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日本最大級のクラウドファンディングサービス「Readyfor」――成功率70%の秘密に迫る

5/24(水) 10:20配信

ITmedia ビジネスオンライン

 インターネットを利用して不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」という仕組みを知っているだろうか。2011年3月にオープンした「Readyfor(レディーフォー)」は、日本のクラウドファンディングの先駆けとして知られ、市場を作ったパイオニアだ。「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」をミッションに掲げ、これまでに6300件以上のプロジェクトの資金調達を行い、26万人から40億円以上の支援金を集めてきた。日本最大級のクラウドファンディングサービスに成長を遂げた「Readyfor」代表取締役の米良はるか氏に、起業のきっかけから多くの支援者を獲得する秘訣(ひけつ)まで聞いた。

●金銭以外のリターンを提供する購入型クラウドファンディング

井上 インターネット上で資金調達を行う「クラウドファンディング」ですが、具体的にどういった人に向けたサービスなのでしょうか。

米良 事業のアイデアがあったとしても、創業時は実績がないため、金融機関からの融資が下りないことが多々あり、新たなチャレンジが生まれにくい状況があると思います。創業時の資金に乏しい場合でも、私たちが運営している購入型のクラウドファンディングでは、お金を出してくれた人に対して、金銭以外のリターンを返す仕組みになっています。そのため、金銭の返済なしに、資金調達が可能なのです。

 具体的な事業内容や事業に懸ける思いをクラウドファンディングのサイト上で語ってもらい、それに賛同する人から資金を集めます。

井上 どういったリターンがあるのですか。

米良 事業によって本当にさまざまです。店舗開店のプロジェクトでは、クーポン券をリターンとして用意したり、ものづくりのプロジェクトでは、実際に売り出す製品を提供したりします。社会的なプロジェクトでは、オープンする施設に名前を掲示するというオーナーシップ特典もあります。それぞれのプロジェクトによって、どういったリターンがよいかを考え、工夫しています。

井上 クラウドファンディングは事業を起こしたい人のチャンスを生かすと同時に、人と人をつなぐ役割も担っているのですね。

米良 資金を集めるだけではなく、顧客を獲得する方法として使われている面もあります。神楽坂のサラダボウル店開業プロジェクトでは、1万円出してくれた人へのリターンとして、サラダボウルが無料になるクーポン券7枚の用意しました。

 創業前にリピーターになりやすい有力顧客の獲得につながりました。お金を先に出してもらうことによって、先に売り上げを立てられるというのもメリットのひとつです。お金を集めるだけではなく、顧客創出のマーケティングツールとしても役立った事例です。

井上 集める資金の設定もさまざまなのですね。

米良 目標金額が数十万円ほどの小さなプロジェクトもありますし、6000万円などの大きなプロジェクトもあります。一口の支援金額の平均は約1万円ですが、多くのプロジェクトで3000円から支援が可能です。プロジェクトを起こす人も、支援する人も、どんな人でも参加でき、目標金額に届かなかった場合でも、何度でも挑戦できます。

●思いを伝える仕組みがあれば、お金を集めることができる

井上 「Readyfor」を立ち上げたきっかけを教えてください。

米良 大学生のとき、パラリンピックのクロスカントリーチームの資金不足を解消するため、インターネット上に投げ銭の仕組みを作った経験がきっかけになっています。インターネットで多くの人から少しずつお金を集められる仕組みがあれば、チームを応援できるのではないかと考え、プロジェクトを立ち上げたところ、結果的に120万円を集めることができました。

 この経験を通して、相手が知らない人たちであっても、きちんと思いを伝えれば、お金を集めることができるということに大きな感動を覚えました。このことをきっかけに、チャレンジしたい思いはあるけれど、資金不足の人たちに向け、何か事業として展開できることがあるのではないかと考え始めました。

井上 学生で120万円を集めたというのはすごいですね。

米良 それからアメリカに留学し、「クラウドファンディング」というキーワードを知りました。当時、日本国内にはまだクラウドファンディングの仕組みがなかったので、事業として立ち上げようと、「Readyfor」を始めました。

●キュレーターがクラウドファンディング成功へ向けてトータルサポート

井上 「Readyfor」でプロジェクトを立ち上げられるかどうかの基準はあるのですか。

米良 どんな人でも利用できますが、プロジェクト開始前に、資金調達で集めるお金の使い道や、お金が集まったときに公言したことを実行できるかどうかの審査をしています。

井上 プロジェクトスタートへ向けて、サポートなどはあるのですか。

米良 私たちは今までに6300件以上の案件に携わってきました。プロジェクトによって見るべきポイントがノウハウとして蓄積されています。そのノウハウを手厚いサポートにより提供しています。専門のキュレーターがプロジェクトスタートに必要なものなどを示し、一つ一つのプロジェクトに合わせてマンツーマンで丁寧にサポートします。「Readyfor」でプロジェクトを立ち上げたいと考えたら、まずは電話1本から相談できます。

