ここから本文です

<バレー>初代表・藤井、感謝のトス 被災で失意に援助の光

毎日新聞 5/20(土) 12:09配信

 2020年東京五輪での復活を目指し、今月、始動したバレーボール男子日本代表に東レの正セッター・藤井直伸(25)が初めて選ばれた。宮城県石巻市出身の藤井は、11年3月の東日本大震災で実家が被災し、一時は競技断念を考えただけに「いろいろな人の支えでバレーを続けられている」と感謝を胸に代表定着を誓う。

 震災時は、強豪・順大の1年生で、広島市で合宿中だった。実家は海岸からわずか100メートルで、練習後、津波のニュース映像を見て我が目を疑った。家族の無事は確認できたが、急いで宮城へ向かうも地元にたどり着くには1週間かかった。実家の1階は浸水し、家族は避難所にいた。さらに沿岸部の水産加工会社に勤めていた父俊光さんが失職した。大学の授業料を工面できなくなり、両親と退学の相談をした。「バレーをやめて、働かないといけない」と諦めかけていた。

 運命が変わったのが、翌4月だった。大学の一室に被災者が集められ、理事長の友人が支援を申し出て、授業料が免除になることを知らされたという。藤井は突然の朗報に、最初は説明が頭に入らなかったほど。「奇跡的だった。突然、一筋の光がさした」と満面の笑みで振り返る。

 大学3年でレギュラーとなり、14年に東レに入社。183センチとバレーボール選手としては決して大きくはないが、トスのスピードを鍛え、難しい位置からでも速攻を使うトリッキーなトス回しを身につけた。16~17年シーズンのプレミアリーグでは、チームを優勝に導き、ベスト6に初めて選ばれた。年代別を含めて自身初の代表もつかみ取った。

 現在は父の仕事も見つかり、仮設住宅で暮らしていた両親らは今月上旬に石巻市内の別の場所の新居に入った。家族にとっての節目と、自身の初の代表活動が重なった藤井。「目標はあくまで東京五輪だが、今、結果を残さなければ先はない。自分らしく頑張りたい」と意気込んでいる。【小林悠太】

最終更新:5/20(土) 12:21

毎日新聞