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Western Digital、「iNAND」の車向け展開を加速

5/22(月) 22:17配信

EE Times Japan

■自動車でも求められる低コスト、大容量

 Western Digital(ウェスタンデジタル)は、e.MMCおよびe.MCPのインタフェース対応する組み込みフラッシュドライブ製品群「iNAND」のターゲットを、自動車市場に定めたようだ。

【Counterpoint Technology Market Researchによる「スマートフォンに搭載されるNAND型フラッシュメモリの容量(単位:Gバイト)の世界平均の推移」】

 同社のiNAND製品群は、SanDiskを買収したことによって入手したものだ。SanDiskはもともと、iNANDを、スマートフォン市場において需要が高まっていた、プロフェッショナル向けのデジタル写真や4K超高精細映像用のストレージ製品として位置付けていた。

 iNAND技術は、Western Digitalの傘下に入ったことで、ますます需要が高まっているコネクテッドカー向けのADAS(先進運転支援システム)や安全システムなど、さまざまなデータストレージ要件への対応にチャンスを見いだせるようになった。米国の市場調査会社であるGartnerの予測によると、コネクテッドカーないし自動運転車の1台当たりのデータトラフィックは2020年までに、1年間当たり280ペタバイトを超える見込みだという。このため、コネクテッドカーは基本的に“車輪の付いたデータセンター”として機能することになるだろう。

■組み込みフラッシュドライブ「iNAND 7250A」

 組み込みフラッシュドライブ「iNAND 7250A」は、容量が最大64Gバイトで、常時分析処理を行う診断システムや、絶え間なくストリーミングを実行するV2V(車車間通信)、V2I(車-インフラ間通信)システムの他、複雑化の一途をたどるインフォテインメントシステム、ナビゲーションシステムなどとの連携が可能だ。これら全てのシステムに共通しているのは、データを生成して受信し、処理を行うという点である。

 Western Digitalでエンベデッド&インテグレーテッドソリューション担当バイスプレジデントを務めるChristopher Bergey氏は、EE Timesの電話インタビューの中で、「iNANDを自動車市場に移行させようとする動きの発端は、SanDiskが、組み込み市場に注力していたM-Systemsを買収した当時までさかのぼる。iNAND製品群の開発はその後、モバイル機器によって大きくけん引されてきた。モバイル機器市場は、当時から現在に至るまで、世界最大の市場としての位置付けを維持している」と述べる。

 Bergey氏は、「iNANDは当初、自動車用途向けとして使われることもあったが、SanDiskは、特定の市場向けにボトムアップ設計手法を採用しようとはしなかった。ここ数年間は、特定の市場セグメントにおいて求められる性能や信頼性、容量などに個々に対応できるよう、システムレベルのアプローチが多く採用されるようになってきた」と述べている。

■TLC導入進むモバイル市場で成長したiNAND

 iNANDは2015年3月に開催されたモバイル機器関連展示会「Mobile World Congress(MWC)2015」(スペイン バルセロナ)において、大々的に打ち出された。最新世代のiNANDアクセラレーター技術「SmartSLC」を導入したことで、NAND型フラッシュメモリセルをSLC(Single Level Cell)とTLC(Triple Level Cell)のいずれにもフォーマットできるようになり、SLC領域の書き込み速度が飛躍的に高まった。フラッシュのある領域はSLCとしてフォーマットされていて、コントローラーのロジックとファームウェアがホスト側からの要求をモニタリングしている。ホストに高い性能が必要であることをファームウェアが検知すると、デバイスを制御して、データをSLCまたはTLCに書き込む。

 Bergey氏は、「モバイル機器はこれまで、TLC NANDフラッシュの導入へと突き進んできた」と指摘する。このような動向については、香港の市場調査会社であるCounterpoint Technology Market Researchが、2017年2月に発表したレポートの中で裏付けを得ている。同レポートによれば、現在、世界中で販売されているスマートフォンの2台に1台が、TLC NANDフラッシュを搭載している。グラフィックス処理技術が進展し、携帯電話機に高解像度カメラが搭載されるようになったことで、より鮮明な高品質画像や、高解像度HD、4Kビデオなどのさまざまなユーザー作成型の高品質コンテンツが、大量に生成されるようになったという。

