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特例法案 譲位の恒久化懸念 自民「一代限り」後退

産経新聞 5/20(土) 7:55配信

 天皇陛下の譲位を可能とする特例法案は、政府が法案提出前に全党と事前に内容をすり合わせる異例の経緯をたどった。ただ、政局化を避けるためとはいえ、政治的な妥協を重ねた結果が、果たして憲法1条が天皇の地位について定める「国民の総意」といえるのかには疑問が残る。

 「ようやくここまでこぎ着けた」

 政府高官は周辺にこう語り、胸をなで下ろした。陛下のご意向を尊重し、国民の要望にも応えたとの自負があるのだろう。その努力は多とするが、陛下一代限りの譲位とすることを目指した自民党の当初の方針が変遷したのはどうか。

 自民党は1月、譲位への対応を意見集約する懇談会(座長・高村正彦副総裁)をスタートさせた。メンバーの党役員ら14人全員が一代限りの特例法に賛同し、2月に「一代限りが望ましい」との見解をまとめた。衆参両院正副議長が2月から取り組んだ各党への意見聴取でも、自民党は「一代限り」を主張した。

 それが、将来の譲位の先例になる意味合いを持たせるよう主張する民進党に配慮し、最終的には「将来の天皇の退位(譲位)の際の先例となり得る」との国会見解に至った。法案名も、自民党は「一代限り」を強く意味する「天皇陛下の退位に関する皇室典範特例法案」を推していたが、結局、「陛下」を削除することになり、譲位の恒久化に道を開くことになった。

 たしかに、お互いの主張を言いあっているばかりでは物事は前に進まない。陛下がご高齢であることも考慮せねばならないだろう。しかし、国の根幹に関わる譲位に関する特例法案までもが、その対象になることに疑問も湧く。

 特例法案は、皇室典範の付則に、特例法と皇室典範が「一体を成すものである」との根拠規定を置く。これも譲位の恒久制度化に向けて皇室典範の抜本的な改正を求めた民進党などへの配慮だった。

 皇室典範は日本国憲法と同じ昭和22年5月3日に施行された。今回の典範の改正は組織変更に伴い「宮内府」を「宮内庁」に変えた24年以来となる。戦前の旧皇室典範は、大日本帝国憲法と同格の扱いだった。

 今後、譲位が定着するのかしないのか。予見はできないが、今回妥協を重ねたことが、今後の安定的な皇位継承問題での議論や法整備で前例となれば、将来に禍根を残すことにもなりかねない。 (酒井充)

最終更新:5/20(土) 7:55

産経新聞