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いばらの道続く日本郵政、赤字転落は東芝と同じ構図

5/19(金) 14:50配信

日刊工業新聞電子版

豪トール買収資金はゆうちょ銀

 日本郵政が5月15日に発表した2017年3月期連結決算は、子会社の日本郵便が15年5月に約6200億円で買収した豪物流大手・トール・ホールディングスの4003億円の一括減損処理により、当期損益で289億円の赤字に転落した。これは、民営化初の赤字転落どころではなく、明治時代から延々と営んできた郵政事業初の経営危機である。

 当初、日本郵政は今決算で約3200億円の最終利益を見込んでいた。買収当時、日本郵政社長の西室泰三氏は15年11月の上場を控え、トールの物流網を活用して子会社の日本郵便の収益性改善を加速させ、グループ企業価値の増大を図る、といった成長ストーリーを描いていた。

 しかし、主力の鉄鉱石・石炭物流事業が中国経済の失速でトールの業績が低迷。「のれん」代の償却負担が100%子会社の日本郵便に毎年200億円以上のしかかる危機的事態に陥っていたものの、国際物流のノウハウが無い日本郵便からは社外取締役を含め4人しか役員を派遣していなかった。

 現在トールは数千人規模の人員削減を進めているが、長門正貢日本郵政社長は「買収のタイミングが悪かったかもしれない」と説明。自身と横山邦夫日本郵便社長の6カ月間・20%の報酬カットのほか、当時の日本郵便社長としてM&Aを進めた高橋亨会長の同30%カットと代表権の剥奪を決めた。西室氏の責任については「高値づかみの入り口の責任と、買った後のマネジメントの責任とがある」としたものの、西室氏個人の責任問題には触れなかった。

 西室氏は元東芝社長・会長で東京証券取引社社長・会長も務めた大物財界人。自身が委員長を歴任した政府の郵政民営化委員会は「構造的な改革やコーポレートガバナンスの強化が必要だ」と指摘していたが、西室氏の古巣でもある東芝が直面した米原子力発電子会社ウエスチングハウスののれん代償却問題と同じ構図だ。

 西室氏は16年1月28日の定例会見で、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の追加株売却について「できるだけ早くやりたい」とし、2月にも具体的な売却計画を示す考えを示した。

 ただ、15年11月に新規株式公開(IPO)した日本郵政は16年5月1日までロックアップ(株式公開前の会社の株主が株式公開後の一定期間、市場で持株を売却することができないよう契約を交わす制度)がかけられていた。東京証券取引所社長・会長を経験した西室氏の仰天発言は波紋を呼んだが、それ以来、公の場には姿を現していない。

 そもそも、トール買収の資金はゆうちょ銀から出ている。上場前の14年、日本郵政が所有するゆうちょ銀の株式をゆうちょ銀に買い上げさせたのだ。

 グループ全体の自己資本は13兆円を超えるが、ゆうちょ銀の自己資本は11兆5000億円と大部分を占める。そこで、余剰資本のうち1兆3000億円を自社株買いで持ち株会社である日本郵政に「上納」させ、郵政省・郵政事業庁、日本郵政公社時代からの年金債務約7000億円を一括処理した。さらに、余った6000億円をトール買収につぎ込んだ。

 決算会見で後任の長門社長は「負の遺産を一掃する」としたが、減損の一括償却で日本郵便の赤字額は3852億円に達した。日本郵便の経営は郵便物の減少や人件費高など逆風が続くが、長門社長は6月の切手とはがきを値上げで約300億円の増益を見込み、18年3月期は130億円の黒字転換を目指すとした。

 政府は日本郵政株の第2次売却に向け、今年3月に主幹事証券会社を決め、年内の株放出を急ぐ考えだ。民営化後初の最終赤字となったが、18年3月期の通期純利益は中期経営計画の約4000億円達成を予想している。

 ただ、将来的な成長は見込めず、打開策として野村不動産ホールディングス(HD)に対するM&A報道が紙面を賑わせている。

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