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鬱、引きこもり・・・悩む若者 農作業 自立へ一歩 栃木県支援機構

5/20(土) 7:01配信

日本農業新聞

 精神的な問題を抱えながら自立や社会復帰を目指す人の「中間的就労」の場として、農業体験が成果を上げている。栃木県若年者支援機構は2011年から、200人以上の若者を県内の農家や工場などに派遣し、7割を自立に導いた。自然相手の農業はストレスが少なく、作業も多彩。働くことや人付き合いの訓練になり、体力が養われるなどの効果が見込めるという。

笑顔戻った 毎月受け入れ

 宇都宮市で米やアスパラガスを栽培する相良利和さん(65)、律子さん(64)夫妻は同機構を通じて毎月1回、人付き合いが苦手だったり、鬱(うつ)など精神面で問題を抱えていたりする若者3人を受け入れている。若者には、ジョブトレーナーと呼ぶ指導員1人が付き添う。

 午前9時から午後4時まで、肥料散布やアスパラガスの管理、田植えの補助などさまざまな作業をしてもらう。律子さんは「家族だけでは大変な作業を手伝ってもらい、とても助かっている」と笑顔で話す。

 作業する20、30代の若者も笑顔が絶えない。農作業の経験はなく、楽ではないが「作物が成長するのを見るのはうれしい」「体力もついて良い汗が流せる」と前向きだ。

 受け入れ始めたのは4年前。どんな作業ができるか分からなかったが、トレーナーが付き添うため「心配はなかった」。4人分の労賃として同機構に支払うのは1日2万円。求人をしてもなかなか人手が確保できないだけに、「大きな力になっている」と評価する。

 農作業を通じ、若者も変わってきた。律子さんは「最初は話し掛けてもほとんど反応がなかった男性が、何度も来るうちに笑顔になった。人付き合いが苦手と感じないくらい協力してくれる」と実感する。昨年は、農業の体験をきっかけに地元の農業法人に就職する若者も出てきたという。

中間的就労に最適 自然が相手仕事も多彩

 栃木県若年者支援機構には、働く意志はあるものの、習慣や体力がなく就職が難しい15~39歳の若者が相談に訪れる。多くが社会での挫折や引きこもりを経験、精神疾患などの問題を抱えるなど、他人の助けがなければ自立への一歩を踏み出せないでいる。

 このため同機構では、農業などを経験することで自己管理能力や体力、コミュニケーション能力を養い、自信を持って就職してもらおうと半年間の「中間的就労」を提供する。協力企業30社と農家5戸から仕事を受注し、年間約30人を派遣。現在、13人の若者が登録している。

 工場などでは室内の狭い空間に常に多くの他人の目があり、対人関係が苦手な人にとってストレスが大きく、さらに自信を失ってしまうこともあるという。

 一方、自然相手の農業はストレスが少ない。同機構の大森里史さんは「伸び伸びと作業でき、参加しやすい。日々違うことが経験でき、訓練には最適」と、農業の可能性を感じ取る。

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最終更新:5/20(土) 7:01
日本農業新聞