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<震災体験>女子大生語り継ぐ 背中押した女子高生の語り部

毎日新聞 5/20(土) 11:52配信

 ◇祖母亡くした福島の須藤さん「それぞれの体験」ためらわない

 東日本大震災による土砂災害で祖母を亡くした福島県白河市出身の明星大4年、須藤成美さん(21)=東京都日野市=がこの春、市民向けのイベントで自らの被災体験を語った。「震災を忘れないで」と願いつつも、祖母の死を振り返ることにためらいがあった須藤さん。気持ちを軽くしてくれたのは年下の高校生の語り部たちだった。

 「大学に入る前、体験をほとんど話せませんでした。仲の良い人ほど話せない。気を使ってほしくなかった」。3月26日、日野市で開かれた福島支援イベント。約40人の市民を前に須藤さんは正直な思いを打ち明けた。

 6年前の3月11日。須藤さんは中学校の卒業式に臨んだ後、震災に遭った。祖母の平山智子さん(当時70歳)は13人が犠牲になった白河市内の土砂崩れに巻き込まれた。数日後、ひつぎに入る祖母に高校の合格通知を見せ、涙が出た。

 高校時代は震災の話題になると、祖母の死を思い出して胸が苦しくなった。大学では、福島の内陸出身と自己紹介すると「(沿岸部でなくて)良かったね」と言われ、何も言えなくなった。防災サークルに入ったが、「土砂崩れのことを話して」と頼まれると、負担を感じた。体験は分かってほしいし、防災の大切さも伝えたい。でも簡単には話せない--。ジレンマに悩み、サークルをやめた。

 昨年12月、足を運んだ都内の防災勉強会が転機になった。「私は震災で親友が亡くなりました。なぜ自分が生きているか分からなくなりました」。宮城県東松島市の高校3年、相沢朱音(あかね)さん(17)が語る姿に驚いた。

 その後、相沢さんらとそれぞれの3月11日を語り合うと気持ちは変わった。「東北の中でも体験は違うし、東京の子たちも帰宅困難などで大変な思いをした。誰でも体験を話せるわけではない。自分にできる範囲で語ろう」

 今、須藤さんは「事実を伝えることで年に1度でも福島に思いを寄せてもらえれば」と願う。小学校教員を目指し、4月からは震災の語り部をテーマにした卒論にも取り組む。「語り部に話を聞いて、語り継ぐために必要な学習支援を考えたい」。自分なりの震災への向き合い方が少しずつ見えてきた。【伊藤直孝】

最終更新:5/22(月) 11:51

毎日新聞