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【インタビュー】リンキン・パーク、「このアルバムには純粋さが宿っている」

5/20(土) 21:39配信

BARKS

リンキン・パークの新作、『ワン・モア・ライト』がついに発売を迎えた。衝撃のデビュー作『ハイブリッド・セオリー』(2000年) 以来、常に挑戦と実験を重ねてきた彼らだが、今作ではとても音楽的にベーシックな部分においてそれが実践されている。今回は、ファンの間でもすでに論争が繰り広げられているに違いないこの作品に関する、ブラッド・デルソン(G) とジョー・ハーン(DJ) のインタビューをお届けする。

◆リンキン・パーク 画像

この取材が行なわれたのは、レコーディング終了から間もない3月上旬、L.A.でのこと。筆者が作成した質問をもとに、現地の関係者による代行という形で実践された。当時、アルバムから先行公開されていた「ヘヴィ」以外にはまだ筆者自身が1曲も試聴できていない状況にあったことのみ、あらかじめお断りしておきたい。

   ◆   ◆   ◆

■『ワン・モア・ライト』というタイトルの意味は
■アルバムを聴く人によって違うものになる──ブラッド・デルソン

──まずは基本的なことから確認させてください。前作の『ザ・ハンティング・パーティー』は、マイク(・シノダ) とブラッドによる初のセルフ・プロデュース作品となりましたが、今作でも引き続き同じ制作体制がとられているようですね。

ブラッド:うん。ただ、新作のサウンド・プロダクションは前作とは違うものになっているよ。前作では、メタルからの影響が多大で、ギターとドラムが主体のサウンドになっていた。でも、今回の『ワン・モア・ライト』では、“曲”を重視したんだ。ギターのリフやドラムのビートを作ることから始めるのではなくて、毎日、「今日の自分は何を考えているか、何を感じているか?」ってことを話したり、お互いに尋ねたりすることから作曲を始めていった。それで、すべての曲がメロディと言葉によって導かれていったんだ。まず曲の骨格を完成させてから、そのまわりにトラックを築いていったんだよ。(これまで常にトラックから先に完成させ、メロディなどは後から作っていた) 俺たちにとっては、めずらしい挑戦になったといえる。しかも他の共同プロデューサー/ソングライターたちや、バンドのメンバーたちの才能にも頼りながら進めていくという、とても大きく開かれたプロセスだったんだ。『ワン・モア・ライト』の制作モチヴェーションのひとつは、外部の人たちとコラボレーションして、そこから学んで、いろいろな人たちの創造方法を理解する、ということでもあったからね。

──なるほど。今作では、海辺で遊ぶ6人に子供たちの写真がアートワークに用いられていますよね。このタイトルとジャケット写真の持つ意味、関連性について知りたいのですが。子供たちの数が6人であることから、メンバー6人と重ねて見てしまいがちなところもありますけども。

ジョー:あ、6人いるんだ? そこには気付いてなかった。面白いね!

ブラッド:俺たちがこの写真に共感をおぼえたのは、そのせいかもしれないね(笑)。

ジョー:これは、ファースト・アルバム以来すべてのアルバムのアートワークを手掛けてきたアート・ディレクター、フランク・マドックスの作品なんだ。俺たちの長年のいいクリエイティヴ・パートナーでね。俺は、画家やヴィジュアル・アーティストたちと一緒に仕事をするのが好きなんだ。絵やヴィジュアル・アートにしかできない表現というものがあるからね。もちろん、それ以外のアイディアに対してもオープンでいるけどさ。それで、今回もフランクと一緒にいろいろ考えていたんだけど、彼が写真を何枚か持っていて、そのうちの一枚がこれだった。すごく素敵な瞬間を捉えた写真だし、“若さというものが大人になった自分たちにどんなふうに影響を与えるか?”という話をバンド内でしていたこともあって、これを選んだんだ。神秘的でありながら、自然に忠実でもある。なんだか水平線の向こうに、子供たちの姿を超えた未知の大きな存在がある感じがするんだ。その点が、僕らが作っていたアルバムの雰囲気を的確に要約してるように思えて、アートワークに適していると感じたんだよ。

ブラッド:俺は最初からずっと、リンキン・パークというのは、俺たちの芸術性のための基盤だと考えてきた。なぜ芸術性という言い方をするかといえば、あくまで音楽がその土台になってはいるけど、そこからさまざまな分野に広がっていくことになるからなんだ。特に俺たちの音楽におけるヴィジュアルの領域というのは、常に優先させてきた部分だった。それはジョーとマイクがアーティストの魂を持っていて、アーティストとしての鍛錬も経てきて、他の人よりも高い次元でヴィジュアルについて考えられるからこそだ。そのおかげでメンバーたちも、自分たちがやるべきことを耳だけで考えるんじゃなく、目でも考えるように背中を押されているんだ。

──さらに基本的な質問です。『ワン・モア・ライト』というシンプルなタイトルに込められているのは?

