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世界一固いアイスを削れ! あの「あずきバー」に挑んだ無謀な玩具メーカー

5/22(月) 14:08配信

ITmedia LifeStyle

 井村屋の「あずきバー」は、自然なおいしさで年間2億5000万本以上を販売する、まさに国民的なアイスだ。一方で、その固さは有名。一部では“世界一固いアイス”といわれている。そのあずきバーを、あえて“削る”ことに挑戦した無謀な玩具メーカーがあった。

あの「あずきバー」を削ることに成功

 あずきバーは、ぜんざいと同じ材料だけを使い、アイスを柔らかくする添加剤を一切使用していない。しかも食物繊維たっぷりの小豆をぎっしりと詰め込んでおり、空気の泡が少ないためにさらに固くなる。「わざと固くしたわけではなく、おいしさを追求した結果、固くなった」(井村屋)

 “固い”よりむしろ“硬い”と書いたほうが適切に思えるほど固いあずきバー。そのあずきバーをあえて削り、ふわふわのかき氷にすることに挑戦したのがタカラトミーアーツだった。同社は市販のお菓子に手を加えて楽しむクッキングトイ「おかしなシリーズ」を展開しており、「おかしなカキ氷 ガリガリ君」などアイスをかき氷にする玩具でも実績がある。しかし、あずきバーの固さは格が違った。

●プレゼンの場で味わった屈辱

 プロジェクトがスタートしたのは2016年9月。

 安全面やコストなどを考慮しながら、数カ月間の構想の後に試作1号機が完成した。

 あずきバーを2本の強力なバネで固定し、プラスチックの刃を動かして削る構造。2人掛かりでないとあずきバーをセットできないという課題もあったが、それ以前の問題もあった。始めはあずきバーを削れるのだが、途中でバネの力が不足し、半分ほどまでしか到達できない。結局、社内検証でもうまく削ることができず、構造から見直しを迫られることになった。

 タカラトミーアーツの開発陣は悩む。刃を固定してあずきバーを回すか、あずきバーを固定して刃を回すか。

 悩んだ末、後者を選択した。2号機は、上部のハンドルを回すと連動したギアがあずきバーを下へ押し込みながら刃を回すことで削る仕組み。しかしハンドルが重く、回すと支柱になっているラックギアが“しなる”ほど力がかかってしまう。

 一度は試作機を井村屋に持ち込むところまでこぎつけた。しかし、なんと井村屋の担当者の目の前で、ハンドルが破損する事態に。その後、修理するもあずきバーを削る前に再び壊れた。

 プレゼンの場で味わった屈辱。しかし、ハンドルは折れても心は折れていなかった。

 3号機は「サイドハンドルタイプ」と呼ばれるものだ。その名の通り、昔のかき氷器のように側面にハンドルを設け、あずきバーの回転に対する負荷を軽減するはずだったが、2号機以上にハンドルが重くなってしまい、回すことができずに断念。

 4号機では刃を増やした。3枚の刃により、一度の回転であずきバーをたくさん削ろうと欲ばった結果、逆に抵抗が増えてしまい失敗。ハンドルが重く、回すことすらできなかった。

●ゴールが見えた!

 あずきバーの固さに加え、アイスには付きもののスティックの処理も大きな課題だった。このため開発陣は、思い切ってスティックを抜くことを検討する。「削るのも難しいのに、スティックを引き抜くなんてもっとハードルが高いのでは?」。社内でも疑問の声が上がる。

 7種類の試作機を経て、“てこの原理”を利用して力をかけずにスティックを引き抜く試作機が完成した。「ぬけるんバー」と名付けた。

 一方、本体の試作5号機はスティックを抜いた状態のあずきバーを前提に試作した。ハンドルのギア比を変えた5種類のサンプルを作成してバランスを検証。ギア比「1:1.76」という数字を導き出す。

 ゴールが見えた。

 最終的な仕様がまとまり、次のステップとして製品自体をコンパクトにするため余分な部品を削減する作業に入る。試作6号機は、あずきバーの固さに負けないようハンドル部分にクラッチを内蔵。さらにあずきバーを最後まで削るための“押さえ”のパーツも改良した。

 再び井村屋をたずねた。

 初めて、あずきバーを1本、すべて削ることに成功した。

 井村屋の担当者の目の前で。

 9カ月間の戦いが決着した瞬間だった。

 井村屋の担当者は振り返る。「まさか本当に完成させるとは思っていなかった。あずきバーの場合、その固さに加え、粒部分とあん部分の物性の違いもあり、ただ単に削ろうとしても大変難しい。試作機を何度も何度も作って挑戦する姿にハラハラドキドキしていた」

 しかも、完成したかき氷はおいしかった。

 「ふわっと柔らかい食感にまず驚き、その後ふんわりとあずきの味わいが広がって、新しいおいしさ。いつものあずきバーも美味しいけれど、あずきバーかき氷も格別の美味しさ」と井村屋も太鼓判を押す。

 何度も振り出しに戻ったプロジェクトが完了し、6月29日に「おかしなかき氷 井村屋あずきバー」が全国の雑貨店や量販店で発売される。価格は2800円(税別)。あの「ぬけるんバー」も付属する。

 「始めは挑戦状を突きつけた形だったが、井村屋さんの協力のもと、あずきバーの新しい楽しみ方を生み出すことに成功した」とタカラトミーアーツ。「今後は両社でタッグを組み、この新しい美味しさを広めていきたい」

最終更新:5/22(月) 14:08
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