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なぜ「道徳」で問題ばかり起きるのか? 江戸しぐさ、パン屋NGに共通する背景

5/20(土) 12:51配信

BuzzFeed Japan

2018年度から小学校で、これまでの「道徳」が”格上げ”され「特別な教科 道徳」に変わる。いじめなど現実の問題に対応できていないことが理由だと文部科学省は説明している。ところが、道徳の教科書を巡って現実に起きているのは、パン屋を登場させた教材は「郷土愛不足」、和菓子屋に変えるとOK、というなんとも瑣末な話だ。なぜ、こんな問題が起きるのか。【BuzzFeed Japan / 石戸諭】

中身の議論がない

道徳の教科化というのは安倍晋三首相をはじめとする、保守派の悲願でした。とにかく教科にしたいという思いはあった。ところが肝心の『道徳』の中身を議論していない。だから現場は混乱するんです」

BuzzFeed Newsの取材にそう語るのは、在野の歴史家であり、『文部省の研究』(文春新書)でここ150年の教育史を検証した、辻田真佐憲さんだ。

教科化の経緯はこうだ。2013年、安倍首相直属の教育再生実行会議が、大津市の中学生がいじめをうけて自殺した問題をあげ、いじめ防止策として道徳の教科化を提案した。

その後、文科省の専門家会議、中央教育審議会などでの検討を経て、教科化が決まった。

「特別の」としているのは、国語や算数と違って数値での評価はしない教科という意味である。評価は記述式でされる。来年度の開始にあたり道徳の教科書作りが始まったのだが、混乱は早々に起きた。

「パン」では郷土愛が育めない?

道徳の教科書で「パン屋」を登場させた物語に、文科省の審議会から意見がつく。

「『我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つこと』という内容項目について考えさせる内容になっていない」。文科省の担当者は趣旨をそう解説する。(毎日新聞)

この教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に修正して、教科書検定はパスすることができた。

「郷土愛とは何か、愛国心とは何かを議論して、詰めていないから表面的な話しかできない。パン屋がでてくる物語では郷土愛を育めないけど、和菓子屋さんなら育めるってどういう理屈なんでしょうね」(辻田さん)

もう一つ問題がある。

道徳教育を強化したいという保守派のなかに、しばしば根拠がない主張が混ざることだ。

例えば、道徳の教科化の発端になった「いじめ」。本当に道徳を教科化すれば防げるのだろうか。

大津市のいじめ自殺で、生徒が通っていた学校は文科省による道徳教育の指定校だった。問題を検証した第三者委員会の報告書には「いじめ防止教育(道徳教育)の限界」という指摘がある。

もう一つの事実を示す。詳細は別の記事に書いたが、少年事件は1960年代前後をピークに激減といっていいペースで減っている。特にここ10年は、凶悪事件は半減し、窃盗も3分の1にまで減っている。

少年による暴力そのものが減少しているといっていい。犯罪社会学の領域では「なぜ少年事件がこんなに減ったのか」が議論されている。

社会的に話題になった少年事件をあげて教育を憂い、学校で道徳を教える必要性を訴える保守派の主張には、根拠がないことがわかる。

「社会的に話題になっていったいじめ問題で、道徳教育の限界を見つめるというならともかく、防止を理由に道徳教科化という理屈は成立しません」(辻田さん)

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最終更新:5/20(土) 12:51
BuzzFeed Japan