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最年少プロ棋士・藤井聡太四段、強さの秘密 天才の素顔

産経新聞 5/20(土) 14:31配信

 昨年12月のデビュー以来負け知らずの快進撃が続く将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)。現在18連勝中で、デビュー後の連勝記録としては単独トップ、全体でも歴代7位タイだ。非公式戦ながら羽生善治棋聖(46)=三冠=にも勝利、その将棋界の第一人者をして「すごい新人が現れた」と言わしめた天才はどんな少年なのか。素顔に迫る。(古野英明)

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 ◆活発、木登り好き

 対局に臨む姿は落ち着きはらい、勝負師としての風格さえ漂わせる藤井四段。だが母親の裕子さん(47)によると、「幼い頃は木登りが好きで、自宅の庭に生えているクロガネモチの木によく登っていた」という活発な少年だった。小学校低学年のときには、家庭訪問に訪れた担任教諭を木の上で出迎え、驚かせたこともあったそうだ。

 「友達とよく遊び、食べることが好きで、ドラえもんが好き。どこにでもいるふつうの子供でした」。ただ、好きなことにはとことん熱中した。

 たとえば、小学生時代から今もはまっているのが、「メイクテン」というゲーム。4つの数字に足し算・引き算・掛け算・割り算の四則演算を組み合わせて「10」を作る。「車で出かけると、いつも前を走る車のナンバープレートを見ながらブツブツ言って、突然『できた!』と声を張り上げています」

 もちろん、何よりも熱中したのは将棋だ。運命の出会いは5歳のとき。祖母が買ってきた将棋セットで興味を持ち、すぐに駒の動かし方を覚えた。祖父が相手をできた期間はわずかで、やがて近くの将棋教室に週4日通うように。2年後、小学校1年生でアマチュア初段になった。

 ◆井山十段と共通点

 昨年、囲碁界初の七冠独占を達成した井山裕太十段(27)=六冠=は、子供の頃、敗れると盤上に突っ伏して大泣きするほどの「負けず嫌い」だった。天才に共通するのか、藤井四段もそうだった。

 小学1年のときに出場した将棋大会。優位に局面を進めながら、「二歩」の禁じ手で反則負けを喫した。「この世の終わりかというくらい、わんわん声をあげて泣くんです」と裕子さん。対戦相手の子供はあっけに取られ、「泣きやまないので私が代わりに表彰式に出ました」と苦笑する。

 負けず嫌いを象徴する号泣姿を覚えている人は多く、藤井四段が通った将棋教室の文本力雄さん(62)は「5つも6つも年上の上級者が相手なのに、負けるとよく泣いてました」と明かす。日本将棋連盟東海研修会(名古屋市)の事務局員、竹内努さん(60)も「他の子供たちから『藤井君の泣き声がうるさくて将棋に集中できない』と訴えられました」と笑って証言。師匠の杉本昌隆七段(48)は「勝負への執着心は尋常ではない」と感心する。

 一方で、気持ちの切り替えは早く、周囲の人たちは口をそろえて「ひとしきり泣くとケロッとして、また盤に向かっている」。これも井山十段と共通する。

 ◆得意科目は数学

 藤井四段は愛知県瀬戸市で生まれ育ち、現在は県内有数の進学校である名古屋大学教育学部付属中学の3年生。どんな学校生活を送っているのだろうか。

 「将棋の勉強をするためでしょう、授業が終わると一目散に帰っています。でも、休み時間は友達と楽しそうに話していますよ」と担任の大羽徹教諭(39)。

 最近は対局の増加に伴って学校を休まざるをえない日が増えている。宿題をする時間がなく居残りを課せられることもあるが、成績は悪くないようで、特に数学がよくできるという。

 「将棋の時間を確保するため、授業時間内で学習内容を習得するよう努力しているようです」。大羽教諭は藤井四段の集中力をそうたたえる。

 勝負師に必要な要素を高いレベルですべて備えた天才少年は、今後どこまで連勝記録を伸ばすのか。次回25日の対局に勝利すれば、渡辺明竜王(33)への挑戦権を争う決勝トーナメントに進出。最年少タイトルの獲得も十分狙える位置につく。

最終更新:5/20(土) 19:26

産経新聞