 また同レポートは、「イメージングなどの高性能仕様が追加されたことにより、メモリメーカーは、性能や耐久性、ユーザーエクスペリエンスなどを犠牲にすることなく、コスト上の制約にも対応可能な高容量、高性能NANDフラッシュを提供するための取り組みを加速させるようになった。その後業界は、SLC(1セル当たり1ビット)から、2ビットMLC(Multi Level Cell/1セル当たり2ビット)、さらに高密度なTLC(1セル当たり3ビット)へと移行してきた」と指摘している。

■データ量増大する自動車市場は「魅力的」

 Bergey氏は、「モバイルデバイスはこれまで、システムレベルで設計改良が進められてきた。しかし、自動車市場では現在、保存、処理データの量が増加しており、今後さらに多くのコンピュートモジュールが自動車に搭載されるとみられることから、非常に魅力的な市場だといえる。このようなモジュールのデータ量は、指数関数的に増大している。Western Digitalは、産業市場やコネクテッドホーム市場にもiNAND投入のチャンスがあるとみて、OEMが自社製品に取り入れられるような付加価値を提供すべく、取り組みに力を入れているところだ」と述べている。

 またBergey氏は、「スマートフォン市場からは、デバイスの数が非常に多いことや、ワークロードの変化など、実に多くを学ぶことができた。主要なコントローラ技術の進展によって、規模の経済が実現し、自動車環境への適用も進んできた。Western Digitalは、場合によっては自動車向けのフラッシュメモリを提供することもあるが、一部のサブシステムは、汎用フラッシュメモリに対してそこまでは求めていない」と述べている。

■NOR、SRAMなどのメモリとともに

 Bergey氏は、「現代の自動車が複数のサブシステムで構成されることを考えると、NOR型フラッシュメモリやSRAMなどの複数のメモリ技術が搭載されるようになると予想される。ただし、あらゆる電子機器を自動車に搭載するとなれば、ビット単価を抑えながら多くのストレージを確保する必要がある。NANDフラッシュは、低コストでシステムレベルの信頼性を提供できる最適解だ」と述べている。

 米国の市場調査会社であるTECHnalysis Researchでプレジデント兼主席アナリストを務めるBob O'Donnell氏は、「フラッシュメモリの容量と信頼性は、突如、急増している自動車のアプリケーション要件、自動車向け電子部品の信頼性試験基準「AEC-Q100 Grade2」および「AEC-Q100 Grade3」で規定された温度範囲、不揮発性メモリベースの製品のISO26262設計ガイドラインの全てに対応できる。自動車は10~15年使用されるため、長期間データを保存できるという非常に厳しい基準を満たさなければならない」と述べている。

 O' Donnell氏は、EE Timesとの電話インタビューで、「コネクテッドカー、特に自動運転車がどれくらいの量のデータを分類、処理するかを過小に見積もってはいけない。自動運転車は、1日当たり4テラバイトのデータを生成する。高解像度マップやセンサーデータへの対応もさらに求められるようになる。今はまだ、それほど膨大なメモリは必要とされていないが、今後ますます多くのメモリーが必要になる」と指摘した。

■「フラッシュメモリは、猛烈な勢いで成長している」

 自動車メーカーは、数シーズン先の製品の開発に備えて、大容量ソリューションについて検討し始めなければならない時期に入っている。

 O' Donnell氏は、「自動車向けNANDフラッシュは、スマートフォンの場合と同じように採用および拡張されると予想される。ただし、最新スマートフォンの最大容量256Gバイトであるのに対し、自動車のストレージの需要はそれを上回っている。ローカルストレージの需要は、今後も増え続けると予想される」と述べている。同氏はまた、「コネクテッドホームも、Western DigitalのiNANDのようなフラッシュメモリ製品の成長セグメントとして期待される。ただし、容量の点では自動車と対極にある。Amazonのアシスタント端末『Amazon Echo』のような人気商品は、主にシンクライアントだ」と指摘している。形態の違いはあれ、「フラッシュメモリは、猛烈な勢いで成長している」(同氏)

最終更新:5/22(月) 22:17
EE Times Japan