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SF大作『AKIRA』の脳に響くハイパーソニック・サウンド!・2

Stereo Sound ONLINE 5/20(土) 12:31配信

サウンドと映像の調和が見事。世界観の演出を引き立てている

オーディオビジュアル方面で活躍中の、アニメが大好きなライター鳥居一豊さんがお届けする、Stereo Sound ONLINEの連載「アニメノヲト」。ここでは『AKIRA』のその2をお届けする。(Stereo Sound ONLINE編集部)



【今回のヲトアニメ】
『AKIRA』BD-ROM(NBCユニバーサル、GNXA-1005)
・1988年日本・2011年発売・本編:124分
・カラー(1.78:1)
・ドルビートゥルーHD5.1ch、192kHz/24bit
(C)1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

※視聴取材には、2009年にバンダイビジュアルから発売されたソフトを使用いています(写真)



 物語の中心となるのは、荒廃したネオ東京を根城にする暴走族の少年たち。そこに反体制派のテロリストや軍部が入り交じり、作品は見せ場たっぷりのアクションが連続する。このスリリングな映像は、最新の作品を見慣れた人でもまったく見劣りしないはず。

 まずは冒頭のタイトルバック(CH.1:1分9秒)。都心と思われる場所で謎の黒い爆発が起き、地形が大きく変わった関東地方とおぼしき場所に切り替わる。かつて東京湾だったはずの場所に巨大な都市が構築されているとわかったとき、大太鼓の深い響きを伴なった音が鳴り響く。まるで目の前で鳴らされているかのようなリアルな音を聴くだけで、BD以前に発売されたLD版やDVD版とは別物であることがわかる。今見ても30年前の作品とは思えないし、作品を知っている人でも、本BDを“新作の映画”として見てほしいと思う。生半可な新作以上に満足できるはずだ。

 後に続く暴走族同士の抗争シーンも本作の世界観がよく伝わる場面で、テールランプが尾を引くように描かれるスピード感のある映像と、走行音や炎上する車両の音などが乱舞し、ある意味祭り囃子のようにも聞こえる音楽がそれを彩る。これだけで、あと2年後に迫った現実の2019年とは違う、架空の近未来の世界に没入してしまうはず。

 超能力に目覚めかけた鉄雄と、謎の子供たちが対決する場面(CH.17:49分27秒)は、巨大なぬいぐるみとのバトルが繰り広げられていくのがシュールで、対決前に流れる子供の楽しげな鼻歌をモチーフとした音楽も、いっそう不気味に感じられる。この場面のせいでくまのぬいぐるみが恐くなった人は、少なくないだろう(笑)。

 そして、金田と鉄雄の一騎打ちから、軍の衛星兵器の攻撃の場面(CH.28:1時間34分26秒)では、レーザー兵器vs.超能力の迫力あるバトルとなる。轟音が連続するシーンから宇宙へと切り替わると、とたんに音がなくなる。この静寂さに痺れる。本作には音と音楽の洪水のようなイメージがあるのだが、実のところ音楽は要所で効果的に使われているだけで、思った以上に「静かな」映画なのである。この緩急の付け方が見事で、より効果的に音楽が鳴り響き続けているように感じるのだ。

 クライマックスで鉄雄が暴走するシーンでは(CH.32:1時間46分45秒)、男性の合唱が重々しく響き、制御できない力が暴走していく様子が描かれていく。不気味かつ絶望的な状況でありながら、ある意味神々しさを感じる映像と音には、誰もが驚くはず。そして”アキラ”降臨。鎮魂歌を思わせる優しい音楽がすべてを鎮めていく。本作の音楽はガムラン(インドネシアにルーツを持つ民族音楽)や日本の能楽、西洋音楽とあらゆるジャンルのエッセンスが融合したもので、多国籍というか無国籍に近いAKIRAの世界観と見事に調和している。芸能山城組に音楽を依頼した監督も素晴らしいが、芸能山城組の仕事もまた期待以上のものだったことが、本ディスクを通して如実に感じられる。

(つづく)

【鳥居一豊(Kazutoyo Torii)】
雑誌の編集を経てフリーランスとなる。AVはもとより、PCオーディオやヘッドホン、また各種ガジェットの造詣も深く、さまざまな分野で執筆している。自らが設計から携わった自慢のシアター空間「架空劇場」は、ドルビーアトモスやDTS:X再生にも対応する「6.2.4」構成。最高の映像と音を求め、日々進化し続けている。大のアニメ好きでもあり、深夜アニメのエアチェックは怠らない。

Stereo Sound ONLINE / 鳥居一豊

最終更新:5/23(火) 17:35

Stereo Sound ONLINE