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テロ準備罪 現行法の空白カバー

産経新聞 5/20(土) 7:55配信

 ■航空機乗っ取り防止強化 偽造旅券未発見でも対処

 テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の廃案を求める野党の主張は、19日の衆院法務委員会でも変わらず、議論は与野党でかみ合わないままだった。テロ等準備罪が新設されると、どのようなケースが処罰対象となるのか。政府が国会の議論などで示した具体例などから、同罪の適用対象を改めて整理する。

 野党は「一般人は捜査対象に百パーセントならないのか」と追及してきたが、適用対象はテロ組織や薬物密売組織などを想定した「組織的犯罪集団」と規定しており、「一般市民や一般企業は捜査対象にはならない」(法務省幹部)。

 ただ、他の犯罪と同様、一般人でもテロ等準備罪で刑事告発された場合はその限りではない。告訴・告発が捜査機関に持ち込まれ受理されると、一時的には被告発人として嫌疑の有無を確認するため捜査の対象になり得る。このため、野党は「捜査対象になるではないか」と主張している。

 これに対して検察幹部の一人は、「(告発を受けた捜査は)嫌疑を前提としないから実質的な捜査ではない」と指摘する。同じ「捜査」という用語ではあるが内容は全く別物だ。

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 重大犯罪を計画しただけでも適用されない。過去3度廃案になった共謀罪とは大きく異なり、具体的な計画が存在することに加え、重大犯罪を実行するための準備行為があった場合に限って適用できるからだ。

 では、どのようなケースが処罰対象になるのか。想定されているのは、例えば、テロ組織が電力のインフラを誤作動させ、まひさせることを計画し、コンピューターウイルスの開発に着手した場合や、テロ組織のメンバーが化学薬品によるテロを計画し、そのための薬品の原料の一部を入手した場合などだ。

 現行法でも殺人罪やハイジャック防止法などで、重大犯罪に対し実行前に取り締まることができる共謀罪、予備罪、準備罪の規定がある。このため、野党からは「現行法で対処できる」との声も上がった。

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 しかし、テロ等準備罪によって、現行法で対処できなかった空白部分をカバーできるようになるケースは少なくない。具体的には、テロ組織が複数の航空機をハイジャックし、高層ビルへの突入を計画する事例だ。現行法のハイジャック防止法に規定された予備罪では、メンバーの一人が航空券を予約しただけでは、客観的に相当な危険性があると認められず、適用できない可能性がある。

 公文書偽造罪には予備罪の規定がないため、これまでは組織犯罪集団の拠点を家宅捜索し、密入国を助けるためにパスポートを偽造していた疑いが濃厚でも、完成した偽造旅券が見つからなければ処罰できなかったが、テロ等準備罪の新設によって、こうした犯罪も水際で食い止める一助となる可能性もある。

最終更新:5/20(土) 8:18

産経新聞