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パリで考えた「東京にないもの」 五輪開催の視点から

朝日新聞デジタル 5/20(土) 14:20配信

 右手に凱旋(がいせん)門、正面にエッフェル塔。地上9階のテラスからの眺めは、夕暮れの美しさも加わり、絶景だった。

 2024年五輪招致をめざすパリの計画を調べる国際オリンピック委員会(IOC)の視察初日の14日、報道陣向けのパーティーがシャンゼリゼ通り沿いの一等地で催された。「観光名所を含め、街全体が祝祭気分に包まれる」と広報担当は誇らしげだった。

 翌日は競技会場を見学した。自然と、20年東京大会と比べる自分がいた。

 主会場はサッカーの1998年W杯、2003年の世界陸上などの舞台だ。バスで移動するとき、競技場脇に練習用の陸上トラックが見えた。新国立競技場周辺に空き地はなく、練習用トラックは仮設で賄う東京とは事情が違う。

 視察の終着点はローランギャロス。28日に開幕するテニスの全仏オープン会場は、今すぐにでも五輪を開けるだろう。サッカー、ラグビークラブの本拠を含め、ここでは市民の日常生活の中に、スポーツの伝統が根づいている。

 パリは競技会場の8割が選手村から半径10キロ圏に収まる。コンパクト開催は、東京が当初描いていた青写真だ。

 好感を持ったのは、55ヘクタールと広大な敷地を誇るラ・ビレット公園で大会中、各種イベントを催す構想だ。「チケットがない人々も五輪の雰囲気を楽しめる」というスポーツ担当の副市長の言葉は、広域開催になった東京の課題に通じる。首都のどこを世界からの観光客が集う祝祭のハブに据えるのか、という視点だ。

 招致委員会のエスタンゲ共同会長はカヌーの金メダリストで、史上最年少の仏大統領に就任したマクロン氏と同じ39歳。今回の視察中、「招致に成功すれば、組織委会長に就任する」と発表した。若きリーダーが開催まで責任を引き受けるという約束だ。

 翻って東京の組織委員会を見渡すと、陸上ハンマー投げの金メダリスト、室伏広治・スポーツディレクター(42)が「若手」の部類に入る。

 さらなる若手の登用で思い浮かぶのはフェンシングの太田雄貴さん(31)だ。招致時に五輪の価値を広めることに心を砕いた。雄弁で、同じ種目出身の金メダリスト、バッハIOC会長と親交もある。

 IOCは若者の五輪離れに危機感を抱いている。将来のスポーツ界を担う世代の感覚、企画力を生かしたい。(編集委員・稲垣康介)

朝日新聞社

最終更新:5/20(土) 14:20

朝日新聞デジタル