ブラッド:タイトルの意味は、このアルバムを聴く人によって違うものになると思う。今回初めて、収録曲自体のタイトルをアルバム・タイトルに掲げたんだ。俺にとっては、その表題曲がすごく特定のことを意味していて、アルバムのタイトルはそれとは少しだけ違う意味を持っているんだけど、それはとてもパーソナルな次元のものなんだ。このアルバムの大半の収録曲のテーマとストーリーは、作曲中に俺たちが感じていたことを直接的に表現していて、感情を通して描かれている。そして同時に、すごく私的な特定のテーマについて書かれているんだ。それによって結果、リスナーに魔法をもたらすことができるような曲になっていると思う。アートというのは会話だと俺は思っていてね。俺たちはアートを作ることが必要だから作っているけど、君たちが自分なりのアイディアや感情、意味をそこに加えることによって、そのアートというものが成立すると思うんだよ。だから、君たちにとってのこのタイトルの意味は、俺にとっての意味とは違うものになると思うし、ジョーにとっても違うものになるんだ。本当にリアルで強力なタイトルは、それぞれの人に違う意味をもたらすことができるものだと思う。

ジョー:実はアルバムのタイトルを決めるのに、数ヵ月かかったんだよ。アイディアが沢山あったんだ。でも、これはマイクがいちばん気に入ったタイトルだったんだよね。マイクは最初、トップ5に入るタイトルのアイディアを挙げていた。その時点ではまだ躊躇っていて、これがいちばん好きだとまでは明言していなかったけども。今回のアルバムで、マイクには語りたいことが沢山あったから、それに相応しいタイトルについて確信が持てていなかったんだと思う。彼は完璧主義なところがあるからね。でも、結局「わかった、これにしよう」とマイクが言って、俺たち全員が賛成した。全員がすごく気に入っていたタイトルだったからね。

■各曲が俺たちの人生で起こっていること
■でも普段は話題にはしなかったことを語った章──ジョー・ハーン

──先行公開された「ヘヴィ」という楽曲がいち早く話題を集めましたね。この楽曲がどのようにして誕生したのかを教えてください。

ジョー:マイクがSNSでファンのコメントを見ていて、ファンの誰かが「ヘヴィな曲を作ってくれ!」ってコメントしていたのを見つけたからだよ(笑)。

ブラッド:皮肉なタイトルなんだよ。君たちはどうかわからないけど、俺が何かの問題について考えている時って、すぐさまその問題で頭が一杯になることがある。その問題にフォーカスしてしまって、実際のまわりの状況とは関係なく、すべてが山みたいに重くのしかかってくる気がしてその悪循環から抜け出せない──この曲はそういう内容なんだ。この曲に参加しているキアーラとは、まずマイクが知り合っていて、一緒に何かやろうという話になり、彼女は2回レコーディング・セッションに来てくれたんだ。その時にマイクが彼女と話をしているなかで、彼女がこの曲に惹かれたんだよ。元々この曲のセカンド・ヴァースはチェスターの声でレコーディングしてあったんだけど、その部分を俺たちは彼女のヴォーカルで録ってみた。それによってこの曲に、本当に生命が吹き込まれたという感じがしたね。ふたつの声が、ひとつのテーマとして合わさって聴こえてね。俺がいちばん好きな曲のひとつだよ。沢山の人たちに聴いてもらったんだけども、みんなそれぞれに感情移入してくれて、それでこの曲を今作からのファースト・シングルにすることに決めたんだ。アルバムの強力なイントロダクションとしてね。

──この楽曲自体はタイトルに反してヘヴィではないことから「今回のアルバムはヘヴィさとは逆の方向に向かったものなのか?」と結論を急いでいるファンもいるようです。実際のところ、この曲はアルバムの方向性を示唆するものだといえそうですか?

ジョー:ある意味においては、そうだね。なにしろアルバムの導入になる曲だから。でもどの曲がシングルになっていたとしても、同じことが言えただろうと思う。

ブラッド:でも、アルバムに入っているすべての曲が、それぞれにユニークなサウンドを持っているよ。だから、みんなにアルバムの全曲を聴いてもらうのがすごく楽しみなんだ。いずれも単独の曲として自立できる力のある曲ばかりだからね。しかも最終的にその曲たちをこの曲順に並べた時に、これらの曲がひとつにまとまって成立していることも感じられたんだ。明らかに一続きになった物語があるんだよ。聴いていて、その物語の映像が喚起されるんだ。これはふたりで話していたんだけど、確かジョーは「アルバムを通して聴いた時にひとつの連続したストーリーが思い浮かんで、共感した」と言っていたよね?

