大門さんは、歴史ある寺の跡取りとして期待されながらも関西の大学でバンド活動に没頭。プロになる夢をあきらめて仏教系大学に入り直し、経典を学んだところ「仏教は明るく生きるための教えと知った。目からうろこだった」(大門さん)。

 パフォーマンスの始まりは2年前の法話会。経歴を知る檀家(だんか)のリクエストで1曲歌った。「音楽は趣味」とけじめをつけて大野に戻っただけに、法話でギターを弾くことに抵抗があったが、喜ぶ人を見ているうちにこだわりは消えた。県内外から法話の依頼が入るようになり、親子や現役世代に向けたオリジナル曲も増やした。

 「お葬式で初めて会うお坊さんから話を聞いても、悲しみと忙しさで何も残らない。仏の教えに日常から触れていないと、悲痛に襲われる非日常で役立たない。今のお寺は普段の生活に対するアプローチが足りない」。大門さんにとって「唄うお坊さん」は、日常の“扉”をこじ開けるための挑戦だという。

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 福井市東郷二ケ町の照恩寺の朝倉行宣住職(49)は昨年5月、暗くした本堂内にプロジェクションマッピングで極楽浄土を表現し、テクノ音楽に乗せてお経を唱える独自の法要を始めた。マスコミの注目を集める一方、批判的な意見も耳に入った。「仏教が現代まで伝わっているのは、それぞれの時代の名もなき僧侶たちが人を引きつける努力をしてきたから。その先人の思いを継承するために新しいパフォーマンスが生まれてもいいはず」と信念を語る。

 今年5月の法要に向けて機材を充実させるための寄付は、インターネットで資金を募るクラウドファンディングを活用。目標を上回る約45万円が集まった。そのうち約8割が、20~40代から寄せられた。いくつかの寄付には「ずっと仏教に興味があった」「お寺に足を運んでみたい」とのメッセージが添えられていた。

 朝倉さんは「若い世代にも生きるヒントを探している人は大勢いる。仏教は古くさいものと思い込んでいるのは今のお寺側かもしれない」と自戒を込めて話す。

福井新聞社