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“身近に使える”バイオマス発電、廃食油を再エネに

5/24(水) 7:10配信

スマートジャパン

■廃棄油を活用して発電が可能

 “身近に使える”バイオマスが実現できる――。ヤンマーエネルギーシステムは、廃食油などのバイオマス燃料で運転可能なマイクロコージェネレーション(熱電供給)「CP25BDZ-TC」について、2017年7月1日から受注を開始すると発表した。

【廃食油リサイクルフローの一例】

 同社は「2017NEW環境展」(5月23~26日/東京ビッグサイト)で、実機を展示。展示会場で、ソリューション営業推進グループの部長を務める林清史氏に話を聞いた。

 CP25BDZ-TCは、同社が累計500台以上販売してきたとするバイオガスコージェネレーションがベースとなっている。家庭の汚物や生ゴミ、下水汚泥などから得られるメタンガスで、電気と温水を作り出すシステムだ。新製品では動力源をガスエンジンから、液体燃料が使用可能なディーゼルエンジンに対応。家庭や飲食店などで廃棄されていた使用済み油などを燃料として、発電および熱供給することが可能となっている。

 対応する廃食油は「FAME」「SVO」の2種類とする。FAME(脂肪酸メチルエステル)は植物油にメタノールを添加し、エステル交換反応をさせて生成する。副産物としてできる不純物除去の工程が必要だが、軽油と同等の燃焼性を有するのが特長だ。

 SVO(ストレートベジタブルオイル)は、廃食油から不純物を取り除いたもの。廃食油をそのまま使用するため、常温で軽油の約10倍粘性が高いが、生成プロセスが少ないことが特長である。同社はSVOタンク(別売りユニット)を加温して粘度を下げることで、常温で固形化するという課題を解決した。林氏は「生成プロセスの少ないSVOに対応し、バイオディーゼル発電にかかる燃料生成の費用や手間を軽減した」と語る。

 出力は25kW(キロワット)で、発電効率は35%。熱回収量が34kW(回収率48%)のため、総合効率は83%だ。希望小売価格は1500万円(税別)、タンクユニットや付帯工事などは追加費用がかかる。バイオディーゼル燃料は「カーボンニュートラル*)」な特性を持つため、8000時間の稼働で約100トンのCO2削減にもつながるという。

*)カーボンニュートラル:バイオマス発電は燃焼時に大量のCO2を排出しているが、原料となる木や草などが光合成によってCO2を吸収するため、トータルとしてはCO2排出量が変化しないという考え方である。

■年間30万トン以上排出される廃食油

 林氏によると、廃食油は年間30万トン以上排出されており、その多くがボイラー助燃油・飼料用添加油として利用されている。一部の都市部ではバスやトラックなどのバイオマス燃料として使用されているが、十分なメンテナンスが行われていない場合は運転中に不具合が発生するといった問題から年間約1万トンしか活用されていない。ボイラー助燃油や飼料用添加油の活用も減少傾向なことから、供給過剰な現状があるとする。

 また農林水産省など関係7府省が推進している「バイオマス産業都市」では、2013~2016年度に選定された50市町村のうち、14市町村が「廃食油の利用」を目指している。そこで同社は廃食油を発電用燃料として着目し、地方自治体や中小企業が活用できる定置型発電システムの製品化に向けて、多くの実証試験に取り組んできた。

 2015年10月に実証試験機を導入したみやぎ生協は、てんぷらなどに使用した廃食油を回収して活用することで、発電を行っている。年間の発電量は9万1000kWh(キロワット時)。一般家庭の電力使用量(年間4618kWh)に換算すると、約20世帯分に相当する。実証実験では、4000時間の運転で大きなトラブルはなかったという。追加の納入が既に決まっており、将来的には計20カ所への導入が検討されているようだ。

 同じく2016年10月に導入したスイーツ販売のホリは、「北海道開拓おかき」などの製菓過程で毎日生じる300L(リットル)の廃食油を活用している。年間の発電量は18万8000kWhで、工場内で利用する電力の18.8%を供給可能だ。この取り組みは「2016年度新エネ大賞」(主催:新エネルギー財団)で、審査委員長特別賞を受賞した。

 2016年2月に導入したローソン夢前スマートインター前店(兵庫県姫路市)では、店舗の揚げもの商品を調理する際に発生する廃食油を活用している。年間の発電量は3万6000kWhとなっており、既存店舗における消費電力の約20%に相当するという。

 これらの実証実験を通して、メンテナンス性や活用する廃食油の見極めができたことから、同社は製品化に向けて舵を切った。林氏は「市場はニッチだと思うが、地方自治体や民間企業が“エネルギーの地産地消”を行う上で、身近に活用できるバイオマス発電として、当社が他に提供している省エネ機器と合わせて提案していきたい」と語る。今後はラインアップの拡充も検討しながら、2020年度までに200台の販売を目指す。