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復刻連載「北のサラムたち1」第13回 ああ哀しき者よ、汝の名は「北朝鮮の女」(4)  普通の主婦が売る「夜の花」とは

5/22(月) 15:13配信 有料

アジアプレス・ネットワーク

「花」を売る女性たち

「花」を売る女性たち
北朝鮮女性の性にまつわる哀しい話を、私は何人もの北朝鮮人から聞いている。国境沿いのある村で会った骨董品を運ぶ北朝鮮の密輸屋の男は次のようなことを言っていた。飢餓が深刻だった1998年のことである。

「食い物がない。闇市場で売るべきものもない。ああ、万策尽きたと思った晩の食卓に、思いがけない食事が出てくることが何度かあったんです。でも『どうしたんだ?』とは女房には訊けません。『コッ(花)』を売ってきたんだろうなと思うんだけど、悪くて訊けない。そうでしょ、僕ら男が何も持って帰ってこられないから、身体を張ってるわけです。北朝鮮の主婦のざっと半分は『コッ』を売ったことがあると思いますよ」

「コッ」とは直訳すれば「花」。要するに女性が身体を売る場合の当時の隠語である。

密輸屋は話を続けた。

「男に一発ヤラせることなんて、食べ物もろくにない北朝鮮では、女にとってもはやたいしたことではなくなったんです。……うちの女房も、周りを見渡して常識で考えたら、『コッ』を売ってるんでしょうね、情けないけれど」


「花売り」に関する同様の証言を、私は何人もの北朝鮮難民から聞いている。もう1人、2002年7月まで、吉林省の親戚の家に匿われていた40代の女性の体験を記しておこう。

彼女は労働党の中堅幹部。職場で些細なトラブルが起き「政治的な不満を漏らした」と虚偽の密告をされ、身に危険を感じて中国に逃亡した、というのが本人の言う北朝鮮脱出の理由である。

北朝鮮にいたときの彼女は、飢えとは無縁の特権階層に属し、出張で全国の都市を回っていた。食糧難が深刻になり始めた1995年、ある地方都市に出張中のことだったという。夕暮れの駅前に大勢の女性が何をするでもなく立っている。連れの部下に聞くと「花売りの女性」だという。そうかと思い、何人かの女性に、

「花が欲しいんだけど、どんなのがあるの?」

と尋ねた。声をかけられた女性は皆、怪訝そうな表情で、

「からかってるんですか?」



と言って相手にしてくれない。そういえば、女性たちは花を携えているわけでもない。立ち止まって、はて?と考え込んでいると、今度は逆に通りすがりの男から声をかけられた。

「あんたのパム コッ(夜の花)はいくらだい?」

自分も花が買いたくてここに立っているのだが、誰が花売りなのか教えてほしいと訊き返すと、その男は笑いながら立ち去って行ってしまったという。

後から部下に聞いてやっと合点がいき、事情が飲み込めたのだが、その頃から、北朝鮮のどこの都市に行っても「花売り」の女性たちの姿は、当たり前に、しかも大勢見かけるようになったと、彼女は言った。
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