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EdgeブラウザのChrome対抗策 次なる一手はWindows 10からの分離か

5/23(火) 6:25配信

ITmedia PC USER

 長らくWebブラウザの世界でInternet Explorer(IE)が大きなシェアを獲得していたのは、過去のIEから連綿と続くアプリケーション資産の動作をサポートし、主に企業ユーザーが継続利用していたことにある。ただし、そのような「レガシー」のサポートはMicrosoftにとって大きな負担であり、新機能導入の阻害要因にもなっていた。

【画像:2017年4月のWebブラウザシェア】

 一方、Webブラウザ開発において身軽な立場にいたGoogleは次々と新しい機能を投入して改良した新バージョンのChromeブラウザを頻繁にリリースし、2010年代にはライバルらに対して抜きん出る存在にまで成長している。

 新勢力の台頭は、Microsoftにとって看過できない問題だ。対抗策として、IEで積み上げてきた既存のコード(レガシーサポート)を捨て、Windows 10では「Edge」という新しいブラウザとレンダリングエンジンを採用するに至った。

 こうしてWindows 10とともにリリースされたEdgeは、間もなく登場2周年を迎える。NetMarketShareによれば、1年前の2016年4月時点でグローバルのデスクトップ向けWebブラウザ全体でのシェアは4%強程度にすぎない。当時IEは4割近いシェアを確保していたものの、その割合は減り続けており、実質的にChromeなどの競合製品の流出が続いている。

 その後、2016年8月に一般公開されたWindows 10の大型アップデート「Anniversary Update」ではChrome対抗の目玉となる「拡張機能(Extensions)」をついに導入し、続く2017年4月一般公開のWindows 10大型アップデート「Creators Update」の世代では「初期設定でのFlashコンテンツブロック」や「EPUBファイル表示」、「開いているタブの保存」といった新機能も追加してきた。

 このように進化を続けるEdgeだが、1年前と比べてブラウザシェアの状況はどう変化したのだろうか。

●IE+Edgeのブラウザシェアは低下中

 Webブラウザのシェア計測では、NetMarketShareとStatCounterの2つが有名だ。前者はインストールベースの計測でIEが優位になりやすい傾向があり、後者は実アクセス数ベースでヘビーユーザーが多いブラウザが優位になる傾向がある。

 StatCounterでは長らくChromeが過半数以上のシェアで首位ブラウザの地位を占めていたが、NetMarketShareではIEが強く、ChromeがIEを抜いてシェア首位に躍り出たのはちょうど1年前の話だった。

 それから1年後となる2017年4月時点のグローバルにおけるブラウザシェアを見ていこう。NetMarketShareによると、2017年4月のシェアはChromeが59%、IE+Edgeが24.02%となり、さらに両者の差が開いている。少なくともEdgeは4%台から5%台へと微増しているので、ユーザーを大幅に減らしたのはIEだ。

 Windows 7の延長サポートが2020年1月に終了するため、多くの企業では既存のレガシーシステムの見直しまでのカウントダウンが始まっている。MicrosoftではWindows 10におけるIE11の継続サポートを表明しているものの、実質的にはより「モダンな環境」への移行を推奨しており、こうした動きがIEのシェア下落をもたらしている。

 StatCounterの集計も同様で、IEのシェア減少分をEdgeのシェア増加でカバーできていないのが実情だ。Windows 10におけるデフォルトブラウザというゲタがあってなお、Edgeが厳しい状況には変わりない。登場から2年が過ぎようとしており、そろそろ抜本的なマーケティング施策の見直しが必要になるころだと考えている。

●ユーザーはクロスプラットフォーム対応を重視か

 Microsoftが本社を構える米国でも、Edgeの不調を伝えるメディアは少なくない。例えば、米ZDNetの「Does anyone actually use (or even know about) Microsoft's Edge browser?(誰か本当にMicrosoftのEdgeを使っている人はいる? あるいは知っているというだけでも)」という記事は、タイトルからして辛辣(しんらつ)だ。