井上 キュレーターはどういった役割を担っているのですか。

米良 プロフェッショナルとしてプロジェクトや実行者をサポートし、その人のやりたいことを言語化し、いいところをしっかりと世の中に伝えることがキュレーターの役目です。

 世界的に見ても、キュレーターがすべてのプロジェクトをサポートしているクラウドファンディングのサービスはありません。基本的にクラウドファンディングは自由に使ってもらうプラットフォームだからです。

 しかし、日本でクラウドファンディングを根付かせようと思ったら、ただ単にプラットフォームを立ち上げて実行者に自由に使ってもらうだけでは不十分です。日本人にとっては、自分のやりたいことをみんなに話し、さらにお金を集めることはかなりハードルが高いことです。資金を集めるためのノウハウの提供、バッシングを受けないためのストーリー作りをしっかりとサポートできる体制が必要だと考え、「Readyfor」を立ち上げる際、キュレーターという役割を作りました。

井上 プロジェクトをどう伝えるかを一緒に考えてくれるのですね。

米良 そうなんです。プロジェクトスタートの基準をクリアしたら、キャッチコピーの作り込みや動画の撮り方のアドバイスといった具体的なページの作成から、プロジェクトスタート時のPRのプランニングや実務の手伝いまでをトータルで行います。事業の内容、事業にかける思いさえあれば、あとはキュレーターがクラウドファンディング成功へ向けてしっかりとサポートします。

井上 キュレーターのサポートがあることによって、成功率が高まっていそうですね。

米良 世界的な標準でいうと、クラウドファンディングの成功率は20~30%です。そういった中で、われわれは65~70%の成功率を誇っています。プロジェクト数も日本でナンバーワンです。そういった中で、高水準の成功率を維持しているのは、やはりキュレーターの力が大きいと思います。

井上 キュレーターの存在は、プロジェクトを始める人からすると、すごく安心ですよね。「Readyfor」の顧客であるプロジェクトの実行者と支援者の満足度は、双方がつながっている感じがします。実行者への手厚いサポートが支援者を喜ばせることにつながっています。

●顧客創造、ファン作りにまで貢献

井上 印象に残っているプロジェクトを教えてください。

米良 いろいろなジャンルのプロジェクトがある中で、地方創生のプロジェクト、特に場所作りのプロジェクトに関わる機会が増えました。

 例えば、熱海の「atamista(アタミスタ)」というゲストハウスのプロジェクトです。お金を出してくれて、かつファンになってくれるような人を集めたいという理由でプロジェクトを立ち上げました。お金を出した人が実際にゲストハウスにも来てくれたので、単に資金調達だけではなく、人をつなげるところまで貢献できたモデルケースになりました。

井上 お金を集めることにとどまらず、人を動かし、つなげることがクラウドファンディングの大きなメリットなのですね。

米良 沖縄の「おもちゃ美術館」のプロジェクトも、人を動かすことに成功した事例です。お金を出してくれた人に、リターンとして沖縄に生息している鳥のヤンバルクイナをモチーフにしたパズルのピースを送り、そのピースをはめるパズルフレームに支援者の名前を入れて、美術館に掲示しました。「いつかこのピースをはめに来てください」というメッセージと一緒に送ったことで、おもちゃ博物館に来てもらう理由付けができました。

 リターンをうまく設計することによって、支援者とプロジェクト実行者をつなげることができます。

井上 クラウドファンディングが人と人をつなぎ、感動の創出、コミュニティの創出につながっているのですね。

最後に、これからの目標を聞かせてください。

米良 私たちは、すべての人たちが自分のやりたいという思いに従ってどんどんチャレンジをする社会を作りたいと考え、このサービスを提供しています。そういった社会の実現のため、何に取り組んでいけばいいのか、どう変わっていけばいいのかを日々考え続けたいと思っています。

 ゴールがなかなか見えませんが、「Readyfor」によって人々の挑戦をサポートすることで、私自身の人生は豊かなものになりました。クラウドファンディングという思想自体を支持する人がもっと増えたら、何かをやりたいと思ったときに誰もが挑戦できる豊かな社会になります。これからも実行者をしっかりサポートし、やりたいことが実現できるよう努めていきます。

対談を終えて

 「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」。普通なら、半ば懐疑的に感じられる社是ですが、クラウドファンディングを活用すれば実現可能になります。すごい世の中になったものだと痛感しました。

 しかも、支援者へのリターンはお金以外のものだといいます。これは、利益目的の出資とは違い、純粋に人の思いや夢を応援したい人だけが集まる素晴らしい仕組みです。特に、ボランティアや地方創生、教育支援などのプロジェクトにぴったりの仕組みだと思います。そういったプロジェクトの多くは、真の意味で世の中を変えていく可能性が高いものばかりです。本当に大義のある仕事だと感じました。

 お金がない、人脈がない、情報がないと従来なら諦めなければならなかったことが、思いさえあれば実現できてしまう仕組みが既に完成しています。ぜひ活用し、あなたの夢に挑戦してほしいものです。クラウド(群衆)の力は偉大なり!

(聞き手:井上敬一、文:牧田真富果)

(ITmedia エグゼクティブ)