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マーリンズ監督のドン・マッティングリーに見た飛行機内での神対応

5/21(日) 11:05配信

東スポWeb

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 メジャーリーグの選手やOBはとにかくファンに優しい。球場内はもちろん、球場外でも気さくにサインや写真撮影に応じる人が圧倒的に多い。こうした姿勢はプロ入団後のマイナー時代に教育されるためだが、時には日本では考えられないほどのファンサービスを行う選手や球界関係者もいる。私の中で記憶に残るその一人がドン・マッティングリー(56)だった。

 現在、マーリンズの監督を務める彼は1982年のメジャーデビューから95年の現役引退までヤンキース一筋でプレー。86年には現在も球団記録として残るシーズン238安打を記録した名選手だ。2004年に彼がヤンキースの打撃コーチに就任したころから面識があったが、当時から彼は温厚な人格者として有名だった。

 そんなマッティングリーのファン対応を目の当たりにしたのは04年7月。テキサス州ヒューストンで行われた米球宴翌日のことだった。

 球宴取材を終え、自宅アパートのあるニューヨークに戻る機内。3席並びの通路側に座った私の隣席が偶然マッティングリーだった。球宴には家族同伴でコーチとして参加していた。私はすぐにあいさつ。彼も「隣席になるとは奇遇だね」などと話しながら、窓側に座った息子を紹介してくれるなど、和やかな雰囲気で談笑を始めた。

 すると数分後、私の前席に座っていた白人男性が彼に気づき、色紙らしきものをかばんから出してこう言った。

「ドン・マッティングリーさんだね? ファンなんだ。サインをくれないか?」

 機内はすでに大半の乗客が着席し、出発を待っていた。マッティングリーもシートベルトを着用。この状況ならサインを断るのが普通だろう。

 彼は違った。嫌な顔をするどころか、差し出された色紙らしきものを受け取ると、すぐに笑顔でサイン。男性に手渡す際には握手までするサービスぶりだった。その後、この男性への対応に親近感を抱いたのだろう。彼のもとには周囲の乗客から次々にサインの要求が始まった。色紙やボールが乗客らの手を渡りながらマッティングリーのもとに“集結”。隣に座る私は正直、困惑した。それでも、彼は終始笑顔で対応。結局、飛行機が離陸のため滑走路に差し掛かる直前まで、数十人分のサインをし続けたのである。

 離陸後、本人に「こんな場所でサインを求められて…大変だね」と声をかけた。彼は諭すようにこう答えた。

「プロ野球選手というのはファンに支えられているスポーツなんだ。私は現役時代、ファンのサポートのおかげでプレーができた。その感謝の気持ちを考えれば、これぐらいのことは何の問題もないよ」

 脳裏では「ファンのため」とはいえ、選手も人間。プライベート時や家族同伴の際に丁寧な対応を取るのは難しい。それでも、彼は当たり前のようにファンサービスを優先する。

 現役引退後、現職を含め指導者として名門球団から引っ張りだこのマッティングリー。そのゆえんは普段からのこうしたファンへの思いがあるからなのかもしれない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

最終更新:5/21(日) 11:05
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