 Windows 10ユーザーであっても、Edgeの存在自体を知らなかったり(あるいは意識していない)、少しでも素養があるユーザーであればクロスプラットフォームで利用しやすいChromeを導入していたりするという内容だ。これはMicrosoftのEdgeを盛り上げたいというキャンペーンが、主にユーザー側の素養や指向によって成功しにくいという可能性を示唆している。

 もう1つ、StatCounterのデータでWindowsとAndroidのOSシェアが逆転したというトピックにも触れておきたい。Androidはスマートフォンとタブレット、WindowsはPCという違いがあるが、ユーザーの滞留時間がモバイルで長くなれば長くなるほど、モバイル環境で使えるブラウザやアプリの存在が重要になり、必然的にPCの利用環境もそれに引きずられることになる。

 先ほどのクロスプラットフォーム対応はいい例で、スマートフォン、タブレット、PCでブックマークや履歴、タブの同期が手軽に行えるなら、Chromeを選択するというのも自然な流れだ。

●EdgeがWindows 10から巣立つ日

 PCとスマートデバイスが混在する現状でもWebブラウザは依然重要な存在ではあるが、かつての「Netscape vs. Microsoft」といったブラウザ戦争が起きていた時代とは事情が異なる。ブラウザを制するものが全てを制するわけではなく、技術的なトレンドリーダーとして影響力を行使できるという程度にすぎない。

 MicrosoftもWindows 10や全社的なメッセージとしてEdgeのみを前面に押し出すわけにもいかず、例えば2017年であれば、Windows Mixed RealityやAI分野でのメッセージング処理の重要性を説くなど、使えるリソースは限られている。Edgeについては、どうしても地味な製品改良に終始せざるを得ないのが現状だ。

 最近同社は「Better battery life with Microsoft Edge」という公式ブログへの投稿で、ChromeとFirefoxの2つのWebブラウザと比較して、Windows 10ではEdgeの電力消費効率がよいことを訴える動画を紹介している。

 これはバッテリー駆動時間のベンチマークテストでFirefoxとChromeが7時間または9時間だったのに対して、Edgeでは12時間以上を記録したことを紹介するものだ。

 パフォーマンスの改善や機能追加、中核技術である「ChakraCore」のオープンソース化など、日々改良が続いているEdgeだが、機能的にChromeに追い付くだけでなく、パフォーマンスと動作効率面でそれをさらに上回らないと真に使われるブラウザにはならない、との考えが開発の原動力になっている。

 もう1つ興味深い話としては、Microsoftが現在開発中で2017年秋に公開予定のWindows 10次期大型アップデート「Fall Creators Update(RS3)」において、「EdgeをWindows本体から分離する」するというウワサがある。

 米Neowinが複数の内部情報源からの話題として報じているが、RS3ではWindows 10からEdgeを切り離し、アップデートを独立したアプリとしてWindowsストア経由で行うようにすることを検討しているという。

 現在、EdgeはWindows 10の一部として提供が行われ、セキュリティパッチを除く大きな機能追加やインタフェースの変更は年2回の大型アップデート(Anniversary UpdateやCreators Update)を経て対応される。

 これを独立させてWindowsストア経由とすることで、こうした周期的な大型アップデートとは非同期のタイミングでの適時アップデートが可能になり、より新機能が追加しやすくなるというわけだ。当然、これは比較的頻繁にアップデートが行われるChromeを意識したもので、Edge支援策の一環というわけだ。

 とはいえ、既に確立されつつあるユーザーのブラウザ利用動向はよほどのキラーアプリやサービスが登場しない限り変化することはないだろう。Windows 10の標準ブラウザという以外のキャラクターを付与されたEdgeがどこまで飛躍できるのか、引き続きウォッチしていきたい。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

最終更新:5/23(火) 6:25
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