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<退位法案>安定継承議論本格化へ 眞子さま婚約受け

毎日新聞 5/20(土) 6:40配信

 政府が天皇陛下の退位を実現する特例法案を国会に提出し、安定的な皇位継承を巡る付帯決議が今後の焦点となる。秋篠宮家の長女眞子さま(25)が婚約されることを受けて、民進党は「女性宮家創設」を書き込むよう主張するが、安倍政権は慎重だ。【野口武則、樋口淳也】

 民進党は19日、国会内で皇位検討委員会を開き、付帯決議に「女性宮家創設」の文言を入れたうえで、実現時期を明記するよう政府・自民党に求めることを確認した。馬淵澄夫事務局長は眞子さまが婚約することを受けて、「慶事をもってより現実的な(女性)宮家創設も含めた検討を盛り込まなければならない」と強調した。

 天皇陛下の退位が実現すれば、新天皇より若い皇位継承資格者は弟の秋篠宮さま(51)とその長男悠仁さま(10)の2人だけとなる。さらに眞子さまら7人いる未婚の女性皇族のうち6人は成人している。現在の皇室典範の規定では、一般男性と結婚した女性皇族は皇籍を離れる。眞子さまが婚約することは、皇族減少の課題がいよいよ現実味を帯びることを意味する。

 与野党が合意した3月の国会見解は「女性宮家の創設等については、政府において特例法の施行後速やかに検討」と記し、結論時期は「明示は困難」と「1年をめど」の両論を併記している。19日の民進党皇位検討委では、国会見解の「施行後速やかに検討」との表現について、検討時期をさらに早めるべきだとの意見が出た。施行日は陛下が退位する日のため、政府が退位を想定する2018年末まで検討を始めない可能性があると考えたためだ。馬淵氏は「すぐにでも議論を始めなければならない」と語った。

 一方で自民党の二階俊博幹事長は19日の記者会見で「このこと(眞子さまの婚約)をきっかけに議論するのでなく、切り離して考えるべきことだ」と話した。安倍晋三首相や党内保守派は皇位の男系継承にこだわりがある。女性宮家を創設すれば将来的に父方が天皇の血筋でない女系天皇につながる可能性があると警戒している。そのため、自民党は付帯決議に「女性宮家」の文言を入れるのに消極的で、「課題が多くて1、2年で結論が出るものではない」(政府関係者)と時期の明示にも否定的だ。官邸幹部は「安定継承は検討すべきだが、いろんな考え方がある。女性宮家は簡単ではない」と話す。

 ただし、このまま政府が安定継承の問題に対応できなければ世論の批判を受ける可能性もある。

 陛下は昨年8月のおことばで、被災地訪問など象徴としての公的行為の重要性に触れられた。しかし、このままでは公務の担い手が少なくなることが避けられない状況だ。秋篠宮さまは昨年11月、誕生日に合わせた記者会見で「今は女性の皇族が非常に多く、結婚すれば皇族ではなくなります。今の活動をそのまま今後も量を同じようにできるかというと難しい」と危機感を示していた。皇族数の減少を食い止めるのは緊急の課題で、それが安定的な皇位継承の大前提となる。

 女性宮家に前向きだったが自民党に配慮して静観していた公明党は、井上義久幹事長が19日の記者会見で「検討することはあっていい」と述べた。自民、民進両党の国対委員長は法案の審議入り前に付帯決議の内容で合意する必要があるとの認識で一致している。眞子さまが婚約することを背景に民進党は強気の姿勢を示しているため、審議入りがずれ込む可能性がある。

 ◇条文あいまいさ残る

 天皇陛下の退位を実現する特例法案の条文は、今の陛下に対象を限っている。先例化につながる具体的な表現は書かれていない。だが法案名称を「天皇陛下」ではなく「天皇」とするなど、先例の意味合いもにじむ。与野党合意を優先したため、あいまいさが残った。

 3月の国会見解は「退位は例外的措置」とする一方で、「将来の天皇退位の際の先例となり得る」とも明記していた。相反する内容だが、制度化につながる表現が盛り込まれたため民進党も合意した経緯がある。12日に自民党の部会で説明した内閣官房の担当者は「法律自体は今の陛下一代のものだが、このような法形式をとることで先例となる」と説明。法案同様、一代限りなのか先例なのか、どちらともとれるあいまいさが残る説明だが、国会でも同様の答弁になるとみられる。

 政府関係者は「厳格な政府答弁を求めたら、各党が都合よく読める玉虫色の法案にならない」と話している。19日に開かれた民進党皇位検討委員会では、「先例になり得ることを国会答弁で確認すべきだ」との意見が出た。民進党は今後の国会論戦を通じて将来の制度化につながるとの政府答弁を引き出す方針だ。

 3月までの与野党の事前協議では、一代限りか制度化かが大きな争点だった。安倍首相を支持する保守層には、明治以降の終身天皇制の原則を維持すべきだという意見が根強い。例外としての一代限りは保守派への配慮から譲れない線だった。一方、民進党は「天皇陛下は退位の制度化を望んでいる」として、将来の天皇にも適用できるようにすべきだと主張した。天皇の地位は「国民の総意に基づく」ため、衆参正副議長は全会一致を目指した。与野党双方が歩み寄るための折衷案は妥協の産物だが、政治の知恵でもあった。首相は本音では退位に慎重とみられるが、持論を封印した。

 あいまいさが残ったことへの批判もある。制度化を主張した自由党の小沢一郎共同代表は「全く矛盾したことを書いている」と、法案に反対する考えを示している。

 ◇退位特例法案・骨子

<法案名>

・天皇の退位等に関する皇室典範特例法

<法案の趣旨>

・天皇陛下が高齢で象徴としての公的活動を続けることが困難と深く案じている

・国民は陛下のお気持ちを理解、共感している

<皇室典範との関係>

・典範の付則に「特例法は、この法律と一体を成す」との規定を新設

<内容>

・天皇は法律の施行の日限り退位し、皇嗣が直ちに即位する

・施行日は公布から3年を超えない範囲で、皇室会議の意見を聴いて政令で定める

・退位した天皇は上皇、きさきは上皇后

・国民の祝日である天皇誕生日を12月23日から2月23日に改める

・秋篠宮さまの待遇は皇太子さまと同等に

 ◇野田政権がまとめた皇室制度に関する論点整理

(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持

   1-A案=配偶者や子に皇族の身分を付与

   1-B案=配偶者や子は一般国民のまま

(2)女性皇族が皇籍離脱後も、国家公務員として皇室活動を支援する

※男系男子による皇位継承を規定する皇室典範1条には触れない

※両案とも対象範囲は天皇の子や孫の内親王に限る

最終更新:5/20(土) 6:40

毎日新聞