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「外注したら仕様と違う製品が送られてきた」 メーカーの悲劇はなぜ繰り返される?

5/24(水) 6:25配信

ITmedia PC USER

連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)

 自社で工場を持たない、いわゆるファブレスのメーカーにとって、要求した本来の仕様とは異なる製品が外注先から納品されてくるのは、それほど珍しい話ではない。むしろどちらかというとよくある話だ。

 それらを見抜き、検収せずに外注先に突き返したうえで、正しい仕様の製品を再度作らせるのがメーカーの役割ということになるわけだが、そもそもこうしたミスはどのような原因がもとで起こるのだろうか。

 今回は、こうしたOEMやODMのビジネスにつきものの、この種のトラブルが起こる舞台裏について、詳しく見ていくことにしよう。

 なお、この手の話題では「メーカーとは何ぞや」という、メーカーの定義付けがよく問題となるが、本稿では、自社ブランドの製品を日本国内で販売・流通させており、自らメーカーと名乗っていれば、製品を自社内で企画・設計・製造しているか否かと無関係に、メーカーとして取り扱う。

 そのため、世間一般の定義とは異なる場合があることをご了承いただきたい。

●仕様書に明記されていても起こる「仕様違い」

 ファブレスのメーカーが外注先に製品を作らせる方式としては、自社で用意した仕様書の通りに外注先で作らせるOEM方式と、外注先が仕様を決めて生産まで行うODM方式、大きく2通りに分けられる。

 OEM方式で多いトラブルとしては、仕様書だけでは表現しきれない部分の解釈の相違がある。例えば、書面で伝わりにくいボディーカラーの相違は典型的な例で、本来はオフホワイトであるはずが、納入されたボディーカラーは光沢のあるホワイトだった、というケースだ。メーカーは試作品と違っているので外注先のミスだと主張し、外注先は試作品は手塗りゆえ量産品と同じ質感にはなり得ないと反論し、モメるというパターンである。

 また、ここでいう外注先のほとんどは海外の事業者であるため、仕様書を翻訳する過程でニュアンスが変わったり、または明らかな誤訳が発生したりしたことで、誤った仕様の製品が納入されるケースもよく起こる。「ここまで詳しく書かなくても分かるはず」と判断して詳細を省いたところ、案の定ミスが発生したというケースも、取引の回数が少ない外注先との間では起こりやすい。

 では、仕様書に細部までしっかり明記され、誤訳などのミスもなければ、こうしたトラブルは100%防げるかというと、必ずしもそんなことはない。典型的なのは「量産してみたら想定通りに動作しなかったので、きちんと動作するようこちらで仕様を変更しました。後で報告するつもりが忘れていました」というパターンだ。

 善意の対応に見せかけつつ、実際には単なる外注先の都合をオブラートに包んだ言い訳なのだが、このような新入社員レベルの言い訳を使ってくる外注先は、特に海外の事業者では後を絶たない。そうした言い訳をいかにさせないか、先回りしてチェックするのが、発注元であるメーカーの腕の見せ所になる。

●ODMビジネス特有の「うっかりハズレを引いた」感覚

 もっとも、これらはトラブルとしては些細(ささい)なものだ。もう1つのパターン、外注先が仕様を決めて生産まで行うODM方式の方が、ときとして大きなトラブルを引き起こす可能性が高い。

 よくあるのが、量産に至るまでの工程で、外注先が独自の判断で仕様を変更したパターンだ。その理由はコストダウンであったり、前述のようにうまく動作しなかったことで独自に設計を変更したりとさまざまだが、外注先から売り込まれたセールスシートの機能だけを見て採用を決めた場合、メーカー側に仕様書が存在しないため、OEMで同じ問題が起こった場合に比べると、発覚が遅れることもしばしばだ。

 メーカー側に仕様書が届いていない状態で製造にゴーサインを出すこと自体、おかしなことだと感じるかもしれないが、そもそもODMビジネスでは「サイクルがうまく回っていれば、あまり細かいことは要求しない」という不文律のようなものがある。自社で企画や設計まで行っているOEMとは違い、既に完成されている製品にロゴを付けて売るという考え方なので、メーカー側も製品へのこだわりはあまりない。

 またこうしたODMでは、同時に複数の製品が進行していることも多く、1つの製品にかけられる手間も限られている。そのため製品の細かい仕様よりも、生産計画や販売計画ばかりに目が行き、仕様書などの書類が最終的に手元に届かなかったとしても、「製品はきちんとスケジュール通りに納品されたことだし、詳しい仕様をチェックする間もなかったけど、まあ、いいか」となってしまうわけだ。

 その結果、しばらくたってから仕様の相違が発覚し、購入済みの客との間でトラブルになるわけだが、メーカー側はODMビジネスによくあるトラブルとして認識しているため、「運が悪くうっかりハズレを引いた」程度の感覚でしかない。対外的には反省しているふりをしてチェック体制の強化を打ち出したとしても、小手先レベルの改善にとどまるのが一般的だ。

 というのも、そもそもODMビジネスは企画や設計といったコストをかけないことが前提であるため、品質などのチェックについても、必要以上のコストをかける発想自体が存在しないからだ。むしろトラブル発生時の対応スキームができてしまうことで、トラブルそのものを発生させないという考え方からさらに遠のいていく。結果として「一度やらかしたメーカーは、二度三度と同じことをやらかす」可能性が高くなるわけである。

●外注先のミスにもかかわらず、メーカー側が泥をかぶる理由とは?

 さて、ここまで製品の仕様違いが発生する典型的なパターンを見てきたわけだが、こうしたトラブルが発生した場合、メーカーは外注先に対して正しい仕様での作り直しを要求するはずなのだが、実際にはこれがなかなか一筋縄でいかないのが実情だ。

 もちろん「仕様書と違っているのだから作り直せ」の一点張りで押し通すこともできなくはないのだが、実際にはメーカーの側が泥をかぶることが少なくない。仮にも契約を取り交わしているにもかかわらず、なぜそのような事態が発生するのか。次回はそんな裏事情について見ていきたい。

最終更新:5/24(水) 6:25
ITmedia PC USER