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綾野剛が“怪物”を演じる「フランケンシュタインの恋」底知れない演技の振り幅

5/21(日) 12:01配信

dmenu映画

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』では飄々とした謎の男。映画『怒り』ではナイーブで傷つきやすい住所不定の男。映画『日本で一番悪い奴ら』では欲望に忠実な悪徳刑事。昨年だけでも、驚くほどの振り幅で観客たちを魅了してきた綾野剛が、TVドラマ「コウノドリ」以来2年ぶりに連続ドラマに主演している。TVドラマ「フランケンシュタインの恋」は、この俳優の怪物性に改めてうならされる作品だ。

【画像】悪そうな顔…強面な綾野剛

弱さの中に強さがあり、強さの中に弱さがある

120年前、一人の博士の一途すぎる想いが、死者を復活させる。怪物としてこの世に生を受けた深志研は、博士の死後も人間と触れ合うことなく、森でひっそりと暮らしてきた。ところが、一人の女子大生と出会ったことから恋を知り、人間の情を知り、彼は社会に踏み出していく。

いわゆるモンスターっぽい特殊メイクではない。綾野は顔に最低限の傷メイクを施すだけで、怪物の魂を体現している。慣れない人間社会に飛び込んだ彼の姿は、言葉や文化の違う国に迷い込んだ外国人のようにも、大人たちの世界で対等に渡り合おうとする幼児のようにも映る。つまり、戸惑いや不安といった繊細な感情を感じさせると同時に、未知なる世界に怯むことのない無垢で無鉄砲な勇気を漂わせているのだ。これまでも、様々な作品でキャラクター独自の弱さや強さを演じ分けてきた綾野は、このドラマのファンタジックな設定を味方につけ、弱さの中に強さがあり、強さの中に弱さがある怪物を見事に成立させている。

大きくも、小さくもなれる芝居の伸縮性

第3話では、「人間を殺すかもしれない怪物は、人間に恋をしてはいけないのでしょうか?」という問いが彼自身から発せられた。恋をすると、人は強くもなるし、弱くもなる。つまり、相手とずっと一緒にいたいと願うと同時に、自分が一緒にいて本当に相手が幸せになるのだろうかと疑心暗鬼になるのだ。これは、フランケンシュタインのみならず、多かれ少なかれ、恋愛したときに直面する感情だと思う。好きな相手を求めるからこそ心細くもなる恋心を、怪物という肉体を通して浮き彫りにしていく綾野の演技がとても素晴らしい。恋ならではの、始まりのときめきと戸惑い。何かが始まるとき、人は期待をするし、怖くもなる。そのない交ぜになった精神状態を、観る者の胸に沁み入るように演じている。

特筆すべき点は、彼の身体が、あるときはとても大きく見え、あるときはかなり小さく見えることだ。綾野の身長は180cmと公表されているが、ある場面では190 cmぐらいに見えるし、別の場面では165 cmぐらいに見える。主人公の魂の伸縮を、微細な姿勢の傾斜であらわしているからだろう。か細い震えと、力強いバイブレーション。その姿は、今後どのように変化し、物語を彩っていくのだろう。

ドラマ放映中の6月に公開される映画『武曲 MUKOKU』では、荒くれ男の葛藤を全身で表現している綾野。「フランケンシュタインの恋」と比較すると、この俳優の底知れなさがますます伝わってくるはずだ。

文/相田冬二@アドバンスワークス

最終更新:5/21(日) 12:01
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