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テロ準備罪 極論で不安あおる野党 キノコ狩りダメ? 一般人対象なの?

産経新聞 5/20(土) 7:55配信

 廃案を求める民進、共産両党の議員が「強行採決だ」などと抵抗し、騒然となった19日の衆院法務委員会。共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の議論は紛糾した。これまでの国会審議を振り返っても、野党は「言葉遊び」(検察幹部)ともいえる極論を展開した。本当に法案の問題点を突く指摘だったのかといえば疑わしい。(大竹直樹)

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 ▼あきれる法務省幹部

 「キノコとか竹とか山の幸を無許可で採ってもテロの資金源だから共謀罪、という話があった。海産物、海の幸はなぜ入っていないのか」

 民進党の山尾志桜里前政調会長が、4月19日の衆院法務委員会でぶつけた疑問だ。これについて法務省幹部は「野党はキノコ狩りを取り上げているが、資金源としてはむしろ樹木や土砂が重要。(テロ等準備罪の)対象は保安林内の産物だ」と、あきれた様子だった。

 「山へしば刈りに行こうか」と言ったら、共謀罪-。対象犯罪には、テロとの関係が不明確の犯罪も含まれているというのが野党の主張だった。対象となる277の犯罪の中には森林法違反罪も含まれている。

 なぜ森林法も対象なのか。法務省幹部は「保安上の問題があるから刑が重い」と指摘する。通常の森林なら、条約が求める重大な犯罪には当たらないが、問題は保安林の区域内で森林の産物を盗んだ場合だ。法務省の林真琴刑事局長は法務委で「暴力団などが販売目的で土砂を盗むことも想定される」と答弁した。

 実際、平成12年には玄海国定公園(福岡県)で保安林の土砂などを採取した指定暴力団の組長が逮捕される事件もあった。法務省の幹部は「水源涵養(かんよう)林など公益を守るための保安林で、組織的犯罪集団が違法伐採すれば、森林の保水力がなくなり洪水や土砂崩れの恐れがある」と話す。

 ▼楽譜コピーに適用?

 「音楽教室で著作権料を支払わずに楽譜を使って演奏し、著作権法違反になれば、普通の団体も組織的犯罪集団に当たるのでは」

 衆院法務委でこう質問したのは民進党「共謀罪」対策本部長の枝野幸男前幹事長。楽譜のコピーが違法と知らずにコピーしていた場合も音楽教室が組織的犯罪集団といえるのか。いえないというのなら、その理屈は何かという議論だった。

 法務省の幹部は「著作権法違反は組織的犯罪集団の資金源になっているCDやDVDなどの海賊版の製造販売などを念頭に置いている」と解説する。

 テロ等準備罪は適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と明記。一般市民や一般企業が処罰されることはない。だが野党は、刑事告発された場合は「捜査対象になるではないか」と主張する。告発を受理した捜査機関は嫌疑の有無を確認するため捜査はするが、一般人である以上、それは容疑者としての実質的な捜査ではない。

 ▼条約の締結に不可欠

 テロ等準備罪は、各国が組織犯罪やテロと対峙(たいじ)する国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結に必要な国内担保法だが、野党は法整備は不要と主張する。

 だが、「国内法を整備せず条約を締結した例は極めて例外的」(外務省)だ。憲法98条は締結した条約について「誠実に遵守(じゅんしゅ)することを必要とする」と規定しているためだ。

 経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち32カ国が、犯罪の計画段階から処罰できる「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動に参加することを処罰する「参加罪」のいずれかを備え、残る日本以外の加盟国も法整備を済ましている。

 それでもなお、国会で極論を持ち出し、国民の不安をあおる言説が散見されたのは残念というほかない。

最終更新:5/20(土) 8:17

産経新聞