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安倍首相の改憲に関する答弁拒否は違憲

5/23(火) 16:00配信

ニュースソクラ

改憲論議を小林節慶大名誉教授に聞く(上)

 安倍首相が5月3日に2020年には改正憲法を施行したいと発言し、改憲作業が一気に日程に上ろうとしています。しかし、安倍首相は改憲に関して国会質疑には応じず、どんな改正がしたいのか、すべきなのかの論議は深まらずにいます。

 安倍首相の唱えた9条に「自衛隊」を加えるとの改憲案の持つ意味などを、もともとは9条改正を求める数少ない「改憲派」でありながら、安倍首相の下での改憲には慎重だった、憲法学者、慶応大学名誉教授の小林節氏に聞いた。

 ――安倍首相は改憲論議を促進するため5月3日に、2020年に施行との改憲日程に触れました。これは自民党総裁としての発言であるとしています。そして、国会での憲法に関する野党からの質問には答えず、読売新聞を読めと言い放ちました。改憲に関する国会論議は入り口で止まってしまっています。

 安倍首相が答えないのは憲法違反です。順を追って説明しましょう。

 まず、安倍首相サイドが答えない理由としているのは、憲法96条は国会に憲法改正の発議権を与えているので、行政府の長は国会で発言するべきではないという主張です。

 読売新聞に対してや日本会議系が主宰した会では自民党総裁としての意見表明と主張しているのですが、別に立場を使い分けるまでもなく、安倍氏には首相としても、個人としても意見を表明する表現の自由があります。

 安倍首相は総理大臣として出席している国会では、改憲については語れないと言いますし、野党は「国会の軽視である」というばかりで、攻めあぐねています。しかし、安倍首相の対応も野党の対応もおかしい。

 日本は英国と同様の議院内閣制です。英国議会では与党と野党が向かい合って、論戦を戦わします。与党サイドで語るメイ首相は、首相であると同時に与党の代表として話しているのであって、それは不可分、分けられないのです。安倍首相の総理大臣は憲法について国会で語れないという理屈は世界に通用するものではありません。

 ――答弁拒否が憲法違反というのは、どの条文に対してですか。

 72条で総理大臣には議案発議権が認められており、国会に議案を提出する権限を持っています。憲法改正草案を提出することも憲法は認めています。議案を提出できる総理大臣の立場を使って、改憲日程を動かそうとしているのでしょう。国会での議論には応じなければならないのです。

 ――ほかの条文にも違反しますか。

 憲法63条は「総理大臣は、何時でも議案について発言するため議院に出席することができ、又、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」としています。だから、首相には、自党や自分の政策提案について質問された場合には逃げずに答える義務があるのです。

 (中)は22日に掲載します。

■小林節(こばやし・せつ)氏 慶応義塾大学名誉教授、弁護士。1949年生。77年慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程終了。ハーバード大学ロー・スクール客員研究員等を経て、1989年~2014年慶応義塾大学教授。著書は「決定版 白熱講義!憲法改正」(ワニ文庫)、「小林節の憲法改正試案」(宝島新書)など多数。もともとは自衛隊を憲法に位置づけるべきとする改憲論者でありながら、自民党の憲法改正草案に反対し、15年成立の安全保障法制は「違憲」として反対した。2016年の参院選では、憲法改悪阻止などを掲げて「国民怒りの新党」を立ち上げ自らも立候補し、安倍政治を批判したが当選は果たせなかった。

■聞き手 土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:5/23(火) 16:00
ニュースソクラ