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動物学者によると「共食いは自然の摂理」。カニバリズムは動物界では珍しくなかった

5/21(日) 21:10配信

ギズモード・ジャパン

もうずいぶん昔のことです。

都内某所、某駅近くの雑居ビル2階にその店はありました。車窓から眺めただけで、実際行ったことはありませんでしたが、線路に面した窓ガラスに色あせた大きな文字で「ひゅうまんステーキ」と書いてあったのを今でもはっきりと覚えています。

なんでわざわざ人肉を連想させるような店名に決めたのかは謎ですが、その怖さゆえに根強く記憶に残ったのはたしかです。

カニバリズム――人肉嗜食、または共食い――は現代社会において究極のタブーかもしれません。それでも、禁忌であるからこそ人々の好奇心を惹きつけてやまず、ホラー映画の殿堂『羊たちの沈黙』から最近ではティーン・カニバル映画『ロウ』にいたるまで、しばしば見る者を戦慄させるテーマとして扱われてきました。

同様に、カニバリズムに惹かれた科学者もいました。もともとは吸血コウモリについて研究していたアメリカ自然史博物館研究員のBill Schutt博士は、吸血動物と同じように忌み嫌われているカニバリズムを研究対象として魅力的に感じたとThe Washington Postのインタビューに対して答えています。そして、世界中からカニバリズムの事例を集め、共食いの実態を科学的に調査して「Cannibalism: A Perfectly Natural History(訳:カニバリズムは自然に起こる――動物学の観点から)」という本をまとめました。動物学者の観点から科学的にカニバリズムの仕組みを解説した内容で、動物・ヒトともにおぞましく感じてしまうような事例がたくさん紹介されています。同じ親に生まれた子供同士の共食い、他人同士の共食い、親が子を食べる例、子が親を食べる例、つがい同士の共食い、などなど……。

そして、比較的最近まで少数の動物のみに見られる異常な行動と考えられていたカニバリズムが、実は数百にのぼる種に見られることをつきとめました。さらに、共食いの頻度は動物の種類によって異なり、同じ種のなかでも置かれた環境によって違うことがわかったそうです。たとえば、ある地域になんらかの理由で種が繁殖しすぎて人口過密になった場合、カニバリズムが起こりやすくなるというわけです。

Discover Magazineに掲載されたSchutt博士の記事によれば、そもそもカニバリズムについての研究を始めたのはカリフォルニア大学サンタクルーズ校の生態学者であるLaurel Fox教授で、1975年にカニバリズムの多くは環境に適応するための手段だと発表しました。また、1980年にはカリフォルニア大学デービス校所属の生態学者、Gary Polis教授が無脊椎動物におけるカニバリズムの法則をまとめました。

カニバリズムの法則:

体が未発達な幼体(卵をふくむ)ほど食われる。
メスのほうがよく食らう。
栄養状態が低下するとカニバリズムの頻度が上がる。
人口過密度が上がるとカニバリズムの頻度が上がる。

このようなPolis教授の研究結果を踏まえて、Schutt博士はさらにその法則がすべての分類階級における動物に適用できると考えました。そして、今回の研究を通じてカニバリズムは多くの機能を持っていることも発見しました。いままで動物は捕獲されたストレスにより共食いすると考えられていましたが(たとえばザリガニ)、そうではなくて、共食いがなんらかのメリットをもたらすから自然に起こるのだと、The New York Timesに掲載された自身の記事で力説しています。さらには、食われる側にもメリットがあるのだとも。

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