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アン・ハサウェイの「型破り」な怪獣映画は「ハイ・コンセプト映画」の秀作

5/19(金) 21:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

アン・ハサウェイ主演の新作『Colossal(邦題未定)』は、ともすれば駄作になりかねないジャンルの映画 ー いわゆる「ハイ・コンセプト映画」だ。

アン・ハサウェイの写真

ハイ・コンセプト映画の特徴は、内容を数語でまとめることができるほどわかりやすいこと。実際この映画の内容も「アルコール依存症の女性が立ち直る」と要約できる。ハサウェイが演じる女性は、仕事でも男でも失敗して酒に溺れてしまい、失意に暮れてニューヨーク郊外の故郷に戻ってくる。そこでふとしたことから韓国ソウルの街を恐怖に陥れている怪獣と自分自身とが、奇妙にシンクロしていることを発見する。自分が体を動かすと、まるで遠隔操作のように怪獣が同じ動きをするという設定だ。

ハイ・コンセプト映画は長年人気を集めてきた。人気の理由は「もしも〇〇が××だったら」というSFやファンタジーのような思いつきを、分かりやすい上に、いくらかためにもなるストーリーに仕立てていることにある。ちょうど、ロッド・サーリングが案内役を務めたSFテレビドラマシリーズ『トワイライト・ゾーン』のように。

1980年代後半から90年代前半にかけての傑作コメディのうちいくつかは、思いつきから生まれたハイ・コンセプト映画だった。例えば、主人公の少年が早く大人になりたいと願ったばかりに朝起きたら身体だけ大人になってしまう『ビッグ』、超常現象のせいで同じ1日を延々と繰り返す羽目になる気象予報士の物語『恋はデジャ・ブ』など。

このジャンルは成熟するにつれて野心的になっていき、やがて大人気のハリウッド映画を生み出した。「もしも現代に恐竜が生きていたら?」という思いつきからストーリーを展開させた『ジュラシック・パーク』や、「もしもおもちゃが言葉を話せたら?」という子どもの夢を具現化した『トイ・ストーリー』などだ。

1990年代後半から2000年代前半まで、このジャンルにはクリエイティブな傑作もいくつか登場したが、同時にさえない駄作も生まれ始めた。

「もしもFBIエージェントが犯罪者と顔を交換したら?」というアイデアから『フェイス/オフ』が製作されたのは1997年、「覆面ヒーロー一家の生活はどんなものだろう?」という空想から『Mr. インクレディブル』が生まれたのは2004年。

同時期にはさらに、主人公の男が短期記憶障害の女性に恋をする『50回目のファースト・キス』や、タイトル通り大量の蛇が飛行機に乗っているパニック映画『スネーク・フライト』も世に送り出された。

今日に至っては、ハイ・コンセプト映画のほとんどが、くだらないコメディになってしまっている。過去10年を振り返ると、肉体派俳優ドウェイン・ジョンソンが「歯の妖精」を演じる『妖精ファイター』に始まり、アダム・サンドラ―が就寝前に子どもに語った作り話がそのまま現実になる『ベッドタイム・ストーリー』、これまたアダム・サンドラーが一人二役で男女の双子を演じる『ジャックとジル』に至るまで、我々はつまらないものを見せられてきた。

そこに登場したのが『Colossal』だ。

確かに本作は決して完璧とは言えない。特に中盤はバランスを欠いており、不条理極まるダークコメディと、日常生活が脅かされるスリラーの間を行ったり来たりしている。

ただ全体的には非常にいい。

アン・ハサウェイがまたしてもホームラン級の演技を披露しているだけでなく、ジェイソン・サダイキスも演技派俳優としての本領を驚くほど生き生きと発揮している。エンディングもまた、ストーリー全体をうまくまとめながら観客を楽しませるものになっている。

さらに重要な点は、本作がハイ・コンセプト映画のさらなる可能性を提示してみせたことだ。若い女性が地球の反対側にいる怪獣とシンクロし、遠隔操作できるようになってしまうという、一見するとばかばかしい設定。憂さ晴らしにはもってこいだ。「おいおい、人がたくさん踏みつけられるよ」とつぶやきながらも、ダークな笑いがところどころでこみあげてくる。

脚本は、監督も兼ねるナチョ・ビガロンド。この作品の中でビガロンドは、アルコール依存症や人生における間違った選択といった深刻な問題を掘り下げている。そんな映画が凡作であることを免れているのは、ソウルの街を破壊する怪獣が登場するからこそなのだ。出てこなかったとしたら、よくある平凡な映画になりかねなかっただろう。

本作がハイ・コンセプト映画の新時代を告げるものであることを願ってやまない。このジャンルがかつての栄光を取り戻すときが、確かに来ている。

(敬称略)

source:NEON、Disney / Pixar、Sony Pictures

[原題:Anne Hathaway just showed up everyone by making a great, weird monster movie no one saw coming]

(翻訳:日山加奈子)

最終更新:5/22(月) 18:42
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