ジョー:ああ。作曲中、歌詞は通常2~3人が一緒になって書いていたんだけど、すべての曲が、それぞれに違う感情を扱ったものになっている。でも、それらの曲がアルバムとしてまとまった状態で聴くと、各曲が俺たちの人生で起こっていること、でも普段は話題にはしなかったことを語った章になっているかのような感じがした。音楽って、人に心の安らぎを与えてくれるものだと俺は思うんだ。解決法や答えはくれないけど、何らかの問題について安らぎを見出せるような場所を与えてくれると思うんだよ。このアルバムは、俺たちとってそういう作品になったと思う。

──このバンドは常に新しい実験や試みを重ね、テクノロジーを有効に用いながら音楽を進化させてきました。キアーラの起用など以外に、今回何か新たな試みはありましたか?

ブラッド:というか、何より俺たちが“「曲」に「曲」としてアプローチしたこと”が大きいね。つまり、ほぼすべての曲作りが歌詞とメロディから始まったということなんだけど、その作曲方法そのものが、俺たちにとっては初の試みだったんだ。挑戦になったのは、それぞれの曲に合うサウンドを見つけることだった。それはすごく容易いことだろうと思っていたんだけど、各々をどんなタイプの曲に落着させていくかを見つけるのは難しかった。そのおかげで、俺にはすべてのプロセスが新鮮に感じられたよ。だから、このアルバムには純粋さが宿っているように思うんだ。こういう方法で、曲に合う音楽を発掘することができたから、というのがその理由のひとつだと思うんだ。とにかく今回の俺たちは、何よりも“曲”というものに取り組んだんだ。70曲ぐらい作って、そのなかで特に気に入った10曲を厳選した。どの曲も、純粋にひとつの曲として作曲されている。だけどアルバムの制作中に俺たち全員がパーソナルなことを経験していたから、アルバム全体に一貫した感情が流れている。だから遠くから眺めてみると、ジョーが言ったように、アルバム全体がある物語を語っているように感じられるんだ。まるで、それぞれの曲に共通項があるようにね。それは、俺たちが最初に意図してやろうとしたことじゃなかったけども。

──興味深いですね。実際、このバンドの楽曲のあり方は、作品を重ねるごとに“時代を問わない、普遍性の高いもの”になってきているように思います。これは音楽の成熟の形として理想的なものだと思うのですが、こうした変化についてあなた方自身はどう考えていますか?

ジョー:素晴らしいことだと思っているよ。それに、これだけ長きにわたって俺たちが活動を続けられているのは素晴らしいことだと思うし、俺自身、永遠にこれをやり続けたいと思っている。それができたら素晴らしいよね。今みたいな意見を言ってもらえて、俺たちはとても恵まれていると思うよ。そもそもこの仕事ができて本当に幸運だし、俺たちの作品を楽しみ、応援してくれる人たちがいてくれて……本当に幸運としか言いようがないよ。人々の応援とフィードバックがなかったら、活動を続けるのは不可能だからね。

取材・文◎増田勇一
撮影◎James-Minchin

ニューアルバム『ワン・モア・ライト』
2017年5月19日(金)発売
WPCR-17722 ¥1,980+税
1 ノーバディ・キャン・セイブ・ミー
2 グッド・グッドバイ
3 トーキング・トゥー・マイセルフ
4 バトル・シンフォニー
5 インビジブル
6 へヴィー / リンキン・パーク&キアーラ
7 ソーリー・フォー・ナウ
8 ハーフウェイ・ライト
9 ワン・モア・ライト
10 シャープ・エッジ
商品リンク: https://Linkinparkjp.lnk.to/preorderPr

ライブ<LINKIN PARK ONE MORE LIGHT WORLD TOUR>
Special Guest:ONE OK ROCK
千葉・幕張メッセ 国際展展示ホール9~11
2017年11月2日(木) open 16:00 / start 19:00
2017年11月4日(土) open 15:00 / start 18:00
2017年11月5日(日) open 15:00 / start 18:00
※LINKIN PARKのパフォーマンスは全日程90分を予定
※ONE OK ROCKのパフォーマンスは全日程60分を予定
来日公演特設サイト: http://www.hipjpn.co.jp/live/lp/

最終更新:5/20(土) 21:39
BARKS