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ナチス・ドイツ時代生まれの群馬県上信電鉄 デキ1形電気機関車は「93歳」

産経新聞 5/20(土) 15:00配信

 上信電鉄(群馬県高崎市)の本社車両区で4月27日、3カ月に1度の月検査が行われた。対象は凸形の車体が特徴のデキ1形電気機関車。ドイツのシーメンス・シュッケルト社で製造され、大正13年の電化に伴い同電鉄が3両を購入した。「93歳」になる国内最古級の電気機関車だ。

 全長9・18メートル、全幅2・65メートル、全高3・87メートル、重量34・5トン。50キロワットの動力を4基搭載している。「パンタグラフが替わったのと、ATS(自動列車停止装置)が付いた関係で充電装置が追加されたぐらいでモーターから何から輸入当時のまま」-車両区長の青木富夫さん(63)がそう教えてくれた。「油漏れもあり足しながら走らせているが、会社にとっても私にとっても宝物だ」と青木さんは力を込めた。

 輸入された3両は貨物輸送を中心に活躍。セメントや石灰石、木材などを積んだ貨車を引き続けた。だが、平成6年9月、モータリゼーションの影響で同電鉄は貨物部門の廃止を決定。1両は沿線の富岡市に寄贈され、上州七日市駅から約2・1キロのもみじ平総合公園に同市指定重要文化財として屋外展示された。残る2両は工事列車などとして運転されたが定期運用はなくなった。

 「小さいデキがピーというかん高い汽笛を鳴らしながら10両以上の貨車を引く姿を見て勇気をもらったものだった」。7年7月に結成された「デキを愛する会」の初代会長、大日方康博さん(68)は振り返る。昼食時に定期貨物が走っていて農作業する人たちからは「オメシ列車」と親しまれていたという。会の結成には「何もしないでいると、デキが走らなくなってしまう-。そうした危機感があった」と話す。展示車両の清掃やミニデキの運転会などが主な活動だ。

 11年、再びデキにスポットライトが当たる。「子供たちにデキの魅力と存在を伝えたい」と同電鉄がゴールデンウイークに合わせてファンタジー号の運行を開始。運転室の乗車体験やゲームなど盛りだくさんのイベントを企画した。今年もこどもの日の5日、2両のデキが2両の客車を引いて高崎駅-下仁田駅間を往復する。

 「上州のシーラカンス」の愛称もあるデキ。大日方さんは「100歳の祝いをしたい」と考えている。

 (前橋支局 椎名高志)

 ■上信電鉄 明治30年に国内の私鉄の中では伊予鉄道に次いで2番目に上野鉄道として開業。当時は蒸気機関車が客車をけん引した。高崎駅-下仁田駅間は33・7キロで全8駅だった。大正10年、上州と信州を結ぶという構想から上信電鉄と社名を変更。13年には全線電化とともに上信電鉄と高崎線がつながれ貨物の相互乗り入れが実現した。現在では中心となる鉄道業のほか乗り合いバス業、貨物自動車業、不動産業、広告業を営業。関連会社としてタクシー業、観光バス業、トラック運送業がありグループとして事業展開をしている。

最終更新:5/20(土) 15:00

産経新聞